第120話 マリーは経験豊富





「マリー大魔王様、是非、プリンのお店をお願いします!!」


キャサリンと5人の取り巻きは、仰望に満ちた顔をして見てくる。



「プリンのお店、出しますよ」

「「「やったーーーー!!!」」」



キャサリンも含めて、ハイタッチしながら飛び跳ねて喜ぶ。



私より女子中学生っぽい•••



「次は、やっぱりこれかな?」



私は『アイテム収納』からモウモウのステーキを取り出した。


すると、どこから現れたか分からないが、別のサキュバス5名がテーブルと椅子を持って来た。

テーブルには白いテーブルクロスまで貼られ、ナイフ、フォークがセットされている。



街の真ん中で、キャサリンとサキュバス10名が椅子に座ると、瞳をキラキラしながら私を見ている。



まあ

別にいいんですけどね•••



私はステーキを11皿分、テーブルに並べた。


キャサリンとサキュバスはステーキを食べると、先程と同じように色っぽく、悶絶している。


けど、今回はサキュバスというよりは、魔族の男達に食べてもらいたくて、ステーキにしたのだ。




私は遠巻きで見ている魔族の男を見つけると、瞬時に男の横に移動する。



「な、なんだ、いつの間に来やがったんだ!?」

「ねー、お腹空いてない?」

「俺に毒でも食わせようってのか!?」

「これが毒に見える?」



私は『アイテム収納』からステーキを取り出し、男の顔の前に差し出す。



「俺は毒なんて•••、な、なんてうまそうな匂いなんだ•••」


男はステーキを手掴みすると、豪快に歯で引きちぎって食べた。




「う、うめぇぇぇぇぇーーーーー!!」




男は残りのステーキを一口で食べた。


男の反応に、他の魔族の男達も寄って来たので、ステーキを振る舞ってあげる。



「こんなうめえ肉、初めてだ!!」

「これ、あんたが、いや、あなた様が作ったのか!?」

「結婚してくれーーー!!」

「おい、大魔王様らしいぞ、勝手に求婚するな!!」



うんうん

胃袋をつかめ、か

地球の言葉は偉大だな



「お、男達が素直に食べている•••」



キャサリンが私の元まで来て、驚きの表情を浮かべている。



「美味しいご飯は、みんなを幸せにするんだよ」

「た、確かに。先程、私もサキュバス達も皆これまでに見せたことのない幸せな表情をしていました。今、目の前の男達も•••」

「それとさ、男の人は、頼られたいんだよ」

「頼る?」



私はステーキを食べ終えた男達に近づく。

いつの間にか15名ほどに増えていた男達は、近寄る私に少し緊張した表情を浮かべる。



「あなた達にお願いがあるんだ」


「お、お願い?」

「だ、大魔王様が?」

「結婚して欲しいとか?」



男達はお互いに妄想を含めて色々な意見を出し合っている。



「狩をお願いしたいんだ。具体的には、今食べたモウモウ、討伐ランクAの魔物なんだけど」


「モウモウ??これ、モウモウの肉だったのか??」

「こんなに美味かったか?」

「モウモウくらいだったら狩れるな」



ひとつ言う度に、無邪気な笑顔で周りと会話し始める魔族の男。

顔は人間だったり動物だったり様々な形態をしているけど、なせが、その光景を見て可愛いと思ってしまった。



こ、これが母性•••




「これはちゃんとした仕事だし、もちろん、お金も払うよ」


「金が出る•••」

「こんなに良い話、今までなかったよな•••」

「ああ、こんなに優しくしてくれたのも初めてだ•••」



今度は、男達が泣き始めた。


これはこれで、かわいい•••




「これはさ、サキュバスのようなか弱い女性ではできない仕事なの。だから、お願いできる?」


「俺達にしかできない•••」

「俺達だからできる•••」

「やるぞ、俺はやるぞ!!」

「俺もだ!!」


「「「やるぞーーーー!!」」」



泣いていた男達は手で涙を拭い、その場に右手を掲げて大声で叫んだ。




するといつもの調子に乗っちゃうマリーが登場する。




「あと、何かあったらサキュバスも、他の種族も含めて女の子は守るように、分かった!?」


「「「そうだぜ、俺達男は強いんだ。女を守るんだーーー!!」」」




私は完全に調子に乗る。




「強い男の君達ー、か弱い女の子を守ってくれるのかーーーい!?」


「「「おおぉぉーーーーーー!!」」」


「守ってくれるのーーー!?」


「「「おおぉぉーーーーーー!!」」」


「女の子に、モテたいかーーー!?」


「「「ううおおぉぉーーーーーー!!」」」



男達は、今日1番大きな声を上げた。

やっぱり、根本はモテたいんだよね。


それと、完全に調子に乗ってしまったが、狩をしたり、美味しいものを食べたり、大声を出したり、泣いたり、たまには発散も必要だよね。



私が1人で納得して頷いていると、キャサリンとサキュバス達がやって来て、私の前で跪いた。



「マリー大魔王様。人々を掌握するその力、しかとこの目に焼き付けました」

「急にどうしたの??」

「私はこれまで、力で男達を制圧しておりました。それが、間違いであったと、気付いたのです。頼られるだけで、男達があんなに嬉しそうな顔をするなんて•••」

「まあ、いやー、なんと言いますか」



私の周りには女性ばかりで、いつもみんなそんな話をしていたし、サズナーク王国のミランダさんと、スウィール王国のリチャードもミランダさんが頼り上手で、リチャードもそれを嬉しそうにしてたし。



「流石にマリー大魔王様は、そちらの経験も豊富なんですね。サキュバスとして、情けない限りですわ」

「え??」




経験ないですけど•••

男の人と付き合ったことも•••




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