第10話 犯人像を探る② 計画的な犯行か否か?
前話で顔見知りの犯行を否定した。
ということは、必然的に犯人は顔見知りではないということになる。
顔見知りではない存在と言っても、色々なケースが考えられるが、まず一番先に除外できるのは、キャンプ場の運営に関わる人や各種の業者の人達だ。
美咲ちゃんの失踪当時にキャンプ場にいた人達は当然のこと、いた可能性のあるすべての人は警察にアリバイを求められたはずだからだ。
こう書くと、
「アリバイを偽証して、何処かに潜んでいたなんてことはない?」
なんて疑いを持つ人もいると思うが、それも可能性として極端に低そうだ。
何故なら、キャンプ場という場所柄、交通の便もあり車を何処かに停めないと動きようがないので、自分自身の身を隠せても車自体が人の目に晒されればキャンプ場近辺にいたことを隠しようがないからだ。
今の時代はドライブレコーダーが大抵の自動車には付いている。
なので、駐車場に停めていればもちろんのこと、車道近辺の様子は何らかの形で映像として残ってしまう可能性が高い。
もし、アリバイを偽証して車が停車していた映像が出てくれば、怪しいことこの上ないので、そんなことをすれば真っ先に疑われるし、もうとっくに犯人として逮捕されていることだろう。
美咲ちゃんが失踪して捜索が開始されたのは、失踪してから約20分後……。
その短時間で犯行に及び捜索の目をかいくぐり逃亡することは、人力だけでは不可能だ。
どう考えても犯人は自動車を使っている。
しかし、自動車は犯行には必須だが、長くは停めておけない。
長く停めれば、キャンプ場にいた人達のドライブレコーダーに映像として残ってしまう可能性が高いからだ。
実際、警察はキャンプ場近辺に停車していた車を相当捜査していたらしいので、それで怪しい自動車が浮上しなかったことからすると、まず間違いなく犯行に使用した自動車を長く停めてはいなかったと言える。
何度も書いているが、美咲ちゃんが一人になったのは、ジャンケンに負けてお菓子を食べるのが遅くなったからだ。
つまり、偶発的な要素で一人で移動することになった。
犯行には自動車が必須で、その自動車を長くは停めていなかった犯人が、偶発的な要因をピンポイントで計画的に狙うことはまず不可能と言える。
つまり、犯人はたまたま一人きりになった美咲ちゃんを運転している途中で見掛け、拉致したか殺害したとしか考えられないのだ。
巷では、
「警察犬が美咲ちゃんの臭いを追えなくなった橋の側に、車を停められるスペースがあるので、犯人はそこに車を停めて犯行に及ぶ機会をうかがっていたのではないか?」
なんて説を唱える人もいる。
だが、その可能性は物凄く低いだろう。
これは偏執的な犯人像を思い浮かべてのことなのだろうが、現実的には不可能に近い。
警察の捜査状況と、美咲ちゃん失踪当時の状況が、計画的な犯行を否定しているのだ。
計画的な犯行ではないことで、何が分かるか……。
① 殺害したか、拉致したかは分からないが、犯人は犯行後美咲ちゃんの身柄を自動車で犯行現場から持ち去った。
② 計画的な犯行ではないので、殺害していた場合でも、すぐに遺体を山に遺棄しに行くことは考えにくい。(自動車で入れないところまで、25キロの体重の美咲ちゃんを人力で短時間に運ぶのは難しいから)
③ キャンプ場に自動車を長く停めていた人は、顔見知りか顔見知りではないかにかかわらず、犯人ではない。
④ キャンプ場近辺を自動車で通りかかる可能性があり、かつ、キャンプ場に自動車を停めておく必要がない顔見知りではない人が、犯人の可能性が高い。
以上のことが言えると思う。
とかく、
「変質者の犯行なのではないだろうか?」
みたいなイメージから、犯人が偏執的にターゲットを物色していたかのように考えがちだが、その可能性は極めて低いと私は思っている。
小倉美咲ちゃん失踪報道を観て、不可解な点を探る てめえ @temee
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