緑の惑星

SUGISHITA Shinya

1話完結

 昔、はるか昔じゃ。ある星があっての。緑豊かで澄んだ空気や水がたくさんあっての。その星の生き物はみんな自分の領分を守ってな暮らしておったそうだ。食われ食ってそれで釣り合いが取れておったんじゃ。この星のようじゃのう。


 ところがその星ではいつの頃からか、ある動物がめきめきと力をつけてな、ほかの生き物を犠牲にして増えていったんじゃ。そうじゃ食われ食う関係から抜け出してしまったんじゃ。その動物はついに食うだけの立場になってしもうたそうだ。そしての、こざかしいことに自分らだけは動物ではないなんとぬかしおって、万物の霊長で星の支配者だなんと言っておったそうじゃ。


 そうしてその動物は自然にまで手を出しての。自然のものからの、いろいろなものを作りおって、それを便利に使っておったそうじゃ。ところがの作ったものや、作るときいらないと捨てたものが毒を持っておっての。やつらはそれを知ってか知らずか放置したんだそうな。知っておったんじゃないかとみんなは言うておるがの。万物の霊長とまで言っておった動物にしてはの、お粗末すぎるからの。それでの、木はなくなる、山はなくなる、空気は汚れ、地下は掘り返してしまう、水は汚すでの。とうとうその星には住めんようになってしまったんじゃそうな。


 それでな、船を作りおって、でかい船じゃ。その船にその霊長が乗って空に飛び出したんじゃと。ところがな、船を進める力が弱いもんでそのままじゃ遠くに進めんじゃったそうな。それでな、ここからが恐ろしいとこじゃ。その船は空高く飛び上がると帆を張ったんじゃそうな。風があるかと聞きたいんじゃろ。あっても空気がないからそんなに強い力じゃないんじゃ。どうしたと思うね。わからんじゃろ。


 帆に風を受けるために星を破裂させたんじゃ。その星を照らすお天道様をやったんじゃそうな。そうじゃ、ほれ空にあって光をそそいでくれるお天道様じゃ。それでのそのお天道様の恵みを受けていた星はみな滅んでしまったそうじゃ。おお、おおそうじゃ、自分らが住んでいた星も滅びてしまったそうじゃ。その星に細々と生きながらえてきた動物や植物も滅びてしまったそうじゃ。それにじゃ、船には霊長がみんな乗ったんじゃないそうな。まだたくさん星に残っておったそうじゃ。それも滅んでしまったそうじゃ。恐ろしいことじゃ。


 それでその何隻もの船は滅びの風を受けて勢いをつけて大宇宙に飛び散っていったんじゃそうな。もうおねむかな、まあもう少し爺の話を聞きなされ。


 いちばん恐ろしいのはな、その船が昔この星についての、爺や若の祖先がその霊長じゃないかという話しがある。爺はわからん。若が一人前になったときはよいな、霊長のまねをしてはいかんぞ。今のままがいいんじゃ。


 おお、眠っておしまいになったか。明日の食事の夢でも見なされ。爺が獲物をとってきて進ぜように。それにしてもめっきり獲物が減ったような気がするの。これじゃ若造が使っているてつほうなるものを使わなきゃならんかの。けったいなことじゃ。


 おおそうじゃ。わすれるとこじゃった。


 大きな石板のくぼみに石を一つ置いた。石板といっているが石ではなくまっ平の板だった。そして石板専用の小石はくぼみに置くと石版に吸い付いた。

 石版は5枚あった。一番右の石版にはくぼみが365個あった。一日一つ置くことになっていた。一番下にも4つくぼみがあったがその使い道はわからなかった。

 365個石を置いたら左の石版に一つ石を置いて365個の石版はさいしょから並べ始める。

 左の石版にはくぼみが9個あった。9個石が埋まればその左の石版に一つ石を置き、9個の石は取り除く。その繰り返しでいま一番左の石板から2個、5個、3個、2個、230個の石が置いてあった。


 なんの為なのかわからないが、これがご先祖様から受け継いだわが家の務めじゃ。

 若に早く覚えてもらわなければな。

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