第97話 カウントダウン


「"ほらほら、山本! 早く中心に行って!"」


「"すみませーん、通りまーす!"」


 リリアちゃんのお願いを聞くために、俺は群衆をかき分ける。


 何とかカウントダウンには間に合い、俺はリリアちゃんを抱きかかえたまま時計台の前に来ることができた。


「"……山本、ありがとう。……ごめんね、無理言って"」


 腕の中のリリアちゃんに素直に謝られ、俺は内心で驚く。


 年の瀬が近づくにつれて、周囲の盛り上がりも熱を帯びていった。


「"ううん、誘ってくれてありがとう。あはは、蓮司さんたちに叱られる前に帰らないとね"」


 周りの人の声にかき消されないように、リリアちゃんは俺の耳元で話す。


「"私、変わろうと思うの。いや、『素直な私に戻る』……かな。忘れてもらうんじゃなくて。もし私が亡くなっても、みんなが思い出して笑ってくれるようにって"」


 きっと、ここに来たのはリリアちゃんの中の偽りの自分と決別する為だったのだろう。

 リリアちゃんは小学5年生なのに病気のせいで色々と考えすぎていた。


 今みたいに素直に我儘を言ってくれる方が。

 リリアちゃんが自分らしくいてくれる方が。

 俺としても嬉しかった。


 リリアちゃんの告白を聞きながら、年越しのカウントダウンが始まった。


 ――5!


「"私、お父さんとお母さんに今までのことを謝って、また仲良くしてもらおうと思っているの"」


 ――4!


「"山本と一緒に居て、私の考え方も変わってきたわ。せっかく私はまだ生きてるんだから、会っておかないと損よね!"」


 ――3!


「"なにより、私がもう限界! 大好きなお父さんとお母さんに会いたくてたまらないわ! そして、力いっぱい抱きしめるの!"」


 ――2!


「"そうしたら、今度は山本と柏木、蓮司も連れて日本に旅行に行くわ! 私は車いすだから、自分で歩く必要がなくて楽ちんね!"」


 ――1!


「"私、もう死ぬなんて考えない! 最後まで楽しく生きてやるわ! だから来年も――"」


 そこまで言うと、リリアちゃんはピタリと動きを止めた。

 異変に気が付いた俺はすぐにリリアちゃんと顔を合わせる。


 リリアちゃんは顔を青ざめさせて――

 苦しそうに胸元を手で押さえていた。


「"い……きが……苦し……!?"」


「"リリアちゃんっ!?"」


 ――ハッピーニューイヤー!!!!


 サンタニアの時計台の周りで花火が上がり、陽気な音楽が流れる。


「"誰か! 誰かっ! リリアちゃんが!"」


  俺の必死の叫びは群衆の歓喜の声にかき消された。


――――――――――――――

【業務連絡】

明けまして、おめでとうございます!

何とか、小説と現実のタイミングを合わせることができてホッとしています。

(駆け足だったので、文章が荒くなりすみません……)


今年も皆様が楽しめますよう、頑張っていきますので

何卒、よろしくお願いいたします。


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未熟な作者ではありますが、これからも温かい目で見守ってくださると幸いです。

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