第78話 お料理作戦その3
「"さて、私の料理はあとはオーブンで20分焼けば完成だ。やはり料理は良い息抜きだな"」
柏木さんはそう言って、気持ちよさそうに伸びをする。
「こうして一緒にキッチンに立っていると、なんだか夫婦みたいですね」だなんてドン引きされることは言わない。
「"じゃあ、柏木さんもリリアちゃんとそちらへお座りください"」
「"そうだな、山本の料理を先に頂こう"」
柏木さんはワクワクした様子でお寿司のネタが並べられたテーブルの席についた。
俺はお寿司を握る準備をする。
こういうのは雰囲気が大切だ。
俺は板前っぽい白い服に身を包んで、白い帽子をかぶった。
どちらも、柏木さんのお古の白衣を使って自分で制作したモノだ。
妹と二人暮らしなおかげで、実は裁縫スキルも自信があり、普通に服とかも作れる。
おてんば娘の彩夏がどこかに引っかけて服やスカートを破いてしまった時はよく縫ってやっているし、お洒落な服や綺麗な服を買ってやれない分俺が作ってやっているのだ(そもそも、彩夏は全然欲しがらないが)。
彩夏に恥をかかせまいと自分で研究して彩夏の服を作っているうちにむしろ彩夏はお洒落な子として周囲に認知されるまでになった。
しかし、肝心の本人はいつまでもお洒落に無頓着なままである。
いつか好きな人でもできれば、彩夏も少しは女の子らしくなるのだろうか。
日本をたってまだ3か月と少し。
すでに妹ロスになっている俺は寂しさを堪えて、異国の地で寿司を握る。
しかしこの衣装だが、実は今回かなり苦労した。
それは俺が柏木さんにお願いをしに行った時のこと……
「柏木さん、もう着なくなった古い白衣を1、2着もらっても良いですか?」
俺のお願いを聞いて、柏木さんは少し考えるとすぐに納得した。
「なるほど。まぁ……お前も男の子だからな。良かったら私が今着ているモノを脱いで渡そうか?」
「ち、違いますよっ!? 衣装を作りたいんです! 買うとお金がかかっちゃいますし、柏木さんって白衣を何着も持て余してるって聞いてましたから! 板前の格好をするのに丁度よいと思いまして!」
「なんだ、そんな理由か。別に良いぞ」
……とまぁ、こんな感じであと一歩で変態になるところだった。
全く、柏木さんも目の前で白衣を脱いで渡そうとしてくるなんて……。
――誘惑に負けずに良く我慢したと俺は自分を褒めてやりたい。
「"お客さん方、何を握りましょうか!"」
板前の格好になった俺は柏木さんとリリアちゃんに元気よく尋ねた。
――――――――――――――
【業務連絡】
急に寒い!?
皆さん、風邪をひかないようにお気を付けください。
ちなみに、今ちょうど山本たちの世界も10月位です(7月に出発、3カ月の治験トレーニングを終えたので)
引き続き、よろしくお願いいたします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます