第46話 一次選考
「新感選十」へ三本目を応募し終えて一月いっぱいまでの募集期間が終了し、大学入学の共通テストも無事終えた。
あとはどちらも結果待ちである。
入試に関しては、共通テストの後の二次試験が二月末から始まるので、あまり時間はなかった。
その日に「新感選」一次選考の速報が発表された。
やはりタロット・カードだけで創った第一作は落選した。
しかし最高の異世界転生である第二作と、異世界で推理小説の第三作は無事に一次選考を通過した。
改めて『シンカン』のチャットルームへ入った。
〔伊井田飯さん、わさび餅さん、畑中さん、こんばんは〕
〔お、多歌人くんこんばんは〕
〔こんばんわです、多歌人さん〕
〔来たね、噂の多歌人くん〕
〔噂ってなんでですか?〕
〔伊井田飯さんから詳しい話は聞いているからな〕
〔三作応募して、タロット・カードだけで創った一作目は残念だったね。でも二作目と三作目が通過してよかったよ。今年もまた異世界転生が読まれずに落とされるんじゃないかとヒヤヒヤしていたからね〕
〔私は結局異世界転生やめて今年はラブコメにしましたから〕
〔やはり笹原雪影さんの影響が強かったんですか?〕
〔そうだね。私の分析だと昨年の異世界転生比率から見て今年は確実に減っているね。やはり審査員長が昨年同様に笹原雪影さんだったのが効いているみたいだ〕
〔俺みたいに逆張りするやつは少ないと見ていたがやっぱりだ〕
〔畑中さんは異世界転生で勝負していたんですよね?〕
〔おうよ、絶対に数が減って目立てると思ったからな〕
畑中さんの強心臓には毎度恐れ入る。
〔で、多歌人くんが書いた「最強の異世界転生」ってやつを読ませてもらったけど、あれ異世界転生でいいのか? 異世界ファンタジーで間違いないとは思うけど〕
〔賭けでしたね。実際に「異世界転生」と見るか「SF転生」と見るかは意見が割れると思っていましたから〕
〔まあテンプレートにないからといって異世界転生じゃない、というのも暴論だとは思うけどさ〕
〔ちなみに皆さんの一次選考はどうなりましたか?〕
〔私は三作応募して二作通ったよ。例年通りだね〕
〔俺は異世界転生一本で勝負して一次選考通過だ〕
〔私はラブコメで通過しています〕
〔他にもハワード三世さんが異世界転生で通過しているから、多歌人くんの最大のライバルになると思うよ〕
〔ジャンル一位っすからね、ハワード三世さんって〕
〔でも前回とは異なり、異世界転生がけっこう残っているみたいですね〕
〔そうだね。前回は激減したけど今回は「新感選八」の頃と同じくらいの通過率だね〕
〔今までどおりですか。あとはどこまで戦えたかですね〕
〔私、多歌人さんの「異世界で推理もの」をやった作品好きなんですよ。難しいお題なのにきっちり書けていますし〕
〔俺もあれは素直に面白いと思ったな。魔法のある異世界なのに違和感がなかったからな〕
〔提案した私が言うのもなんだけど、あれは傑作だね。わさび餅さんも言っているけど、かなり難しいお題だったから。あれを終盤に新規で書き下ろしたっていうから凄いんだ〕
やはり第三作がいちばん評価が高いようだ。
異世界転生のブームもそろそろ終焉なのかもしれないな。
他の小説投稿サイトだともはや異世界転生ブームは去って異世界恋愛ブームが到来しているようだしな。
いつまで『シンカン』で異世界転生がトップを獲り続けるのかも怪しくなってくる。
そういう意味で第三作は目新しさも手伝って評価が高いのだろうか。
〔問題は二次選考ですね。それを通過して最終選考に残れれば、笹原さんを見返すこともできると思うんですけど〕
〔違えねえ。俺の異世界転生が二次選考通過できれば言うことなし〕
〔伊井田飯さんが今年また書籍化できるかというのもかかっていますし、わさび餅さんのラブコメもかなり面白かったので残りそうですよね〕
〔ここにいる皆が最終選考に残れたら申し分なしなんですよね。私のラブコメも残ってくれたら嬉しいな〕
〔伊井田飯さんの通過作はラブコメと現代ドラマですよね。ここだけで異世界転生二本、ラブコメ二編、異世界ファンタジー一本、現代ドラマ一本なんですね。ジャンルはうまい具合に分かれましたね〕
〔俺が思うにここにいる人は全員二次選考通過できるだろうな。二本通った伊井田飯さんと多歌人くんは一作に減るだろうけどな〕
〔なぜ私たちが減る前提なのかね。私は一作だって落とすつもりはなかったんだけどね〕
〔でも一次選考で一作落ちてるじゃないですか〕
〔痛いところを突かないでくれよ。なんであれが落ちたのか、分析中なんだから〕
それにしても一次選考で第一作が落ちたのは痛かったな。
あれはあれで手応えを感じてもいたんだけど。
やはりちょっと不評を買ったのがいけなかったのかな。
「最強の異世界転生」と「異世界で推理もの」は駆け込みで投稿したので、評価が定まる前に選考に入ってもらえたのがよかったのかもしれないな。
あまり初めのうちに応募してしまうのも良し悪しか。
まあ本当に面白いと思える作品なら、どんな作品でも通過できるとは思うけど。
ただ、小説投稿サイトを通じて応募する小説賞の場合、先出しすると手の内がバレてしまうので、腕に覚えるある人が後出しジャンケンを仕掛けてくるぶん不利になるのは否めない。
それが嫌なら終盤に駆け込むしかないのだ。そして今回はうまく第二作、第三作が駆け込みで応募できた。
この二作は真似されなかったというのも大きいのだろう。
残るは二次選考、そして最終選考である。
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