第40話 痩せる魔法を求めて

 「SF逆転生」ものを作るべく物語の骨格を決めなければならない。

 タロット・カードを何度も引いてみて、これはと思える物語の元型を探していく。

 そのうちに前回の反省を思い出した。


 すべてタロット・カード任せで決めた作品は、なにもかもがちくはぐだった。

 まったく同じ作り方をしたら、同じようなものしかできあがらないだろう。

 ここはタロット・カード任せにしないで、どんな物語にするか自分で考えたほうかよいのかもしれない。


 ◇◇◇


 「SF世界からの転生」としてどのような主人公が求められるのか。

 機械が発達した世界に適合した人物像。

 たとえば科学技術の発達した未来は人類がどのように進化しているか。

 移動補助手段が発達していてあまり歩かないのかもしれない。

 そうなると太っているのかもしれないな。

 たいていの場合、未来人はスレンダーな人物を想定するだろう。

 だから「太っている」というだけでもじゅうぶん差別化できるのではないか。


 そして転生したからといってイケメンになるのももはやテンプレートだ。

 転生して未来の記憶を取り戻したとして、それに引きずられて移動を億劫に思ってやはり太る。

 歩けばいいのに電動キックボードで移動するから痩せもしない。

 未来の記憶を頼りに新しい商品を開発するかもしれないが、そこまでのチート性能がない「ただの未来人」のほうが「なんでこの世界には○○がないんだ!」ということになって面白くなりそうだ。


 未来に自転車なんてなくなっていて、電動アシスト自転車も電動バイクに切り替わっている。

 とことん筋肉を使わない生活をすることになるから、結果的に太る。

 ただ、見た目は気にするかもしれないから、未来人はダイエット薬を毎日飲んでいて太らないようにしていた。

 でも現代にはそんなものはないから、単に太る。


 そう考えると太った主人公が現実世界に逆転生して、未来のことを思い出すもののそれらがまったく役に立たずやはり太ってしまう。

 太った主人公がダイエットを目指すものの、現代では飲んだだけで痩せるようなダイエット薬など存在せず、さまざまなサプリメントを試してみる。


 結果として「この世界では運動しなければ痩せないんだ」と観念して、運動をしようと思い立ったところ、なんらかの原因で「異世界」に飛ばされてしまう。

 未来から現代へとやってきた手順になにかあったのかもしれない。

 本当はなにかをしなければならなかったのに、それをしていなかったので「時空間」から弾き飛ばされて異世界へ。

 「異世界」にやってきたら、「痩せる魔法」があるというのでそれに飛びついたはいいが、未来と現実世界の知識を買われて魔王にこき使われる羽目に。

 そして正義の勇者が現れて、機械と魔法を融合した「カラクリ」を操って勇者パーティーを全滅に追い込んだ。

 その手柄を買われて昇進すると思ったら、用済みと判断されて魔王城から追放されてしまう。

 これで「追放」ものも取り込めるか。


 「カラクリ」を動かすための魔力を手に入れるために魔法の泉を訪れて、永遠に魔力の湧き出す魔道具を手に入れる。

 そうして勇者パーティーをも全滅に追い込んだ「カラクリ」を操って魔王を退治し、世界の平和を手に入れる。

 このあたりに「主人公最強」が出せるかもしれないな。


 そして一度は勇者パーティーを全滅させたことで世界を敵に回したものの、結果として魔王を倒した功績で「勇者」と認められることに。

 「カラクリ」とともにその名は伝説に刻まれることとなった。


 しかし「痩せる魔法」が使えた魔王がいなくなったことで、勇者はまたただの太った青年に戻ってしまった。

 そして王城でうまいものをたらふく食ってどんどん太っていくのであった。

 おしまい。


 ◇◇◇


 流行りはかなり取り込めているとは思うが、問題はこの「痩せたいのに億劫する主人公」にどこまで魅力があるかだな。

 痩せたい願望があるものの、結果的に太ったままでいいやという心境に到達するのがこの物語の肝である。


 「異世界転生」すれば現代でおっさんだったとしても美少年や美男子、美少女や美女などになって見た目が改善する物語が多い。

 そこを逆手に取って、太ったままになってしまうが、それでも「カラクリ」が強いから最強の勇者になれる。

 これなら続編も考えられそうなので、連載の惹きもかなり強くなりそうだ。


 見た目太った青年が「最強勇者」というのがどこまで受け入れられるかだが、現在は「多様性」の時代である。

 太っていようと勇者は勇者だ。

 読者がこの主人公を嫌う要素にはならないだろう。

 であれば、この太った勇者の無双物語には、相応の魅力があるのかもしれないな。


 あと問題になるのは、これが最強の「異世界転生」ものになりえるかどうかだ。

 流行りの要素をかなり取り込んではいるものの、やはり太った主人公が「痩せる魔法」の恩恵に与っていたものの、最終的にそれを投げ捨てて正義に目覚めるパターンが、最強たりうるのか。


 まあここまで決まっていれば、あとはどんな出来事を起こして未来から現代へ転生し、そして異世界へと転移していくことになるのか。

 これを決めなければならない。

 ここはタロット・カードを使う余地がじゅうぶんあるな。



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