第77話 お料理作戦その2
「流伽、そっちは順調か?」
「はい、柏木さん! お家を使わせて頂きありがとうございます!」
キッチンの反対側で、柏木さんも料理をしていた。
このキッチンは広すぎて、火を使う場所も2か所存在するので別々で料理ができる。
柏木さんも手料理を振舞いたかったようなので、柏木さんの貴重なお休みに合わせて今日の予定を組んだのだ。
「なに、自分の家だと思って使ってくれ。鍵ももう一つ作っておいたから、お前が持っていれば良い」
「そ、それは流石に受け取れませんよ……」
柏木さん、そんなに簡単に合鍵を渡しちゃダメですよ……。
相変わらずのセキュリティ管理の甘さに不安を覚えつつ、俺はお寿司に必要不可欠な酢飯を作る。
固めに炊いたお米に米酢と砂糖、そして塩を少々。
あとは空気を入れながら混ぜ込むと美味しい酢飯が完成する。
「"リリアちゃん、そこにあるうちわで扇いでくれる?"」
「"あら? そんなに暑いかしら。まぁ、良いわ。作ってもらってるんだしね"」
リリアちゃんはそう言って俺を扇ぎ始める。
「…………」
心地よい風が俺の頬を撫でた。
「"……山本、扇いでもらいたいのは酢飯の方だろ? 何でリリアに教えてやらないんだ?"」
「"いえ、このまま俺を扇いでもらうのも悪くないな……と思いまして"」
「"酢飯の方だったらちゃんと言いなさいよ~!"」
リリアちゃんは顔を赤くして俺の頬をムニムニと引っ張る。
せっかくリリアちゃんと仲良くなる作戦なのにまた怒らせてしまった。
酢飯が完成したら、俺は大きな発泡スチロールの箱を開けた。
中にはサーモン、マグロ、ブリ、ハマチなどの主要な寿司ネタが一通り柵の状態で氷で冷やされている。
柏木さんは、少し呆れたように笑った。
「"それにしても、昨日の夜から外出許可を申請された時は驚いたぞ。とんでもない行動力だな"」
「"えぇ、新鮮なネタが欲しくて漁港まで買い付けに行きましたから! その日の取れたてをお出ししたくて!"」
「"そ、そんなことまでしたのっ!? ここから海なんて凄く遠いのに!"」
リリアちゃんは酢飯をつまみ食いしながら驚く。
「"どうしても柏木さんやリリアちゃんに美味しい物が食べさせたかったですから。料理人の性ですね"」
「"そ、そうっ! それはその……う、嬉しいわ……"」
リリアちゃんは小さな声でお礼を言った。
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