第121話 魅惑の鉱石




魔王国ブレイスワイトで3ヶ所の土地を貰った私は、『プリン』『ステーキ』のお店と、もう1つ、新たに出したいお店があった。



変な意味ではなくて、発散できるお店。

土地を買う訳でも借りる訳でもなく貰ったのは、このお店が高いからだ。



私は恐る恐る『地球物品創生スキル』と『家計簿スキル』を発動し、ある施設を指定した。






▪️アミューズメント施設(C)


〈内包施設〉

•ゲームセンター

(アームゲームのぬいぐるみは含まない)

•ボーリング場


価格:800,000,000円

(悪神様割引適用)






8億円•••

た、高い•••

Cランクと低めの施設でこの値段•••

割引も既に適用済み•••


しかも、ぬいぐるみがないって、どうなってんのよ





「マリー大魔王様?」



1人で画面を見て、顰めっ面になっていた私にキャサリンが心配そうに声をかけてくる。



「だ、大丈夫•••」

「しかし、顔色が悪いようですが?」

「あのさ、この辺で悪さしてるドラゴンとかいないかな?」

「ドラゴンですか?」



8億円という金額は想定していなかった訳ではないが、青龍の素材も250億G分、サズナーク王国に寄付してしまったし、手持ちのお金では足りない。


今待ってる素材を売れば賄えると思うけど、資産は取っておきたいよ。


悪神様の老後がどんなものか分からないけど、神界でも素材は重宝されていたし。

年金、出るのかも分からないし。




「もしや、最後のお店を開くのにお金が必要なのでしょうか?」

「まあ、そうなんだよね。だから、手っ取り早くドラゴンの素材でも換金しようと思って」

「マリー大魔王様、そこまで考えて下さっているとは•••。しかし、頼り切るのはよくありませんので、素材は私達から提供させて下さい」

「えっ?素材を?」



この山脈と森に囲まれた魔王国ブレイスワイトで用意できる素材とは何なんだろうか?

私が考え込んでいると、キャサリンは妖艶な笑みを浮かべて答えてくれた。



「マリー大魔王様。この山脈の森に囲まれたブレイスワイトで、私達がどのようにしてお金を稼ぎ、暮らしているのか。それは、山脈からある鉱石が取れるからなんですよ」

「鉱石??」

「はい。聞いたことがあるかもしれませんが、ダイヤモンドです」

「ダイヤモンド!?」



キャサリンとサキュバス達は笑みを浮かべながら、胸元や指を見せてきた。

そこには、今まで気づかなかったのが不思議な位、キラキラしたダイヤモンドをあしらったネックレスや指輪が輝いていた。



「き、綺麗•••」



私は思わず呟いた。

キラキラ輝くネックレスと指輪。

私の人生で着けた指輪と言えば、『ペアリングスキル』を使うための安いシルバーの指輪だけ。


こんなに輝く装飾品、着けたことがないもの。



「よければ、差し上げます。マリー大魔王様にお似合いの指輪がありますので」

「いいんですか!?本当に!?」

「装飾品は女性を美しく見せる必需品。是非、美しいマリー大魔王様にも身につけていただきたいですわ」

「う、美しいだなんて」



私は熱くなる頬を両手で抑え、あからさまに照れた。

だって、ダイヤモンドの指輪だよ。

嬉しくない女性はいないでしょ?




浮かれる私に、サキュバスの1人が大きな箱を持って来て、目の前で蓋を開けた。


中には10種類の指輪が並んでいた。

鉱石は全てダイヤモンドだが、デザインがそれぞれ違い、ダイヤモンドの大きさも異なっていた。



「マリー大魔王様。お好きな物をどうぞ」

「もう、惚れてまうやろ•••」



私は小声でそう言うと、遠慮せずに指輪を選び始める。



ああ、何これ

すごい、幸せなんですけど


それにしても、どれもかわいい


ダイヤモンドが大き過ぎるのは、今の私には下品に見えちゃうよね?



悩める少女の目に、ひとつの指輪が目に留まった。


リングが中央部分で連鎖するようなデザインで、そこにメレーダイヤモンドがさりげなく輝き、中央には少し大きめなダイヤモンドが置かれている。




「こ、これにします!!」



初めての買い物ように張り切ってそう告げると、キャサリンは笑顔で私が指差した指輪を箱から取ってくれた。


私は指輪を受け取ると、『ペアリングスキル』用の指輪を一度外し、左手の薬指にはめた。


サイズが合わず、リング部分がスカスカだったのだが、キャサリンが指輪に手を触れると瞬時にサイズが調整された。



「これは私のスキルなんですよ」

「すごい!!」



キャサリンのスキルは、妖艶なサキュバスにぴったりな装飾品の作成スキルだった。

サイズの調整も瞬時にできるらしい。



私はダイヤモンドリングに『ペアリングスキル』を付与すると、うっとりと眺めた。

片時も外したくないと思えるほど、綺麗で自分の指に馴染んでいた。



「気に入っていただけたようですね?」

「はい、とっても!!」

「ふふふ」

「って、いけない。目的を忘れてた!!」



高級な宝石店に来ていたような錯覚に陥っていた私は、本来の目的を思い出す。



「こちらがダイヤモンドです。魔族領でも高く取引されてますが、人族の世界では滅多に出回らない代物ですので、人族の方が高値になるかもしれませんね」



キャサリンが渡して来たのは、既にネックレスと指輪用に加工された大小様々なダイヤモンドが10個だった。



「人族ではダイヤモンドを加工するのは大変でしょうから。リングやネックレス部分だけなら直ぐに作れるでしょう」

「ありがとう。早速、売りに行ってくるね」

「はい」



私は『アイテム収納』からプリンとクレープ、ステーキとミルヒィーユカツを多めに取り出し、キャサリンに渡した。



「まあ、こんなに」

「それ食べて待っててー」





喜ぶキャサリン達を見てから、私は『転移スキル』で王都ラミリアにあるギルドラウンジに向かった。




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