第41話 昔の物語(5)
店員の
もう、がんばる、と決めているのだ。いまさら遠慮してもしかたがないと思う。
みちるは少食なほうだから、それでおなかいっぱいになった。クレソンは苦手だったけれど、せっかく出してもらったのだからとおなかに入れた。
驚いたのが、みちるのお母さんと同じくらいの歳か、まだ少し上に見えるスレンダーな
それにしても、咲恵は、この先生を、学校からここまでみちると咲恵を連れてくるためだけに呼んだのだろうか?
何を教えている先生なのだろう?
二番めの疑問には、すぐに答えが出た。
食事が終わったあと、浅野さんが、先生にはコーヒーを、咲恵とみちるにはオレンジジュースの入ったヨーグルトを出してくれた。そのヨーグルトに、岩盤に打ちこむように勢いよくストローを差しこみ、口をつけようとした咲恵が、みちるのほうに顔を上げてふと言ったのだ。
「あ、千菜美先生は歴史が専門だから、いろいろきいてみるといいよ。その
「ああ、みちるさんって、そんなことに興味持ってるの?」
千菜美先生がみちるの顔を見て言う。さっき会ったときには涼しげな感じだった目をぱっちり開き、興味深そうにしている。
「だって、転校してきたばっかりなんでしょう?」
「いや、ちょっと友だちにその話をきいて……」
「でも、あんな話、いまここに住んでるひとでも、興味持つひとは少ないのよ」
「そうなんですか?」
「ええ。とくにその相瀬のお話はね、もともとこの話って海岸のほうだけに伝わってきた話だし、しかも、
「ああ」
みちるのお父さんは、子どものころ、いまみちるが住んでいる家で育った。
では、この伝説を知っていただろうか?
少なくともみちるはきいたことがない。みちるとよく話をしてくれたお父さんなのに。
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