第66話 別れ(5)

 咲恵さきえがとんとんと玄関で靴を履いたあと、咲恵は

「元気で」

と言って、みちるの家の玄関の引き戸を開けた。

 「咲恵さんも元気で」

 言って、どちらからともなく手をハイタッチする。

 がらがらと音がして、咲恵の姿は玄関の向こうに消えた。

 ここが前のマンションのように外の見えないドアでなくてよかったとみちるは思った。

 玄関を出て、玄関の外すぐについている門を出て、白いブロック塀のあいだを抜けて行く咲恵の姿が、玄関の飾りガラス越しにしばらく見えたから。

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