必ず頂点に立つ存在だから
「彩未、俺だ。ちょっと話をさせてくれ」
彩未の家に来てインターホンを鳴らすものの、やはり返事はなかった。千秋のように、それほど事態を気にしていなければ良いのだが、どうも一向に返事が返ってこない様子を見ると、それはあまり期待できなさそうだ。
「ドアぶち壊して入ったら良いんじゃない?」
「そんなことできるかよ……。おい彩未、頼むから返事をしてくれ!」
だめだ、全然返事が返ってこない。もしかして家にいないのか? 一応自宅謹慎ということにはなっているけど、彩未が素直にいうことを聞くやつかと言われると……そうじゃないよなぁ。
「マネージャー、なんか有明彩未、私たちの事務所に行ったっぽいよ」
「え!? なんで分かったんだ千秋!?」
「ネットで目撃情報あったから。今の私たちある意味有名人だし、結構拡散されてるよ」
ああ、悪い意味で有名人になってしまったから面白半分で勝手に写真を撮る輩がいたってことか。むかつくが、今はその情報に助けられたと言ったところか。
「よし、事務所に行くぞ!」
急いでタクシーを呼び、事務所に向かって中に入ると彩未の姿が目に入る。誰かと話しているな、一体誰と……え、ええ!?
「あれ、あのおじさんってこの事務所の社長だっけ?」
「そ、そうだよ! あ、彩未!」
「ま、マネージャー!?」
どうやら彩未は社長と話をしていたらしい。一体何を話していたのかも気になるけど、それ以上にうちの社長は強面系なので近くにいるとすげー怖くて緊張する。
「な、何してるんだよお前」
「社長さんにお願いしてたの、マネージャーはクビにさせないでって」
「俺を……?」
「だ、だってネットでこんなクソアイドルを担当してる奴なんてクビにされて当然とかネットに書き込んでる人がいっぱいいて……。ま、マネージャーは何も悪くないから、クビになんかさせたくなくて……」
そうか、彩未は俺のために社長に直談判をしてくれたのか。自分のやったことに責任を感じて……。
「そうだ甲斐君。君は本当にこの子から信頼されているようだね」
「あ、ありがとうございます社長。……あ、あの。お、俺からもお願いがあるんですけど……こいつらを、アンジェノワールをクビにしないでもらえますか?」
彩未がこうして行動してくれたのだから、俺も今するべきだと思い、社長に直談判をする。
「こいつらがしたことは確かに許されないことです。でも……必ずこいつらは、この反省を活かして更なる高みにいけるって俺は信じてます。だから……もう少しだけ、こいつらにチャンスをくれませんか?」
「ほぉ、甲斐君。君はどうして彼女らをそう信じているんだい?」
「俺が、こいつらのファンだからです。性格に難がありすぎるけど、それでも3人が見せるパフォーマンスは……必ず、頂点に立つ存在だと確信させてくれました。もし、成果が出なかったり、またやらかすようなことがあれば……俺が、全て責任を負います」
「ま、マネージャー!?」
「……流石だね」
「そこまで言うのなら、もう一度だけチャンスをあげよう。でも、次はないよ?」
「分かっています。社長のご期待に応えられるよう、頑張らせていただきます」
言った後に、俺はもう3人に人生を賭けてしまったんだなと実感した。でも、それでいい。きっとこいつらは、俺の期待に応えてくれるって信じてるから。
「あ、ありがとうマネージャー!」
「……最高にクールだね」
「おい抱きつくな二人とも!」
これから色々と大変なことがありそう、と言うかあるけど。それでも3人のことを信じて、絶対に人気アイドルにしてやる。そう、覚悟を決めた日だった。
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「最愛の彼女を親友にNTRれて泣いていた日の夜、クーデレな後輩が返り血を浴びていた。」
メンヘラしかいないアイドルグループのマネージャーになった俺、「どんなに炎上しても俺はずっとお前たちのファンだから」と言ってなんとか人気アイドルに導いた結果、みんなヤンデレに進化?してしまった件について 倉敷紺 @tomogainai
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