第116話 初めてのガーネット
白龍の里での宴会の翌日、私はラーラ達とイーラ、ターラ、フローレンスを連れてガーネットの街に戻ってきた。
イーラとターラとフローレンスは『転移スキル』を体験して「凄い!!」と興奮しながらお互いに感想を伝え合っていたが、転移先のガーネットの街並みに気づくと、3人共固まった。
街の周辺は外壁で覆われ、街の中には冒険者ギルドや私のお店、最近建設ラッシュの宿屋に屋台、幾つもの建物が建っている。
歩道は綺麗に整備され、中央にはこちらも最近建設した噴水が光を浴びながら流れ、この小さな街には信じられないほどの人が笑顔で歩いている。
異世界に来て、初めて私が訪れた街
私の大切な場所
イーラ、ターラ、フローレンスにとっても、ガーネットが最初の街になったんだね。
そう考えると、自然と笑顔になった。
初めて見る街並みに言葉を発することが出来ずにいる3人の背中を強引に押すと、私は家ユキに向かった。
「き、綺麗•••」
「カッコいい•••」
「本当に、これが家なの?」
アイリスさんの大きな領主邸の敷地に建っている近代的なデザインの我が家を見て、3人が再び固まる。
「き、綺麗だなんて、やーね、正直なんだから」
まだ家の前にいる3人に向けて、家ユキが声を発した。
「い、家が話した•••」
「都会はおっかねぇ•••」
「これが、この大陸の常識•••」
家のドアが自動に開くと、私は固まる3人を強引に中に入れた。
因みに、フローレンスには『翻訳スキル』を掛けているので、みんなにはこの大陸の言葉で話しているように聞こえている。
ドラゴン族もそうだが、フローレンスもかなり理解力が高いため、直ぐに言葉を覚えてしまいそうだけどね。
家の中に入った3人は、約20分間に渡り探索を行い、終始質問をされた。
そして、たまたま家に全員揃っていたので、アイリスさん、アイラ、アリサ、ヒナ、サクラ、と最後に家型と幼児型両方のユキを紹介した。
神様のユーティフル様とシンは、今回のアセルピシアの報告書をまとめるとかで、私とすれ違いで神界に行ったようだ。
「という訳で、イーラとターラはマリーランドで、フローレンスは神盤の警備をお願いしようと思ってる」
「それはよかったわ。人手が足りなくて困ってたのよ」
アイリスさんは戦闘力を兼ね備えた警備員が確保できて安堵したようだ。
ここまで安堵する理由としては、現在、ガーネットが深刻な働き手不足を抱えているため。
マリーラのお店やマリーランドの影響でガーネットには毎日多くの旅行者や冒険者が訪れる。
それに対応するため、宿泊施設や屋台や商店が増え、なんと、地球でもこの世界でも異例な、失業率0%を達成しているのだ。
移住者も積極的に採用し、働き手を賄っている状況。
3人の採用が決まると、マリーランド内にある従業員専用の宿舎に案内する。
マリーランドで騒ぎになるとまずいので私は自身に『認識阻害スキル』を発動している。
従業員専用の宿舎は、木造で建てられた2階建ての作りで、8畳ほどの個室にトイレとお風呂は共同になっている。
本当は家ユキで生活してもらっても構わないんだけど、3人が一般的な人族の暮らしを希望したため、宿舎へ入居することになった。
「マリー様。本当に、私達はここに住んでいいんですか?」
「もちろん。家賃はないし、フローレンスも教会で働いてもらうから、ここを使って」
「な、何というか、あ、ありがとう•••」
フローレンスは出会った当初より大分角が取れ、素直に受け答えしてくれるようになった。
ターラ曰く、まだまだ猫を被ってるらしいけど。
その後、街の中を案内し、買い物をしたり、買い食いをしたり、3人と夕方まで過ごしてから私は家に帰った。
家に帰ると、全員がダイニングテーブルに座っていた。
どうやら私の帰りを待っていたらしい。
「ただいまー。3人共明日から働きたいって、すごい意欲的だったよー」
「マリーちゃん、お帰りなさい。3人の教育は私の方で調整するわ」
「ありがとう?」
なぜだろう。
全員の表情は明るいけど、目が笑っていない。
そんなみんなの雰囲気に、思わず疑問系になってしまった。
「マリーちゃん。遂に来てしまったのよ」
「な、何がですか??」
「はあー。とてもじゃないけど、私の口から言えないわ」
「えぇぇーーー」
アイリスさんは私の口から言えないと、横を向いてしまう。
同時に、幼児化のユキ以外のみんなが私から視線を逸らす。
「ユキ、一体何が来たの??」
「結婚よ、結婚。マリーと結婚したいって王族やら貴族やら、色々な人から手紙が届いてるんだって」
流石のユキ
この子(本当は年上だけど)は本当に頼りになるね
って
「結婚ーーーーーーーー!?」
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