第2話(最終話) 2度目の恋は上手になったのか?
奥手だった私は、セカンドラブの相手の女子であるR子とは中学2年生と3年生の時に同じクラスで、2年の時の文化祭以来結構仲良くなって、休み時間にはいつも会話していました。
でも、それ以上何もする事が出来なくて、R子には気持ちさえ伝えられませんでした。卒業式の日の夜は、もうこれでR子に会えないんだと思ったら一晩中涙が止まりませんでした。女の子の事を想って泣いたのはこれが初めてでした。
その後、R子とは2回会う事になります。ただ、残念ながら2人きりでデートとかではないです。そんな事が出来るのなら苦労しません。熱いロマンスを期待されていた方、ごめんなさい。
まず1度目の再会。意外と早かったです。卒業後すぐの春休みのある日の事。
きっかけは、私の家のはす向かいに住んでいた同級生のМ子。М子も私をいじめからかばってくれた人気者グループの1人で、陸上部のエースでした。この娘と、やはり同じグループで卓球部のA子と、R子の3人で私の家に遊びに来たのです。
まあ、とはいっても家に上がったのではなく、玄関で私とその3人の計4人で中学時代の思い出話をしただけです。
その際にとてもショックな事を聞きました。R子に彼氏が出来たという話です。しかも相手は知っている男。同じ中学で陸上部にいたD男という男でした。
D男は同級生でも1、2を争う高身長で、陸上だけでなくスポーツ万能でイケメンです。別のクラスでしたが、同級生で名前を知らない者はいないくらい有名人でした。
やっぱり「かぼちゃワイン」みたいに、高身長の女子がチビの男子に惚れるというのは漫画だけの世界のようです。現実は厳しい。
「そっか。D男か。お似合いだね。長く続くといいね」
なんとか平静を保ち、心にもない言葉をかけました。
「ありがとう」嬉しそうにはにかむR子。
顔で笑って心で泣いてとはこの事です。この日もまた枕を涙で濡らす事に。
そして高校時代。男子校だった私は高校時代には1度も恋をする事がありませんでした。にもかかわらず意外に女性との接点(?)がありました。
まず、童貞喪失のチャンスが。2年生の時に悪友のH男から1コ上のT子を紹介しようかと言われたのです。
H男は中学と高校時代の同級生で性のメンター的存在。メンターとは、助言や相談に乗る事で相手の成長を促す人物の事です。彼もやはり私をいじめから救ってくれた人気者グループの一人。しかも色々エロい事を教えてくれた人です。
T子は不良少女ですごい遊んでいる事で有名でした。後輩の筆おろしをしまくっている、童貞キラーと言われていました。H男いわく噂は本当のようです。
「せっかくの気持ちは嬉しいけど、俺やっぱり初体験は好きな人としたいからいいや」
T子はかなりの美人でナイスボディ。私好みでした。それに17歳というほとばしる性欲が理性を凌駕するような年齢。男子校で女に無縁だから、まるで飢えた狼のような状態だったにもかかわらず断ってしまいました。まだこの時は純だったのです。
それと、実際には違ったのですが、家族から「我が息子にやっとモテ期が来たか」と誤解された、ちょっとした事件がありました。当時は「モテ期」という言葉はありませんでしたが、一見するとそういう状態になったのです。
なぜモテ期と誤解されたのかと言うと、一時色々な女の子から入れ替わり立ち替わり家に電話が来たからです。
私の父はやはり取り次いでくれませんでした。パートⅠでお話しましたが、私の父は厳格で真面目すぎる人で、中学生の頃に初恋の相手からの電話を取り次いでくれなかった事があったのです。
父は私が高校生になってもなお、男女交際は御法度と考えていたようです。そのくせ、適齢期になった途端に「早く孫の顔を見せろ」ですからね。故人(父は10年以上前に他界してます)を悪く言いたくありませんが、あんまりな対応ですよね。
女の子から電話がきた事は、母が教えてくれたのです。
「Y男、昨日もまた女の子から電話がかかってきたよ」
「本当?」
「お父さんには黙っててあげる。どんな人なの? 彼女?」
「いやいや、そんなんじゃないから」
母は父とは違い、色恋にとても理解があります。性教育もしてくれました。
さて、なぜ女性からの電話が相次いだのでしょうか。意外な原因がありました。
それは、ある「宗教」に勧誘されそうになったからです。
つまり、女性からの電話は色っぽい話ではなく、宗教の勧誘だったのです。
その宗教は私の恩人が所属している宗教なので、すげなく断る事も出来ません。つかず離れずという難しい人間関係を続けなければならなかったのです。
そんな訳で私は未経験どころか、ファーストキスさえまだでした。本当は燃えるような恋をして、好きな人と順序を踏んで結ばれたい、なんていう夢もありました。
でもそんな事を言っているうちに大学生となり、いつのまにか20歳目前まで来ていました。なのでもうぜいたくは言っていられません。とにかく焦っていました。優先順位を間違えていたのです。
体験さえすれば大人になれると思っていました。早く大人になりたかったのです。今考えるととんでもない勘違いですね。セックスしたくらいで大人になれるなんて。
それで、私は当時バイトしていた某デパートの先輩、T子と初体験しました。T子にも童貞キラーという噂がありました。なんと東京にもそういう人がいたのです。それこそ手取り足取り教えてもらいました。
その後、私は新宿のディスコでバイトし、様々な恋愛経験をしました。それなりにセックス経験も積み、色恋については人並みになれたと思い込んでいました。
※ このあたりの話は以前別の話で詳しく書きました。興味のある方は別途ご確認ください。青少年の害ゆえ、リンクはいたしませんあしからず。
そんなある日の事。実家の母から電話が来ました。
「中学の時のクラスメイトから同窓会の連絡が来ているよ」
私は胸のトキメキを感じました。もしかしたらR子に会えるかもしれない。そう思ったのです。
クラス会にR子が来ました。二度目の再会です。しかも席は自由で、私の隣に座ってくれました。これは願ってもないチャンス。
ところが……
「私、去年結婚したんだ。子供も1人生まれたよ」
当時、私もR子も21歳ですから、なんと20歳で結婚した事になります。
ガーン! 「中学の頃好きだった。今でも好きだよ」って告白したかったのに。
今の自分なら出来る、そう思っていたのに。
たとえ結婚していても、今この場ではR子と色んな話をしたいと思っていました。ところが……
R子の反対側にO子が座りました。O子は中学時代に私の事を好きらしいという噂がありましたが、残念ながら私は同じ気持ちではありませんでした。でも積極的なO子はグイグイ来るのです。しかもとても露出の多い服を着ていました。お化粧も上手でかなり色っぽくなっていました。
(しょうがないなあ。まあいっか。R子は人妻だしな)
私は結局、同窓会ではその後O子の話相手をしていました。
こうして、私のセカンドラブは全く何も出来ずに完全終了したのでした。
完
◇◇◇◇◇◇
読んでいただきありがとうございました。
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素直になりたくてⅡ~1度目の恋よりずっと下手になっていたセカンドラブ 北島 悠 @kitazima
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