第107話 ▪️▪️ー、死す





私は黒い魔力を全て右手に集め終わると、アセルピシアに向ける。





ラドさん



あなたは誰より優しく、正義感に溢れていた。

初めて訪れた冒険者ギルドで、出会ったのがラドさんでよかったよ。




アーク


あなたのことは新人冒険者という以外、何も知らない。

だけど、私はこの先、あなたのことを忘れない。

誰よりも強い心を持った戦士だったよ。




私の夢


たかがブレザーのために受験勉強を頑張るなんて、馬鹿だよね。

けどね、それ位、このブレザーを着て、高校に通いたかったんだ。

今となっては、決して叶わない夢だけど•••。






【全ての想いを乗せ、全てを破壊しろ!!】





ラドアークブレザー





私の右手から黒い魔力を纏った龍が放たれると、戸愚呂を巻いて飛んでいく。

右手から放たれた瞬間、龍はみるみる大きくなり、上空を覆うように旋回を始める。


アセルピシアも旋回している龍に向けて先ほどの赤外線のような光線を放つが、龍は全てを躱す。


そして、アセルピシアが次の攻撃に移った時、一瞬の隙ができた。

私の放った黒い龍の目が赤く光る。





【全てを、破壊しろーーーーーー!!】





私が右手を振り下ろすと、旋回していた龍は急降下し、アセルピシアを一気に飲み込んだ。


アセルピシアが中で抵抗しているのか、龍の腹の辺りが時より膨らむが、それを気にすることなく龍は再び上空に舞い上がると、そのまま爆発(自爆)した。


辺り一目が黒い渦で覆われ、爆風が地上にまで吹き荒れる。




やがて爆風が落ち着くと、空に雲ひとつない青空が広がった。



その青空にはもう、アセルピシアはいなかった•••。





全ての力を使い果たした私は、その場に仰向けに倒れた。

しかし、地面に落ちることはなく、私の体はラーラによって支えられていた。



「ま、マリー様•••」



今にも泣き出しそうなラーラは、静かに私を地面に寝かせると、膝枕をして頭を撫でてきた。



「どうしてこんなご無理を•••。我に力があれば•••。情けないドラゴンです」



私は横たわったまま首を横に振る。



「「マリー様!!」」

「マリーお姉様!!」

「マリー」

「マリーちゃん」

「マリーお姉ちゃん!!」


いつの間にか、私の周りにナーラ、サーラ、アイラにアリサ、アイリスさん、そしてミアまで集まっていた。

少し遠慮した位置に、ヒナとサクラもいる。



『大儀であったのー』

『頑張ったわね、マリー』


ユーティフル様とシンも私の側に来て、手を握ってくれた。

後で、神様達のこと、みんなに紹介しなきゃね。

ラドさんと、アークの家族にもちゃんと説明しなきゃ。



私は力が入らない体を無理矢理起こそうとした。





次の瞬間





ユーティフル様が私の視界から消えた。

同時に、転移により誰もいなくなったマリーランドの建物が崩れる。



この時、ユーティフル様は吹き飛ばされたのだと、ようやく私は理解できた。




『あなた、赤龍ね。申し訳ないけれど、マリーを守るのに力を貸してちょうだい』

「言われなくても、我らはマリー様の眷属。状況が分からずとも、命の限りお守りする!!」

「サーラ、あなたはアイリス達を避難させなさい」

「了解」



サーラは素早くその場にいた全員を体中を使って運び、避難を始める。



私は体力の限界から失われそうになる意識を無理矢理戻し、ユーティフル様を吹き飛ばした者の正体を探す。




そして、上空を見上げた私は驚愕し、無意識に体が震え出した。




消え去ったはずのアセルピシアがいたのだ。





なぜ•••





疑問と極度の恐怖の中、アセルピシアを見ると、先程までのアセルピシアとは違っていた。


今度のアセルピシアは、右側が漆黒の闇に覆われ、体の左手が長剣になっており、左足が青色の鉱石で作られていた。


顔は倒したアセルピシアと同様、大きな瞳があるが、今度のやつは鼻と口があった。


直感的に、先程までのアセルピシアと動体だったのだと思った。

ブラックホールは高重量に包まれており、出口となっているワームホールだって信じられない高重量の異空間だ。

そこから這い出てくる際に体が分断されたのかもしれない。



そして、もう一つ直感的に感じたこと。


さっきまでのアセルピシアより、このアセルピシアの方が強い。



こうしてはいられない




上空ではドラゴン化したラーラとナーラがアセルピシアと戦っている。

だが、一方的に攻撃されていて、これ以上は命に関わる危機的状況なのが直ぐに分かった。


私には殆ど魔力は残されていないし、大魔王の威圧も終了している。

それでも、最後まで戦わなければ•••。



体が悲鳴を上げるのを無視して、私は魔力を集め出す。

これが、本当に最後の力だ•••。



私は右手をアセルピシアに向けると、残された魔力を放出した。





ラドアークブレザー





先程より小さい黒い魔力を纏った龍は、旋回することもなく、一直線にアセルピシアに向かう。


ラーラ、ナーラ、シンに気を取られていたアセルピシアは私の攻撃に気付くのが遅れ、黒い龍はアセルピシアの青色の右足を一気に飲み込み、爆発した。


激しい爆風が巻き起こり、近くにいたラーラ、ナーラ、シンは吹き飛ばされる。


爆風によって巻き上がった埃が宙に舞い、視界を奪っていった。



たが、直ぐにその爆風は止められ、巻き上がった砂埃も一瞬で無くなった。

左足を無くしたアセルピシアが、風を起こし、全てを払ったのだ。



アセルピシアは真っ直ぐに私を見下ろし、大きな瞳からは激しい憎悪を感じた。



アセルピシアは左手の剣を私に向けると、激しい雷のような閃光を撃ち放った。






私にはもう

その攻撃を躱す力は残っていない






真っ直ぐ私に向かって飛んでくる雷の閃光を正面から受け止めた。






私の体は力無く倒れる







そして、意識が無くなった






私には今の状態が直ぐに分かった

2度目だったから•••









そう、私は死んだんだ•••











★★★★ ★★★★ お知らせ★★★★ ★★★★



本作に登場する眩耀神様を主人公にした作品を8月10日にアップ予定です。

テイストは違いますが、「チート」や「ざまぁ」要素も盛り込んでいますので、読んでもらえたら嬉しいです⭐︎



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