そして本番、炎上の幕開け
いよいよ、待ちに待ったステージ本番。会場に着くと以前と比べてお客さんの数もかなり多く、規模の大きさがうかがえた。とはいえ大体のお客さんは彩未たちに興味があるわけじゃないから、ここでどれくらいハートを掴めるかが【アンジェ ノワール】のこれからを左右するだろう。
「お客さんがいっぱい! これならあたしの魅力を広めるのに十分ね!」
「は、はわわ……き、緊張します」
「環境は整ったって感じだね」
3人それぞれらしい本番前って様子だが、それでも表情はやってやるぞって自信を見せていた。きっと、これならこのステージを成功させることが出来る。
「みんなの実力を見せつけたら、絶対ファンはついてくる。ここで一発、かましたれ!」
「うん、そのつもりだよマネージャー!」
「が、頑張ります……そしてマネージャーさんと……えへへ」
「最高のパフォーマンス、マネージャーに届けるから」
そしていよいよ出番が回ってきて、彩未たちはステージの前に立つ。ああ、俺が出てるわけじゃ無いのにめちゃくちゃ緊張してきた……多分一生、この光景に慣れることはないんだろうな……。
観客の様子は他のアイドルたちと比べたら歓声は少ないし、少しブーイングすら聞こえてきた。おそらく彩未のアンチとかがやっているんだろう。でも、あいつはそれくらいで動揺するやつじゃない。
「みなさーん、初めまして! あたしたち、【アンジェ ノワール】でーす!」
彩未がそう第一声を発し、続いてそれぞれ自己紹介をする。内容は一応俺がチェックを入れておいたから、多分問題はないはず。うん、変なこと言わなかったなよかった。
「それじゃあ一曲目、聞いてください!」
千秋が掛け声をかけて、一曲目が始まった。……やっぱり、こいつらやればできる奴らだ。彩未はアイドルらしさ全開でパフォーマンスをし、紫音は持ち前の歌声を会場全体に響かせて、千秋はクールな雰囲気を出しつつ、時折可愛さを見せるダンスが、見事に組み合わさって最高に会場を沸かせる。
これなんだよ。これがあいつらが持っている良さで、可能性なんだ。会場だって、全く興味がなさそうだったのがいつの間にか声援がどんどん大きくなっている。前回の失敗もあって、身内で争うこともしないだろうし……今回のステージ、もう成功と言っても過言ではないんじゃないか?
「ありがとうございましたー!」
無事、テージを成功させることができ、みんなステージ裏に戻ってきた。みんなやりきったって表情をして、俺はもう涙目でみんなを迎え入れる。
「本当に良かったよ! 俺……泣きそう」
「何泣きそうになってるのマネージャー! あたしたちの伝説はまだまだ続くんだから!」
「そ、そうですよ……こ、ここが終わりじゃないです」
「うん、もっと私たちは高みに行くから」
そうか、みんなはもう次を見据えているのか。そうだよな、ここはあくまで通過点、もっともっと上に行くのが、俺たちの目標だもんな。
「なーに浮かれてんの、前座が成功したくらいで。ま、腐ったミカンの集まりじゃ、それくらいのレベルで十分か」
「……は?」
彩未たちにナメくさったことを言ったのは、以前会った彩未の元メンバーだった。露骨に彩未は嫌そうな顔をしているが、なんだか紫音と千秋も気まずそうな表情をしている。
「紫音まじで続けてたんだ! うわーないない」
「千秋じゃん。あんた、性懲りもないね」
「……二人の知り合い?」
「……うん」
「……元メンバーです」
どうやらそれぞれの元メンバーが来ていたらしい。いや、今日のステージは多くのアイドルが集まっているから、会ってもおかしくない。ただ、成功した余韻に浸る間もなく、この場には悪い空気が流れていた。
「彩未、この子たちから聞いたよ。みんなちょー問題児ばっかりだって。話聞いたら彩未に匹敵するぐらいめんどくさい奴らじゃん。ほんと、マネージャーさんも貧乏くじ引かされてるよね」
「別に、俺はそう思ってないですから。話がそれならもう行っていいですか? 俺たち反省会とかしたいので」
「……あっそ。ま、所詮こんな負け犬を担当するくらいなんだから、私のありがたい話を聞く耳がないんだ」
「そうでしょ。紫音なんかさっさと切るべき存在なのに、そうしないのは無能の証に決まってる」
「千秋もそうそう。場の輪を乱して自分だけなんとかしようとするやつなんて、さっさと切っちゃえばいいのにね。無能のメンバーに、無能のマネージャー。ある意味お似合いじゃん」
「良かったねー彩未。無能なマネージャーさんが担当してくれて。これであんたはクビにならずにすむわけだし、ほんと感謝しないといけ——!?」
それは突然のことだった。最後まで言わせることなく、彩未は容赦ない右ストレートを元同僚にぶつけた。いや、彩未だけじゃない。紫音も千秋も、それぞれの元同僚に、見たこともない怒りの形相でビンタやら蹴りをぶつけている。
「うるさい! あたしは好きに言われていいけど、マネージャーのこと悪く言わないでくんない!? あんたなんかに、マネージャーをとやかく言われる筋合いはない!」
「……マネージャーさんの悪口、それ以上言うならぶっ殺します」
「あばずれがギャーギャー言わないで。マネージャーは私にとって、最高の存在だから」
俺が止めに入るものの、3人の怒りが収まることはなくどんどん殴ってしまい……騒ぎは大きくなってしまう始末。会場のスタッフも止めに入ったことでなんとか抑えられたものの……この事態が、ネタに飢えている記者たちに知られてしまい。
彩未たち3人は、大炎上することになった。
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「最愛の彼女を親友にNTRれて泣いていた日の夜、クーデレな後輩が返り血を浴びていた。」
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