本番前日


 いよいよ明日は待ちに待った本番。その前日として、練習は無理せず最中チェックに留めて終わらせた。ああ、俺が出るわけじゃないのにすごく緊張する……。


 あいつらがやらかさないかはもちろん心配しているところだけど、それ以上に、頑張りをずっと見続けていたから、それが報われてほしいと心から思っているからだろう。


「みんな、お疲れ。明日はいよいよ本番だけど、きっと上手くいくって俺は信じてるから。明日、最高のパフォーマンスをしてきてほしい」


「もちろん、そのつもりだよマネージャー。あたしがさいっこうのステージにしてあげるから。だからマネージャー、成功したらあたしのこと一番褒めてよね!」


「わ、私だって頑張ります……マネージャーさんの期待に応えられるよう、いっぱい練習しましたし……また失敗しちゃうかもしれないのは怖いですが……ま、マネージャーさん、成功したら……私のこと、一番褒めてくれますよね?」


「成功させるに決まっているじゃん。マネージャーの想像を超えるぐらい、記憶に残るステージを見せてあげるよ。だから、成功したらもちろん私のことを一番褒めてくれるでしょ?」


「も、もちろん。成功したらみんなたくさん褒めるよ」


 みんなやる気満々で明日を迎えてくれそうだ。成功したら俺が大変なことになりそうだけど、もうステージがうまくいければ後のことなんてどうでもいいや。


 というわけで今日は解散して明日に備えるべく早めに帰宅して寝ることにした。けれど当の本人たちは早く寝る気なんか無いようで、次々とわけのわからない電話がかかってくる。


「あのねマネージャー。褒めるだけじゃなくて、他にもあたしに話すことあるでしょ? だからあたし、ステージが終わったらここのレストラン予約しようと思ってるんだよね! マネージャーはもちろんスケジュール的に大丈夫だよね? 他の女のところになんていくわけないよね!」


「ま、マネージャーさん、ステージが終わった後きっとお話ししたいことがあるんじゃないかって思ったので……こ、ここのホテル予約しました! こ、ここなら二人きりで親密なお話ができますし……う、うへへへ……それ以上のこともできますよ……えへ、えへへへ、えへへへへへへ!」


「ステージ終わったら私の家集合ね。住所と部屋の番号は今伝えるから。もちろん来るよね? 来ないとかありえないよね?」


 こんな感じの電話が立て続けに3本きた。レストランはまだしもホテルと自宅ってどう考えてもおかしいだろ、アイドルとしても自覚があるのか? とはいえ本番前で彼女らの機嫌を損ねるのは大変まずい事くらいわかっているので、その場ではわかったわかったと承諾した。


 もちろんあとでテキトーな理由をつけて断るつもりだが……うーん、なんて断るか迷いどころだ。まぁ、明日の俺がどうにかしてくれるだろう。今日はもう寝よう。


 明日がきっと、あいつらにとっていい日になりますように。


――――――――――

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