炎上したからなんだ!
彩未たちが元同僚たちを殴ってしまったことで、マスコミやネットではとんでもねーアイドルたちがいると話題になっている。
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ありとあらゆるところで彩未たちの話題が取り上げられいて、そのほとんどが彼女らの悪口だ。ロクでもない性悪女たちだとか、売れないアイドルの末路だとか、ワキが臭いからだとか。
あいつらのことを全然知らないくせに、好き放題言われているのは怒りしかない。だが、やってしまったことが大変まずかったのは事実だ。どんな理由があれ、先に手を出した方が悪いのがこの社会の道理。例えそれが、俺のためにしたことだとしても……。
「……電話に出ない」
あの日以降、3人ともしばらく自宅謹慎となっている。普段なら嫌というほど電話をかけてくるくせに、炎上してからというもの一切電話がかかってくることはなかった。……本当に、らしくない。いつもいつも、迷惑ばっかりかけてくるくせにこんなことで落ち込むなんて、今更なんだよ。
「やっぱり俺、会いに行ってきます。今のあいつらを放っておくことはできません」
いてもたってもいられない俺は、上司にあいつらへ会わせてほしいと懇願する。でも、上司は無言で首を横にふる。会社としては、今回の事態を重くみてあいつらをクビにするって話が進んでいるから、今からそれをひっくり返せるとは思えないというのが上司の考えなんだろう。
だけど、俺はここで終わらせたくない。あの日、3人が見せたパフォーマンスは本物だった。見る人全てを魅了して、勇気を与えて、元気をくれる。そんな、アイドルとして最高だったあいつらをここで見捨てるなんてこと、俺はしたくない!
「行かせてください! あいつらをここで終わらせるわけには行かないんです!」
「……わかった」
俺の熱意が伝わったのか、上司になんとか許可をもらうことができて俺は3人の家へそれぞれ行く。まずは紫音だ。あいつは事態を重くみて荒れた生活を送っているかもしれないから、一番心配だし。
「おい紫音!」
紫音の家に行き、インターホンを鳴らしても出ないので俺はノックして紫音を呼び出す。それでも返事が全くないので家にいないのかと思ったが、明かりがついている様子が見えたので、おそらく居留守を使っているんだろう。
「開けてくれ紫音! 俺はお前と話がしたいんだ!」
何度ノックしても出ないことに諦めず、俺は何度も何度も紫音に声をかける。
「……ま、マネージャーさん」
懸命な呼びかけに応じてくれたのか、紫音は家のドアを開けてくれた。顔色は悪く、すっかりやつれてしまった紫音の様子を見ると、やはり心身ともにかなり疲弊しているようだ。
「ど、どうしたんですか……クビの宣告ですか……? そうですよね……私たち、皆さんに大迷惑がかかることをしちゃって……ステージも台無しにして、マネージャーさんの期待も裏切っちゃって……ダメダメでしたもんね。もう、いいんです、私はそれを受け入れます……もう、アイドルもやりません……向いてないだけでなく、マネージャーさんにも迷惑かけちゃうから……もう……」
「うるさい!」
「ふぇぇ!?」
「俺はお前を連れ戻しにきたんだ。紫音、頼むからアイドルを続けてくれ!」
全くそんなことを言われるなんて予想もしていなかったのか、紫音は口をあんぐり開けてびっくりした表情をしていた。
「俺のせいで紫音たちが暴力を振るった責任は俺が負う。それに、あの最高のパフォーマンスを見せてくれたお前たちを、このまま捨てるなんて俺にはできない」
「で、でも……そしたらまた、マネージャーさんに迷惑がかかっちゃいます……そ、そんなの私嫌です!」
「迷惑なんて今更なんだよ! 恐ろしいぐらい電話とかラインよこしておいて、もう十分迷惑は被ってるっての! だからな、どんなに炎上したとしても俺はずっと紫音たちのファンだから」
「ま、マネージャーさん……!」
俺の思いが伝わったのか、紫音の表情に明るさが戻る。
「わ、私……も、もう少し頑張ってみます。ま、マネージャーさんにそこまで言われたら……う、うへへ……やらないわけにもいかないので」
「ありがとう紫音。それじゃあ明日、練習場に来てくれないか?」
「わ、わかりました!」
なんとか紫音は説得することができた。あとは二人、彩未と千秋だ。
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「最愛の彼女を親友にNTRれて泣いていた日の夜、クーデレな後輩が返り血を浴びていた。」
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