メンヘラはマネージャーに褒めてもらいたい


「ねぇマネージャー、今日のあたしどうだった? すごかった? 可愛かった? 神がかってた? そうだよね、あたしすごかったよね!? ち、違うとか言わないよね……そうだよね!?」


 練習終わりに彩未から褒めることを強要される。いや、実際良いとは思ってるけどここまで半強制的に言わされるのはなんだか違う気もするが……まぁ、すごかったのは事実だし良いか。


「あ、ああすごかった。やっぱり彩未はすごいな」


「でしょでしょ! やっぱりマネージャーは本当にあたしのことを理解してくれる……もっと褒めて欲しいな!」


「は、はぁ……まあ良いけど。ん?」


「……有明さんしか褒めないのは不公平ですよ、マネージャーさん」


 げ、彩未だけで済むと思っていたらぬるっと紫音が機嫌悪そうな顔で現れた。


「そ、それともやっぱり私には何も見所がないから褒めようにも褒められないってことですか!? や、やっぱりそうなんだ……私みたいなゴミクズにはお褒めの言葉なんてもらう価値もないんだ……」


 俺の服を掴みながら、涙目でネガティブなことを紫音は言い続ける。いつもと変わらないと言えばそうなんだが、今日はなんだか呪いをかけられそうなぐらい視線が怖い。あれ、俺なんか嫉妬買うようなことでもしたか……?


「そ、そんなこと言うな紫音。紫音もすごいに決まってるだろ」


「……それだけですか? マネージャーさん、社交辞令ですよねそれ、当たり障りのないことを言えば私が満足すると思っちゃったんですか? ダメですよ……マネージャーさん、私はもう、そんなことじゃ満足できない身体になっちゃったんですから。私のこと、もっと褒めてください」


 え、ええ!? 厄介なことになってしまったんだけど……。仕方がない、雑巾みたいに脳みそ絞って褒め言葉考えないと……。


「ねぇマネージャー。私にはないの?」


「ち、千秋!?」


 めんどくさい対応を強いられている俺に、更なる重りがきてしまう。千秋は殺意すら感じる視線を俺と、他の二人に送っている。やばいぞこれ……早く終息させなければ。


「ち、千秋はもう言う必要がないぐらいすごいと思ってあえて言わなかったんだ。うん、いつもすごいと思ってるよ」


「私、鈍感だからちゃんと言葉で言ってほしい。それにマネージャー、最近返信遅くない? 私をその気にさせたんならしっかり責任取ってほしい」


「そ、その気ってどの気だよ……と、とにかくみんなすごいから! そのすごさは今じゃなくてステージで見せてくれ!」


「……それじゃあ、ステージで活躍したらたくさん褒めてくれるってこと?」

「ま、マネージャーさんがようやく気持ちを伝えてくれるってことですか?」

「ついに来たってこと?」


「え? ま、まぁ成功させたらたくさん褒めるよ」


「絶対一番活躍しないと……!」

「が、頑張らないと……マネージャーさんと……う、うへへへへへへへ」

「ここで決めないとね」


 事態が丸く収まったのか、3人とも覚悟を決めたような表情を見せる。ま、まぁこの状況から脱することができたからひとまずよかったとしよう。


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