第44話 昔の物語(8)
みちるは、そろそろぬるくなり始めたヨーグルトを飲んでから、いちばん気になっていることをきくことにした。
「じゃ、その
「これは実在」
先生はすぐにはっきりと答えた。
「
「あの……」
またひと息置いてから、みちるはきいてみた。
「最近は、悪い家老じゃなくて、いい政治家だったっていう評価もあるみたいですけど……」
「悪いとか、いいとか、わたしたち、言えないから。その時代の人でもないのに」
先生の答えはそっけない。みちるは重ねてきく。
「でも、市のホームページに、最近はいい政治家だったって評価されてます、って書いてあったけど」
「あのさ」
「市のホームページにそう出てるのはあたりまえだと思わない? だって、市議会の偉い人の祖先なんだから」
そういえば、あの
「あの久本家も、昔の当主はそうでもなかったんだけどね」
「明治時代の久本
「先生、なんか追い出されたって言ってませんでした?」
咲恵が笑って言う。
「ええ。ご先祖様の話をきかせてください、もし史料をお持ちならお見せください、って行ったら、最初は得意そうに一時間ぐらい話をしてたんだけど、わたしが質問を始めたら、まっ赤になって、怒って、歴史学者はうそしか書かん、帰れ、って追い出された。あ、もう一つ、「女のくせに、偉そうな」も言ったかな」
千菜美先生も愉快そうに笑ったので、みちるもいっしょに笑った。
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