第111話 ラーラの幼馴染みと、久々の白龍の里
「それで、どうしたの?」
「実は、その•••」
「??」
いつものラーラと違い、なかなか話そうとせず、俯いてモジモジしている。
「焦ったい。マリー様、ラーラは赤龍の女王に就任するのです」
「赤龍の女王!?」
代わりに答えたナーラの発言に、私は驚いてラーラを見る。
しかし、まだ俯いてモジモジしていた。
「女王になるのって、おめでたいことだよね?ラーラは何をモジモジしてるの?」
「それは、単純に恥ずかしいのかと」
「そういうもんなのかな?それで、相談って言うのは?」
私の「相談」という言葉に、俯いていたラーラが顔を上げた。
「マリー様。その、私の女王就任を良く思っていない同族がおりまして•••」
「ラーラなら強いし、赤龍の女王にピッタリじゃん。何で反対されているの?」
「それは•••」
ここまで話してラーラは再び俯いてしまった。
隣にいるラーラが溜息を吐いてから、代わりに話してくれた。
「反対の理由は、マリー様なのです」
「私!?」
「はい」
「何で??」
「それは、マリー様が、マリー様が•••」
「もう、私の姉2人は情けないですね。ハッキリ伝えるしかないのですよ」
それまで黙っていたサーラが会話に入り込む。
「マリー様が人間だからです。あれ、今は元がつくのでしょうか?ごほん。
それはいったん置いておきまして、ラーラやナーラ、私も含めて人間であるマリー様の眷属というのが根にあります」
「あっ、そういうことか」
赤龍は誇り高きドラゴン。
そんなドラゴンが人間の少女に従えているとなれば、反対するのも分かる気がする。
もしや、大勢の赤龍が私の所為でラーラの女王就任を反対しているのではないだろうか?
「もしかしてさ、殆どの赤龍がラーラの女王就任を反対してたりする??」
「いいえ。1体です」
「えっ!?1体??」
「はい」
「1体が反対するだけで、就任できないの??」
「はい。反対する者には力で捩じ伏せる、それが赤龍の習わしです」
「しかし、今回反対しているのがイーラだとはな•••」
ナーラが呟くように言った。
「イーラは私達の幼馴染みであり、小さな頃より苦楽を共にした関係だったのですが•••」
ナーラの話では、ラーラとイーラは同い年(何歳かは聞いてない)で、成竜するまで同じ棲家で暮らしていたそうだ。
ラーラ達の家族は竜の山脈を守るためにイーラと離れることになったが、その際もイーラは優しくラーラを見送ってくれたらしい。
う〜ん
そんな仲の良い幼馴染みが女王就任を反対するのかな?
「よし、決めた!!イーラの所に行くよ」
「よ、よろしいのですか?」
私の言葉に、ラーラは目を輝かせながら聞いてくる。
初めから一緒に来て欲しかったんだね。
「ラーラの為なら行くよ。それで、イーラには私のことを認めてもらう」
「ま、マリー様•••」
「イーラはどこにいるか分かる?」
「はい。同族の場所は把握できますので。おや•••」
「ラーラどうしたの?」
「どうやら、イーラは白龍の里にいるようですね」
「白龍の里って、酒好きのシヴィアがいるところだよね•••」
白龍の女王シヴィアは、以前神像を作るための材料、白龍石を貰いに行ったことがある。
兎に角、酒好きで、出された酒を飲まないだけで戦闘になりかけたっけ?
ビールとつまみ、たくさん用意してった方がいいな。
という訳で、白龍の里への出発は明日にして、今、私は大量の料理を作っていた。
メニューは同じだけどね。
『マリー、ちょっとお願いがあるの』
「ん??」
家ユキで料理を作っていると、神様シンが私に小声で話してきた。
『眩耀神様にも、料理を作ってもらえないかしら?私の命、いいえ、世界の滅亡がかかっているの』
「サラッと怖いことを•••。けど、眩耀神様には助けてもらったし、料理くらい全然作りますよ」
『よかった•••。とりあえず、500食分お願い』
「えっ??」
初めは冗談だと思ったが、500食という言葉は本当であり、白龍の里に行くのが遅れたのは言うまでもない•••
1週間後、私はようやく白龍の里に向けて出発した。
メンバーは、私とラーラ、ナーラ、サーラだ。
ビールよーし
つまみよーし
持参するものを確認すると、ラーラ達は私に抱きついてきた。
理由は『転移スキル』を使うからなのだが、いつもながらにギュッと抱きついてくる。
軽く触れるだけでもいいんだけどな•••
まっ、今更言ってもしょうがないか
嬉しそうに抱きついている3人を見ながら、白龍の里に向けて転移した。
白龍の里に転移すると、一瞬驚いた表情を見せた人型のシヴィアがいた。
シヴィアの後ろには相変わらず大勢の部下達が人型で雑魚寝している。
正確には雑魚寝していた、だ。
私が現れると、シヴィアとその部下は直ぐに目を輝かせ近づいてくる。
もちろん、お酒目当だ。
お酒を用意しようとしてシヴィアの方を見ると、背中に隠れて見えなかったが、イーラらしい赤龍が人型でいるのが分かった。
イーラはラーラ達同様赤髪で、これまたなぜかラーラ達同様大きなお胸とお尻、キュッと締まったウェストをしている。
ちっ
イーラと目が合うと、一目散に私目掛けて走り出してきた。
向かってくるイーラの目には、殺気とは違う、鬼気迫る何かが宿っていた。
「くらえーーー!!」
イーラは右手で拳を繰り出してくるが、私は特に何もしない。
する必要がないと判断したからだ。
ガキィィィーーン
イーラの拳は目に見えない壁に弾き返され、イーラはそのまま後方に吹き飛ばされた。
吹き飛ばされたイーラは呆然と私を見つめている。
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