第110話 その後と、ラーラの相談
亜空間アセルピシアを倒した後、私はラーラ、ナーラ、ユーティフル様、シンを直ぐに回復した。
尻尾や腕、足を失い、あと少し遅ければ確実に命も失っていただろう。
その後は、みんなに抱きしめられ、みんなに泣かれた。
私は亜空間アセルピシアのこと、ユーティフル様やシンのこと、そして悪神になったことをみんなに説明した。
みんな驚いてはいたが、疑う人は誰もおらず、どんな形でも死んだはずの私が戻ってきたことを喜んでくれた。
ユーティフル様とシンと、今後について話したけど、悪神になったばかりの私にレコード操作を教えられる人、つまり他の悪神、晦冥神かいめいしん様、眩耀神げんようしんが不在のため、しばらくは今まで通りこの世界でマリーとして過ごすことになった。
それから、私は休む間もなくラドさんとアークの遺体を棺に入れ、冒険者ギルドのギルドマスター、レキシーさんに教えてもらい家族の元に向かった。
といっても、ラドさんに家族はいない。
前に話したことがあったのだが、両親は既に亡くなっている。
レキシーさんに聞いたところ、両親以外に歳の離れた弟がいたそうだ。
既に魔物に殺され亡くなっているが、新人のアークを弟のように思っていたのかもしれない。
そのアークについて、ガーネットの街に両親が住んでいた。
私は直接事情を説明するため、レキシーさんと共にアークの実家を訪れた。
アークの両親はまだ30代と若く、突然の息子の死に足から崩れながら泣いた。
私はただ、謝罪することしか出来なかった。
だけど、アークの遺体を引き渡し、その死に顔を見た両親は最後にこう言ってくれた。
「笑顔だな•••」
「ええ。立派に冒険者を貫いたのね•••」
2人の目からは涙が溢れている。
「我が息子よ。最後に、憧れの聖女様の力になれたんだな」
「私の自慢の息子よ」
話したこともなかった私なんかのために、アークは命を賭けて助けてくれた•••。
目の前で泣いているアークの両親は、私が守って行く。
いつの間にか泣いていた私は、そう強く誓った。
ラドさんとアークの埋葬が終わると、私はマリーランドの建設に全力を注いだ。
ラドさんとアークは、生前このマリーランドの警備を買って出てくれていた。
レキシーさんの話だと、毎日数千人押し寄せる人の中には、待ち時間の長さや、施設が全て完成していないことで、ラドさんやアークを罵ることが何度もあったそうだ。
そんな時でも、私がモチーフの施設というこで、2人は謙虚な態度で対応をしてくれ、大きな騒ぎに発展したことは一度もなかった。
それと、2人はマリーランドが完成することを楽しみにしてくれていたらしい。
だから今、私は早くマリーランドを完成させるため、一切の睡眠を取らず作業を行っている。
メリーゴーランド改め、マリーゴーランドを設置。
『マリーラ•クレープ』『マリーラ•ハンバーガー』『マリーラ•ステーキ』3店舗の開店準備。
そして、アイリスさんの要望で作ったマリーショップ。
ここには私が着ているものと同じセーラー服やブレザー、私の顔が印字されたコップやお皿、ぬいぐるみ、色々な物を用意した。
そのグッズのひとつに、箱に入ったクッキーがあるのだが、そのパッケージは真ん中に私、両隣にラドさんとアークが写っているものにした。
2人のことを、みんなにも知って欲しいから。
そしてなんと、このマリーショップの店員さんとして、アークの両親が働いてくれることになった。
クッキーを持って再びアークの実家を訪れた際、私が販売の仕事をして欲しいとお願いしたところ、写真の中で笑っている息子を見て凄く喜んでくれ、息子を見ながら働けるなら
と、快諾してくれた。
写真が存在しないこの世界で、息子の顔がいつでも見れるのは貴重なのかもしれない。
普通なら、不眠不休で作業していたら周りから「大丈夫?」「無理しないで」と声を掛けられそうなものだが、私の気持ちを知っているからか、私が人間じゃなくなったからか、みんな見守ってくれた。
そして準備が全て終わった夕方、我が家ユキで簡単な宴会をすることになった。
ユーティフル様やシンの存在は既にみんな知っているし、もう夜中にこそこそ神像の前で飲むことはなくなるのかな?
というか、アセルピシアを倒してから1週間が経った今、ユーティフル様とシンはずっとこの世界にいて、この家ユキに住んでいる。
『しかしマリーが悪神様とはのー。マリー様と、読んだ方がいいかのー?』
「今まで通りでいいですよー」
『大出世ね』
「これ、出世なの?」
「それにしても、うまく見た目を誤魔化してるじゃん」
「スキルのお陰」
私の今の見た目は、『認識阻害スキル』によって、今までのマリーになっている。
悪神の姿は、なぜか分からないけど髪の色や瞳の色が刻々と変化するため、少し前は金髪に黄色目の時があり、ユキに「完全にヤンキーじゃん」と言われた。
「ま、マリー」
「ピー」
「行ってきたの?」
「う、うん」
「ピー」
ヒナとサクラは、あれから毎日、ラドさんとアークのお墓参りに行っている。
ヒナは数日泣き続け、サクラも最近までご飯を食べれない程落ち込んでいたが、少しづつ元気を取り戻していた。
「こっちに来て、ご飯食べな」
「う、うん」
「ピー」
私はヒナとサクラにあ〜んをして、鳥の唐揚げを食べさせてあげる。
「ず、ずるいです!!マリーお姉様、私も」
「マリーお姉ちゃん、私も」
かわいい妹のアイラとミアが口を開けて待っているので、私は唐揚げを食べさせてあげる。
「マリーちゃん、私も」
「じゃあ、マリー、私も」
アイリスさんとアリサもあ〜んを求めてくる。
普段なら、うっ、となるが、2人にはここ最近マリーランドの件でお世話になりっぱなしなので、素直に唐揚げを口に入れてあげる。
こうなると、次はラーラ達かな。
しかし、ラーラ、ナーラ、サーラは少し離れたテーブルで、何やら相談事をしていた。
私の視線に気づいた3人が私の元に来ようとしたので、そのままそこにいて、と手でストップをかけ、私からラーラ達の所に行った。
今の私の周りは少しカオスだからね。
「どうしとの3人とも?」
「実は、マリー様に相談がありまして」
少し顔を赤くしたラーラは、恥ずかしそうに話し始めた。
★★★★ ★★★★ お知らせ★★★★ ★★★★
本作に登場する眩耀神様を主人公にした作品を8月10日にアップしました。
テイストは違いますが、「チート」や「ざまぁ」要素も盛り込んでいます。
もしよければ、感想や★でこの作品に反応いただけたら嬉しいです♪
こういった作品は初めてですので、皆さまの反応で、何話まで書くか決めていきたいと考えています。
【作品名】
神様より偉い悪神様の人間転移
〜付人が本棚を倒してしまい、人間マニュアルがごちゃまぜになったことを知らずに転移スタート〜
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