第117話 結婚話と、新作スウィーツ




「結婚って、私が!?」



みんなが大きく頷く。

ユキはフライドポテトを食べながら漫画を読んでいる。


「な、何でそんな突然??今までそんな話なかったでしょ!?」



自分で言うのも何だが、私は巷では聖女様と呼ばれ、冒険者としてはSランク、マリーラのお店は全店舗順調で、確かに目立っている。

最初の頃は王子様に結婚しよう、なんて言われたらどうしようなんて勝手に思っていましたよ。


だけど、結局そんな話は1度もなかった。


なのに、どうして今更そんな話が来るのだろうか?



「マリーランドの影響よ」



アイリスさんが硬い表情のまま答えた。



「マリーランド??それと結婚話と関係があるんですか?」

「大有りなのよ。なぜなら、マリーランドにはマリーちゃんのこれまでの勇姿と併せて、生年月日も紹介されているから!!」

「生年月日??」

「そう、生年月日。マリーちゃんが14歳で結婚適齢期と分かったからよ」



14歳が適齢期??

そう言えば、この世界は14歳で結婚できると聞いたことがある。

特に貴族は跡取りや家系の繁栄のため、早く結婚するらしい。



「いや、まだ早いし、っていうか、私今、人間じゃないし」

「マリー様。ドラゴン族も結婚はします。もちろん、ドラゴンと人族の結婚も可能です」

「ちょっとラーラ、どさくさに紛れて何言ってるのよ!!」



ラーラの発言に、アリサとユキ以外が詰め寄っている。



「例え私が人間だったとして、それでも、やっぱり早いよー」

「そうよね、結婚なんて早いわよねー。マリーちゃんの母親としては、まだ娘をくれてやる訳にはいかないもの」



アイリスさんは、丁寧な口調でよくある父親みたいな台詞を言った。

アイラやラーラ達は先程までの硬い表情が嘘のように笑顔を浮かべている。



「そ、そうよね。よかったー。マリーに先を越されたらどうしようかと思ったわー」



アリサだけは、みんなと違う対抗意識みたいなものがあったみたいだ。



「では、結婚の話は全て断っておくわね。それにしても、王族、貴族、商人、神官、老若男女問わずよくこれだけ来たものだわ」

「モテ期ね」


ユキは漫画から視線を外さないまま呟いた。



「これがモテ期•••。悪くないかも•••」

「さあさあ、マリーちゃん。それより魔王様からも手紙が来てるわよ」


アイリスさんは私のモテ期を慌てて遮ると、魔王フシアナからの手紙を渡してきた。



手紙を読むと、以前フシアナに託したサキュバスの3人、ドレミ、ファソラ、シドに関して相談があると言うことだった。




フシアナにはエルネニーの街の件でお世話になっているため、新作のお菓子を持って直ぐに向かうことにした。



私は『転移スキル』でヴィニシウスの魔王城へ1人で転移する。



同じみの部屋に転移すると、いつもはメイドさんが2人いるだけなのだが、今回はなんと、魔王フシアナとその幹部達までもが部屋にいた。



「お待ちしておりましたのじゃ。マリー大魔王様」

「ご、ごんね?会議中とかだった?」

「いえいえ。この部屋は大魔王様専用ですのじゃ、妾達はここでマリー大魔王様の到着をお待ちしていただけなのじゃ」

「何というか、ありがとう」



何気にいつものホルンが吹かれてからフシアナ達が来るまでの芸術的な動きを楽しみにしていたので、少し寂しかった。



私達は部屋に備え付けられている大きなテーブルに移動すると、座って話を始めた。



「まずは、これお前達、こちらに来るのじゃ」


席に座ったフシアナは、1番後ろにいた3人に声をかける。

フシアナの横に来たのは、サキュバスのドレミ、ファソラ、シドだった。


何というか、同性の私でも直視できないほど布の面積が少ない服を着ていた。

服といっても、大事な部分をどうにか隠しているだけの作りで、こんな姿で男性が誘われたら断るのは無理なんじゃないかと思ってまう。



「マリー大魔王様。申し訳ないのじゃ。サキュバスの魔王に彼女達の保護をお願いしたのじゃが、断られてしまったのじゃ」

「断られたって、サキュバスのいる魔王国ブレイスワイトに同族を返すだけなのに??」

「そうなのじゃ」



フシアナは私の依頼をうまく達成できなかったのが悔しいのか、いつものかわいい顔が歪んでいた。



「かわいい顔が台無しだよ」

「か、かわいい•••」



フシアナは顔と耳を赤くし、俯いて私の言葉を反芻していた。

そんなかわいいフシアナに、私は新作のスウィーツを『アイテム収納』から取り出し、フシアナの前に置いた。



「ま、マリー大魔王様、こ、これは何なのじゃ!?」

「プリンだよ。食べてみて」

「はいなのじゃ、いただくのじゃ」



フシアナは大勢の魔族の幹部とサキュバス3人に凝視される中、プリンを食べた。




「うまままぁぁぁーーーーーーー!!」




フシアナは笑顔全開で叫ぶと、一気にプリンを食べ出す。



魔族の幹部とサキュバスの視線は、フシアナから私に移る。



「はいはい、分かってますよ」



私はいつもの通り、みんなの分のプリンをテーブルに並べる。

もちろん、お代わりを含めて。




プリンを食べていつものかわいい顔に戻ったフシアナに、私はサキュバスをなぜ受け入れてくれないのか理由を聞いた。



「それなのじゃが。魔王国ブレイスワイトには魔族の男もいるのじゃが、その男共が暴れ回っているようで、危ないからと、そう言われたのじゃ」



サキュバスの種族は女しかいないらしいが、繁栄のために他の魔族領から男を移住させているらしい。

その男達が暴れ回っていると、そうフシアナは説明してくれた。



「そっか。なら、一度、魔王国ブレイスワイトに行ってくるよ」

「うぅぅ。マリー大魔王様、申し訳ない限りなのじゃ」

「いいんだよ。フシアナにはいっぱい助けられてるからね」



私はフシアナの頭を優しく撫でて上げると、一気に花が咲いたような明るい表情になった。



それからフシアナ達とプチお茶会をしてから、私は魔王国ブレイスワイトに向かうことにした。





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