第114話 驚きすぎて、言葉が出ません
「山本流伽様のご到着までこちらでお寛ぎください」
「…………」
そう言って通されたのは入口にムキムキのガードマンが立っている高級ラウンジだった。
静かに流れる弦楽器による5重奏はスピーカーではなく、実際にその場でプロと思わしき方々が演奏している。
シャンパングラスをトレーに載せた綺麗なお姉さん達が笑顔を浮かべながら優雅に歩き、食事が出来そうなカウンターには板前さんが立っている。
私は思わず言葉を失ってしまった。
こんなとんでもない場所に私を連れてきた紳士はニッコリと笑う。
「お食事を召し上がりになりたい場合は、カウンターに、もしくは私にお申し付け下さればお運び致します」
状況が理解できずに固まってしまう。
「あ、あのっ! 何かの間違いではありませんか!? ウチは貧乏でこんな凄いラウンジなんて使えないと思います!」
「いいえ、ご贔屓にして頂いております遠坂蓮司様よりご依頼を頂いております。『山本彩夏様に丁重なおもてなしを』と」
遠坂蓮司さん。
お兄ちゃんに治療のことを教えてくれたお医者さんだ。
お兄ちゃんがお金を借りている相手でもあるんだけど……
私は勇気を持って、もう一度ラウンジ内を見まわした。
テレビでも見たことがあるような海外セレブやアーティストがラウンジで各々寛いだり、歓談している。
(お兄ちゃんが借りたお金の額ってとんでもないんじゃ……。毎日、もやしを食べて死ぬ気で働いて、私も一生懸命返済しないと……!)
「何かお飲み物をお持ちしましょうか? フルーツジュースも最高級のお品を取り揃えておりますよ」
「お、お水で結構です!」
「かしこまりました、ミネラルウォーターの種類ですが、硬度の低い順から銘柄は──」
「水道水! 銘柄は水道水でお願いします!」
あまりの高級感に圧倒されてしまい、私は水を飲むので精一杯だった。
(お兄ちゃん、早く帰って来て~! 落ち着かないよ~!)
リラックスをする場所であるはずのラウンジで、私は心身ともに疲弊させながら縮こまってしまっていた。
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