第2話 越えられなかった命

家に帰ってきた私は、すぐにストーブをつけ、自分の使っている大きな毛布を広げ、猫をその中に移し包んだ。とにかく温めなくてはいけない。それだけを考えていた。お湯を大量に沸かしペットボトルに注いで湯たんぽを作り、タオルで巻いて毛布の下に入れ込む。簡易的な湯たんぽだがこれがなかなか温かく、おすすめなのだと獣医に聞いた。その後私はミルクを作り、少しずつ子猫たちに飲ます。私は猫の世話をしたことがないのでネットの情報を頼りに何とか色々なことをした。4兄弟全てにミルクを与えひたすら温まるように努力をした。けれど1匹全然動かない子がいた。茶トラの小さな子だ。その子は見つけた時から元気がなく、1番危険な状態の子であった。私は必死にミルクを与え温めた。けれど茶トラは動かなくなった。徐々に冷めていく体温、動かないお腹、死んでしまったのだ。捨てられなければ死ぬことなく、生きれたかもしれない茶トラは、私の手の中でその生命を失った。獣医によれば子猫の容態はすぐに変わるし、全部が健やかに成長することは稀だと言う。けれども私は悲しくて、無力さを痛感し、拾ったことを後悔した。なんでこんな思いをしなきゃいけないのかわからなかった。けれどもいつまでも悔やんでいる余裕はなく、まだある命をどうにか延命させ、生かさなくてはいけない。それが拾った私のするべきことだから。私は泣きながら、近所の猫好きに電話をしどうしたらいいのかを尋ねた。すると猫好きのおじさん(以後おじさん)は私の家に来て、ミルクのあげ方を教えてくれた。そして初めて、私が猫を拾ったその行為を肯定してくれた。本当に涙が出てきた。おじさんに言われた通り猫にミルクを与えているとそこに両親が帰ってきた。そこからは酷く父親に責められたのを覚えている。「また猫を拾ってきて、それは優しさじゃない。無責任で、自分じゃどうしようもないのに、命を軽々しく延ばそうとするな。」私は父親が言うように過去にも3度猫を拾っている。そのうち1匹は家(交通事故で10年以上前に天国に行きました。)で、2匹はおじさんの家に引き取ってもらっている。毎回同じように怒られても何故か私は猫を拾ってしまう。父親の言うことが分からないわけではないがどうしてもその場に命があるなら助けたいと思ってしまい、考えるよりも行動を取ってしまう。だから今回も猫を拾ってしまった。そして死なせてしまった。自分でも何が正しいのか分からなかった。けれども三兄弟のお世話は続く。子猫は一度に多く食事をできないため3時間に一度、排尿をさせ、ミルクを与えなくてはいけない。私はその日、一睡もすることなく子猫の容態を見ながらミルクを与え、インスタで引き取ってくれる人を探し、引き取ってくれる施設がないかひたすらに調べた。私は今大学生なので学業やバイトで多忙を極め、このまま子猫を育てるのは不可能だと自分で理解していた。保健所に連れていくことも考えた。けれどもそこで死んでしまっては助けた意味が無い。いくつもの、色々な施設を私は探しいくつかの施設に目星をつけた。ミルクを子猫に与えることは難しく、眠く、辛かった。けれどもミルクを飲んですやすや眠る三兄弟は可愛かった。だからこそ、情が湧いてしまう前に、しっかりとしたところに引き取って貰いたいと思った。それが自分の責任だとも思っていた。そのまま時間はすぎ夜は明け、次の日が来た。何とか三兄弟は夜を超えた。私は三兄弟の寝息を聞きながら本当にいきなりぶっ倒れた。そして起きたのはそれから3時間後、子猫にミルクをあげる時間だった。

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雨と猫とててと てて @tomikyuu

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