第138話 登校します
――翌日の朝。
「山本、彩夏。おはよう」
「藤咲さん、おはようございます!」
「おはようございます~」
一足先に起きてキッチンにいた藤咲さんに彩夏と並んで挨拶をした。
彩夏はまだ少し眠そうだ。
テーブルにはすでに俺と彩夏の分のサラダやエッグトーストとオニオンスープが綺麗に並べられていた。
「藤咲さんが朝食を作ってくださったんですか? お疲れなのにすみません」
「いいんだ、山本の初登校の日なのに朝食を食べ損ねたりしたら大変だからな」
「藤咲さん、ありがとうございます! 私、顔洗ってきますね~」
目をこすりながら、彩夏は洗面台に向かった。
「お店で残ったレモンタルトもあるから、デザートに食べてくれ」
「ありがとうございます!」
寝間着のまま、レモンタルトを切り分ける藤咲さん。
俺の視線は自然と藤咲さんの胸元に誘導されてしまう。
自分でそのことに気が付いて、俺は慌てて視線を逸らした。
(昨日の夜、俺はあの胸の中で泣いてたんだよなぁ……今思うと凄いことを……)
丁度彩夏も居なくなったので、俺は恥ずかしい気持ちを堪えて藤咲さんにこっそりとお礼を言う。
「その……昨日はありがとうございました。藤咲さんのおかげで凄く心が軽くなった気がします」
「大したことはしてないさ。そばに居たのがたまたま私だったというだけ、山本はもっと周りの人間に甘えて良いんだ」
さすがは藤咲さん。
昨日のことを考えると、俺は目も合わせられないくらいに恥ずかしい。
だけど藤咲さんは爽やかな微笑みすら浮かべている。
これが大人の余裕というやつだろう……あれ?
「……藤咲さん。レモンタルトは温める必要ないですよ?」
「……へ? あっ、そ、そうだな! すまん、まだ寝ぼけているみたいだ! あはは!」
レモンタルトをオーブンで加熱しようとしていた。
お店ではほとんどミスなんかしないのに……。
どうやら藤咲さんも内心では凄く動揺しているみたいで、失礼にも可愛いだなんて思ってしまった。
◇◇◇
「じゃあ、俺は学校に行きますね」
おろしたての制服を着て、カバンを手に持つと俺は藤咲さんと洗い物をしている彩夏に言う。
「あれ? まだ早くない~?」
「俺は編入だから、先に職員室で少し説明があるんだ」
「そうか、まぁ登校中に生徒達に取り囲まれる可能性もあるからな。そっちの方が良いだろう」
藤咲さんは笑いもせずにそう言った。
初日の登校中からイジメられると思っているのだろうか。
……あり得る。
「確かに、お兄ちゃん絡まれるかも……心配だから私も一緒に行くよ!」
「彩夏はいつも一緒に登校してる友達がいるだろ? それに大丈夫、絡まれそうになったら逃げるから」
「だ、大丈夫かなぁ。やっぱり絡まれそうで心配……」
彩夏はそう言って俺の顔をじっと見る。
そんなにムカつく顔なのだろうか。
それに、彩夏もそんな俺と一緒に登校するのなんて本当は嫌だろう。
「目立たないようにこそこそと登校するから大丈夫」
1年前に俺の事をイジメてた奴らにでも会わなければ大丈夫だろう。
えっと、いつも俺の頭を踏みつけて笑ってた
隣の席で俺をキモイキモイと言っていた
他学年では、俺をサンドバックにしていたボクシング部のエース
……あげていったらキリがなくなってきた。
これでもほんの一部だから、俺が豚男だとバレないように気を付けて登校しなければ……。
「それじゃあ、行ってます!」
「「行ってらっしゃ~い!」」
これからとんでもない学園生活が待っているとも知らずに、俺は学校へと向かった。
――――――――――――――
【業務連絡】
投稿が遅くなりすみません!
7月に連続で投稿する予定なので、すみませんがそれまではゆっくりの投稿でお願いいします!(7月に発表があるので!)
「学園無双が早く見たい!」という方は新作の方が早く見れると思いますのでこちらを読んでいただけると嬉しいです!
↓
『最強の傭兵である俺がイジメられてる陰キャ高校生に転生した件~語学堪能で喧嘩も最強な俺は学園で現代無双する~』
https://kakuyomu.jp/works/16817330657549648585
ざまぁ&超無双する痛快な作品です!
新作も☆評価と作品のフォローをぜひお願いいたします!
<(_ _)>ペコッ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます