第85話 貧弱でした


「"じゃ、じゃあドリブルをしてみるわね……"」

「"どうぞ"」


 リリアちゃんはバスケットボールを弾ませる。

 そして、浮き上がってくるタイミングでボールを片手で上からグッと押し込んだ。


 タイミングは完璧だ、どうやら運動神経が悪いというわけではないらしい。

 しかし、異変はすぐに発生した。


 ドリブルをしているリリアちゃんの姿勢がどんどん低くなっていき……


「"……バスケットってつまらないわね"」


 最終的にリリアちゃんは床に転がるバスケットボールを撫でながらつぶやいた。


 「力と体力がない」と言っていたのはこういう意味だったらしい。

 リリアちゃんは非力すぎてドリブルを維持できないのだ。


「"確かにドリブルだけっていうのもつまらないだろうし、他のスポーツをやってみようか"」


「"もう大きいボールはこりごりだわ。一番小さいボールのスポーツをやらせて"」


「"ボールが一番小さいスポーツ……"」


 俺は卓球台を用意した。


「"ピンポンね! この星の一等賞になってやるわ!"」


 ボールが軽くて小さいことに気を良くしたのだろう。

 リリアちゃんは上機嫌でラケットを握る。


「"これなら俺と一緒にラリーができるし、楽しいんじゃないかな"」


「"そうね! ツイストサーブを決めてやるわ!"」


 もはや色々と混ざりすぎてしまっているリリアちゃんがそう言ってボールを宙に放ると、完璧なタイミングで振りぬく。


 そして、見事にこちらに飛んできた――リリアちゃんのラケットが。


 俺は飛んできたラケットを左手で受け止め、右手に持っていたラケットで一緒に飛んできていたボールを打ち返した。

 流石はリリアちゃん、いきなり分身魔球を打ってくるとは……。


 リリアちゃんはラケットがすっぽ抜けてしまった自分の左手を見つめていた。

 そして、ため息を吐く。


「"ダメね。私はラケットを握る力がないわ。振る時に全部すっぽ抜けちゃうと思う"」


 どうやら、リリアちゃんの非力は相当なようだった。

 確かに、ペットボトルの蓋が開けられなくてよく俺に頼んでくるけど……。


 俺は次にリリアちゃんができそうなスポーツを考える。


――――――――――――――

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