信じてくれるから


「おい千秋! ちょっとでいいから出てきてくれ!」


 紫音を説得した後に向かった先は千秋の家。自信家なあいつだけど、今回みたいにあらゆることで悪口を言われてしまったら、流石にメンタルがイかれてしまってもおかしくない。


 案の定家のチャイムを鳴らしても出てくる気配はなく、もうかれこれ30分くらいは待っている状況だ。もしかして、気がおかしくなってやけになったんじゃ……そ、そんなの許せるわけがない! 無理矢理にでもドアを開けて千秋の様子を確認しないと——


「いてっ!?」


「あ、マネージャー。ごめん」


 ドアノブを掴んで無理やり開けようとしたその瞬間、タイミング悪く千秋が扉を開けて俺の頭にぶつかる。痛い……。


「ち、千秋……いるんだったら出てきてくれよ」


「ごめん、筋トレ中だったから。集中してて気づかなかった」


 ポタポタと汗を流している様子を見るに、それは本当のようだ。前からジムに行ってトレーニングしてるっていってたから、千秋にとってこれは日課なんだろう。


「あいつらをボコしたりなかったからだと思ったからさ。とりあえず一発KOできるぐらいに鍛えようと思って、ちょっとハードにしてたんだよね」


「おいやめろ」


 いや、とんでもないこと考えてやがった。危ない、もっと放置してたら事態はさらに悪化していたかもしれない。そうか……そういう危険もあったんだな。


「これ以上罪を重ねないでくれ。お前は戦闘員じゃなくてアイドルなんだ、良さはステージの上で見せて欲しい」


「でもクビにされるんじゃないの、私たち? 世間は私たちのこと、クビにするべきだってみんな言ってるよ。だから会社も、その気だったんじゃないの?」


 普段から強みな千秋も、その噂を聞いて半ば諦めていたのかもしれない。だから、自暴自棄になって変なことをしようとしていたのかも。……確かに、このまま何もしなければクビになるのは逃れられないだろう。


 でも、そうさせないために俺が動いている。


「俺がそうさせない。千秋たちのファンである俺が、お前たちのステージをもう二度とみれないなんて嫌なんだよ! だから頼む、千秋も諦めないでくれ!」


「……ほんとに? マネージャーは、あんなことした私たちのことまだ信じてくれるの?」


「俺のためにああしたんだろ、お前ら? そりゃ、暴力はダメに決まってるけど……ちょっと、俺もスカッとしたとこはある」


「ふーん……。マネージャーがまだ信じてくれるなら、私はやるよ。まだまだマネージャーには見せたい景色、たくさんあるし」


「千秋……!」


 千秋はクールに笑って俺の熱意に答えることを約束してくれた。よかった……千秋もやめないでくれて。


「それでマネージャー。今日はわざわざ私の元にきてくれたんだから、つきっきりでいてくれるよね?」


「へ? いや、俺は今から彩未のところにも行こうかと」


「……有明彩未のところに? なら私もついていく」


「な、なんでだよ」


「あの女にマネージャーがたぶらかされたら嫌だから。ほら、さっさと行って二人きりでカフェでも行こう」


 そんなわけで、次に行く彩未の家には千秋も一緒に行くことになってしまった。


――――――――――

読んでいただきありがとうございます!

よろしければ★×3とフォローお願いします!お願いします!お願いします!


新作を投稿しましたので、そちらもよろしくお願いします!


「最愛の彼女を親友にNTRれて泣いていた日の夜、クーデレな後輩が返り血を浴びていた。」

https://kakuyomu.jp/works/16817139555178596406

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る