LINK44 愛を守る想い

奴の指が高々と天をさして、そのまま真心に向けられた。


(なんだろう.... 何も聞こえない。ただ俺の叫びだけだ....)


「やめろー!!!」


視界が地面から離れいくと地球が見えた。


宇宙の様々な星々さえもその視界に入る。


瞬時に3人のスナイパーの姿を真上からとらえた。


天から3つの光る槍が降り注ぎスナイパーを瞬間で灰に変えた。

3つの灰はそよ風とともに塵となり跡形もなくなった。


「っ!! 何をした! おまえ! 何をした!? 」

鷲田はあまりの恐怖に顔が引きつっていた。


だが、1発の銃弾が真心の胸を貫いていた。


「か..カハッ..つき.. とさん。 いやだ.... 月人さんと一緒に..これからも..」

「あ、ああぁ!!」


真心の胸、背中からとめどなく血液が流れる。


「なんで.... なんで.. 真心の願いはいつも.... 誰か..彼女の願いを叶えてくれ! 叶えてやってくれよー!! 」


その時、真心の瞼が開き青白く燃えある瞳が見えた。


「月人。お前はこの娘といる事を望むか」

「ああ、望む。そして俺が.... 今度は俺が守るんだ」


頭の中に言葉が流れ込んできた。

『私は燐炎りんか。今からプログラムの初期化をします。あなたの生態AIと真心の生態AIは2つでひとつなのです。今から初期化することで2つは同期して本来の力を出すでしょう。 ありがとう、月人。 私に数々の思い出の地を見せてくれて。初期化されればもう『燐炎』はいなくなります。生態AIの適合プログラムは『守る想い』 そのため真心の生態AIには私のデータが入れられました。私は燐炎.. またの名は『マリア』 月人さん、あなたの目で見たコスモス、とても綺麗だったわ。この子を.. 私の娘を頼むわね 』


それは『燐炎』いや『真莉愛さん』の声だった。


真心の右目が青白く、左目が褐色になっている。

そして真心の胸の出血が止まり、見る見るうちに血色が戻っていく。


「真心」

「う、うう.. 月人さん....私」


「よかった、真心」

「月人さん! その目はどうしたの? 片方が....」



「こ、この化け物め」



「鷲田 まだお前いたのか」



怒りはなかった。

ただ、鷲田の声を聴くのはうんざりだ。

こいつに真心が見られるのもうんざりだ。


鷲田は転がっていたスコップを振り上げながら言った。


「このクソが! どいつもこいつも俺を認めないクソばかりだ! 俺は誰よりも優れているんだ!!」


こいつのひねくれた思考もうんざりだ。


空の一条の光は針ほどの細さになり、鷲田を貫いていく。


「なんだ! 目が! 目が見えね.... .. ....」


鷲田は自分の喉に手をあてながら何かを言おうとしていた。


そして次の瞬間、目力が無くなり、そのままひざまづくと、空に向かって口をパクパクしているのみだった。



鷲田は 光を失い、言葉を失い、思考を失った。



左の裾が引っ張られた。

真心が俺を見つめている。


俺は真心を抱きしめ言葉をつむいだ。


「真心、俺は君を愛している。俺と一緒にいてくれ」


「うん 私も愛してる」



****


—成田空港—


「いやぁ、お前の片目が青白くなって、俺はびっくりしたぞ」

「はは.. どうやら生態AIが活発になるとなるらしいですよ」


「で、おまえ、大丈夫なのか」

「はい。もう大丈夫です。俺は今、何よりも満たされてます」


「そうか.... イギリスか.. 俺は行ったことないが.... まぁ、がんばれよ。斎木博士もお前らといれば、いつか記憶が戻るだろう」


「 そうですね 」


俺たちはイギリスに安住の地を求めた。

裏から手をまわしてもらい、新しいイギリス国籍を手に入れたのだ。


それは『モンターニュ エ コリーヌ』の絶大な力によるところだった。


山岡夫妻はいつか遊びに訪ねてくると言っていた。


「お父さん。 ほら、今日は凄くいい天気だよ。空が真っ青だよ 」

「..あ....ぁ ....あ..お..」


「あぁ.... お父さん。そうだよ、『青』だよ 」


それが本当に「あお」と言ったのか「ぁ.. お..」とうめき声がそう聞こえたのかはわからなかった。


だが斎木博士にだって奇跡は訪れるだろう。

なぜなら俺たちはその奇跡の中生きてきたのだから。


そして俺はその奇跡の中『愛するひと』と出会えた。


そのひとはまた俺の裾を引っ張った。

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