第28話 アメリカは地獄でした
アメリカ南部、サウスビーデンの大学付属病院。
アメリカに到着した俺は蓮司さんにもらった紹介状を頼りに、この巨大な病院の一室に招かれていた。
紹介されて、目の前にいるのは大きめの白衣を身に着けた美人なお医者さん。
日本人で、名前は柏木百合(かしわぎゆり)さんだ。
年齢は何と俺と同級生の16歳。
渡米した後、飛び級で卒業して医薬品開発者になり、開発した『肥大症』の新薬の治験を自ら担当したいと申し出て今に至るらしい。
何ともアメリカらしい天才話だ。偉そうな態度も頷ける。
そんな彼女が綺麗な脚を組んで気だるげに英語で話す。
「"お前には、地獄を見てもらうことになる"」
「――え?」
俺は彼女の正面の椅子に座りながら聞き返した。
きっと彼女の綺麗な脚や顔に見とれてしまったせいで聞き間違えたのだろう。
hell(地獄)とhealth(健康)を間違えたとか、そんなオチだろう。
「"すみません、英語はまだ未熟で……。日本語だとどういう意味になりますか?"」
俺がたどたどしい英語で尋ねると、今度は流暢な日本語で返ってくる。
「『お前には、地獄を見てもらうことになる』だ」
「じゃあ、フランス語では?」
「残念ながらどの言語でも同じさ。意味は変わらない」
「いくつかの言語を経由すれば英語に戻ってきた時に多少はマシになっているかもしれないと思いまして」
「『地獄』の部分が『天国』に変わっているかもしれないが、そうなるともう手遅れだな」
本場のアメリカンジョークのようなモノを聞きつつ、俺は治療について詳しく聞くことにした。
柏木さんは面倒そうに口を開く。
「『
タバコの代わりだろうか、日本の駄菓子であるラムネシガレットを咥えて柏木さんは話を続ける。
何だか懐かしいなと思いつつ俺は静かに聞いた。
「だが、脂肪から水分を押し出す作業は君自身の身体で行わなければならない。身体の内側から燃焼して発汗する。つまり、運動が必要だ」
柏木さんは次に机から複数枚の過去の被験者と見られる者たちの資料を広げて見せてくれた。
紙にはいずれも『retired(リタイア)』と印字されている。
「生半可な運動では薬の効果は発揮されない。また、長引くと薬自体の効果も効きが悪くなってしまう。『
柏木さんはラムネシガレットを口から離すと、煙でも吐き出すかのようにため息を吐いた。
「――ご覧の通り、途中で治療を挫折する者がほとんどだよ」
柏木さんの言う、『地獄』の意味が少し分かってきた。
――――――――――――――
【業務連絡】
治療編はプロットが良い感じに書けたので、ぜひ最後まで読んでいただけますと幸いです!(短く済ませる予定です!)
評価を入れてくださった方の人数が1000人を超えました!
引き続き、頑張っていきたいので応援よろしくお願いいたします!
<(_ _)>ペコッ
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