LINK45 エピローグ

月人、真心、斎木博士が乗った飛行機は大空の中に消えていった。

イギリスか....


「月人、幸せになってくれ。斎木博士、あなたがあんな風になっているなんて。でも約束は果たしましたよ」


10年前、犯罪組織がテロ対チームの本部を爆破したとき、赤根隊長に窓から突き落とされ俺は九死に一生を得た。

記録では脚の複雑骨折だが、本当は脊髄から背骨、腰、足まで俺はぼろ雑巾のような状態だった。


俺は人工呼吸器をつけられていた。


『 死にたくない.. 俺はまだ死にたくない.... 』


そんな思いのまま何年かすぎた。

その時、誰かが俺の瞼を開き、何かが俺の中に侵入した。


それは俺の頭の中で語り始めた。


『私の娘を守れ。約束すれば、その守る力がお前の体を再生する。君が誓えばプログラムを発動する 』

『ああ、誓うよ。だから助けてくれ 』


『間もなく君の体は再生される 』


目が覚めると俺の前に斎木博士が立っていた。


「約束を覚えているかい?」

「あなたが、私を助けてくれたのですか?」


「君は2年眠り続け4日で助かった。君は脚をひきずって生きなさい。足が不自由な演技をするのだ。そして赤根隊長の息子月人君を見張ってほしい。月人君が世の中に良くない人間ならば君が射殺しろ。だが、そうでない時は、その顛末てんまつを見守ってくれ。君にはその力を与えた。わかったかね、中尾君 」


・・

・・・・・・


月人、おまえは恐ろしい存在だ。

何といっても適合プログラムなどいらない本物の適合者だったんだからな。

本物の適合者は全ての能力を統括できるんだ。


だから博士は俺に見極めをさせた。


月人、おまえは接触し始めたのは真心だと思っているな。

そうじゃない。

接触し始めたのは、おまえなんだ。


いつも真心を見守っていた『燐炎』はその力に警戒をした。

本来2つに分散された生態AIが互いの力を欲するのは自然な成り行き。

月人が私利私欲のために力を欲するのであれば制御プログラムを発動させるつもりだった。


それが恋人岬の鐘の音だ。

あの鐘を4つ鳴らせば制御プログラムが発動していただろうに....


だが、真心の中の『燐炎』は最後の鐘を鳴らすことに躊躇した。

月人の生態AIの力封じる事は同時に『燐炎』も真心の前から消え去るということだからだ。


『燐炎』は2人に旅をさせることで月人を見極めようとした。

真理愛の想い出の地を巡ることによって....

そして『燐炎』は月人の中に真心を守る想いが生じることを期待したのだろう。


最終的に燐炎は自分自身を初期化することで月人と真心の生態AIを同期させることにした。

それはマリア=燐炎にとっては辛い決断だったに違いない。


・・・・・

・・


さて、これから俺は、衛星兵器が使われた記録を改ざんしなければならないな。

それから、旅の全ての記録と国土衛星省と厚生環境省のデータも....


まぁ、いっぱいやらなければならないことがあって大変に見えるだろう。


だけど、俺はこう思うだけでいい。


『 2人を守るため改ざんしろ 』


そして俺の両目は青白く燃えるのさ。



    【野に咲くコスモスは色あせない~青白く燃える瞳~ 完】

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野に咲くコスモスは色あせない~青白く燃える瞳~ こんぎつね @foxdiver

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