第21話 エピローグ アリスとの電話

 アリスがイギリスに帰国してからも、俺は相変わらず学生生活を送っていた。2回の定期試験、富津野市の高校生の展示。どうにか赤点を回避し、無事に夏休み突入である。1学期が終わった夕方のことだった。絵を描く準備をしている最中、スマホが鳴っていた。電話番号でアリスからだとすぐに分かったので応じる。


「こっちだとこんばんは……かな」


 アリスの声。少し口が緩んでしまう。


「そうだな。こんばんは。アリス。珍しいな。この時間帯にかけてくるなんて」


 現在の時刻は16時30分になっている。時差を考慮するとやや早いどころかだいぶ早い気がする。


「出発する準備をしてるの」


「仕事か。頑張れよ」


 国際魔法保護委員会に所属している彼女のことだ。ヨーロッパなど、どこかに朝早く行くのだろう。


「それで場所はどこに」



 それでも気になるものなので聞いてみた。何故かアリスは答えづらそう。電話からでも分かるのはよっぽどである。思ったよりも早く答えてくれたのはいいのだが、予想外の答えが出てくる。


「えーっとね。実は日本、また富津野に」


 何故という疑問が頭の中を埋め尽くす。


「なんで!?」


「そのね。5月にあったことを直接話したいって。見せたいものもあるみたいで」


 富津野高校で起きた不思議な出来事を解決した件だった。聞きたがる人が一体誰なのか。それを聞くしかないだろう。


「誰なんだそれ」


「安部光彦」


「あー……その人か」


 国際魔法委員会の日本のお偉いさんだった。富津野のOBとして話を聞く形になるのだと予想した。


「分かった。それで俺も同行すればいいのか」


「うん。あ。でも大丈夫なの?」


 気遣いをするアリスらしい。文化祭がある9月に向けての準備、美術部の合宿の存在を知っているためだ。


「大丈夫だよ。まだ先の話だから」


「そっか。良かった。またよろしくね」


「こちらこそ」


2か月後にあの思い出を語るとは思ってもみなかった。甘酸っぱい部分などは省くことになるが、青春であることには変わりない。それにまたアリスと実際に会える。それだけで十分嬉しい。


「それじゃそろそろ切るね。またね」


 アリスとの電話が終わる。同行するのなら、彼女の足を引っ張るわけにはいかない。自分なりの準備をするとしよう。

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美少女留学生と挑む七不思議! いちのさつき @satuki1

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