第147話 足代先輩とコミケでコスプレ


「目線、こっちにくださーい!」

「こっちもお願いしまーす!」

「キャー! 素敵! 最高っ!」


 ここはコミックマーケット、いわゆるコミケの会場だ。

 そんな中、大観衆に囲まれながら俺は足代先輩と一緒にコスプレをして写真に撮られていた。


「足代さん……ちょっと近くないですか?」

「ダメダメ、山本君。この2人は凄い推されてるカプなんだから、これくらいサービスしないと」


 そう言って、可愛らしい制服姿の足代先輩が俺の顔をそっと自分の胸元に引き寄せる。

 その瞬間、周囲のファンの方々から「キャー!」と嬉しそうな悲鳴が上がった。


(俺も悲鳴上げちゃいそうです……)


 足代先輩の胸の中でそんな事を思いながら、ドキドキのコスプレ撮影会は続く。


       ◇◇◇


 コスプレの撮影が終わり、今度は足代先輩の同人誌を売るのを手伝わせてもらう。

 隣同士で本を売りながら、俺はまだドキドキしている自分の心臓の音を誤魔化すように話しかけた。


「それにしても凄いですね! 足代さんの同人誌、アニメ化までするなんて」

「あはは、本当に自分でもびっくり! でも、山本君の変わりようの方が凄いよ!」

「俺は『太ってた方が良かった』って結構言われちゃうんですけどね」

「あ~、それは私も同意かなぁ」

「や、やっぱりそうですか……?」

「でも、見た目が変わっても中身は山本君のままだから安心したよ!」


 足代先輩が描いていた同人誌、『妹プレミアム』シリーズ。

 一部のファンの間でカルト的人気を誇り、その熱意に推されてついにアニメ化まで決まってしまった。

 そして、その主人公の女の子を足代先輩が、人気の男性キャラを俺がコスプレさせていただいているというわけである。


「良かったんですか? あわせの相手が俺なんかで……」

「何言ってるの!? むしろ、土下座してお願いしたいくらいだよっ! や、山本君は嫌じゃなかった……?」

「とんでもないです! コスプレは初めてでしたが、足代先輩のおかげで良い思い出になりました!」


 なにせ、コスプレをした足代先輩がとても可愛いから周囲ファンの反応も物凄いのだ。

 それに比べたら、俺は路傍の石のようなモノ。

 それなのに、足代先輩と一緒だとキャーキャー言ってもらえるので俺もその気になってポーズなんかを決めてしまう。


(ファンの皆さんは凄い熱狂的だな。ふふっ、みんなリリアちゃんみたいだ)


 同人誌を売りながらそんな風に思っていると、女性ファンの一人が俺に話しかけてきた。


「あのっ! 写真撮らせてもらっても良いですか!?」

「あ、はい! じゃあ、足代先輩。俺の隣に――」


 俺がそう言うと、女性ファンは恥ずかしそうに言う。


「えっと……あ、貴方と2ショットは……ダメですか?」

「え? 俺と?」


 特殊な提案に戸惑っていると、足代先輩が慌てた様子で間に割り込んできた。


「ご、ごめんねっ! その……私たちはセットじゃないとダメなの!」


 このキャラクター同士でのカップリングに強いこだわりがあるのだろう。

 足代先輩は笑顔を絶やさずにそう答える。

 すると、その様子を見ていた周囲の人たちは何やら幸せそうに手を合わせ始めた。


「推しカプのやきもち……! 尊いっ!」

「最高な瞬間見ちゃった……」

「そ、そうですよねっ! むしろ、ありがとうございますっ!」


 俺に話しかけてきた女性ファンも感謝した。

 さすがは足代先輩、ちゃんとファンを喜ばせる方法を熟知しているみたいだ。


 そうして、さらに俺と密着する足代先輩と一緒に何枚かファンの方たちと写真を撮り終えるとコミケが終了した。


       ◇◇◇


 普段着に着替え終えた俺と足代先輩は2人で話しながら帰り道を歩く。


「足代先輩、本当に凄いです! ファンの皆さん、みんな凄い笑顔でした!」

「うん、私も頑張って本を作ったかいがあったよー」

「やっぱり、大変ですよね。それを続けてきた足代先輩は本当に凄いです!」


 そういうと、足代先輩は少し力なく笑う。


「うん、本当はね、私、筆を折りかけてたんだ。人によっては『気持ち悪い』だなんて言われちゃう本だから」

「足代先輩……」

「本当に、全然描けなくなった時期もあったくらい……。――で、でもねっ!」


 そう言って、足代先輩はカバンから一通のファンレターを取り出した。


「海外の女の子から凄く熱意のこもったファンレターをもらったの! それで、また頑張ろうって思えたんだ! 何度も何度も読み返して元気をもらってた!」


 足代先輩は手紙を開いて優しい笑顔で読みかえす。


「日本語を一生懸命覚えて書いてくれたみたいなの。私もお返事を書いてたら仲良くなって。病気で入院していたみたいなんだけど、この前無事に退院できたんだって!」


 足代先輩は手紙を大切そうにギュッと胸に当てて目をつむった。


「私、この子に会いたいな。それで、直接お礼を言いたいの。貴方のおかげで、私は好きなことを続けられたよ! って!」


 その手紙の送り主の名前が『リリア』であることを見つけて、俺は微笑む。


「ふふっ、会えますよきっと。そう遠くないうちに……」



 ――――――――――――――

【感謝&お願い】

 私も最近まで筆を折りかけていたので、すみませんが応援の意味で☆評価を入れていただけると幸いです!

 1人でも、☆3つ評価を入れていただけると私は確認して毎回凄く喜んでいます!


 未評価のまま読んでる方がいらっしゃいましたら、未熟な作者の為に☆3つ評価を入れていただけますと続きを執筆するエネルギーになります!


 面白い作品を生み出せるように一生懸命頑張りますので、

 何卒、ご協力よろしくお願いいたします!

 <(_ _)>ペコッ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る