第81話 勇者パーティ追放と、スキル持ちの女の子





「マリーちゃん!!」

「マリー!!」

ギルドの中にいた顔見知りの冒険者が私を見て名前を呼ぶ。


「何でラドさんが倒れてるの!?」

「そこに立ってるパーティの男がやったんだよ!!」

「ラドはその女の子が殴られたから止めに入ったんだ。そしたら、いきなり殴られた!!」

周りの冒険者達が教えてくれる。


「ラピさん。冒険者が不必要に危害を加えたらどうなるの?」

「は、はい。冒険者の活動停止、もしくは権利剥奪もあります」

「だってさ。そこのパーティさん」

私は立っている3人のパーティを睨みつつ、倒れてるラドさんにヒールをかける。


「ま、マリー!!」

ヒールで回復したラドさんは私の顔を見る。


「戻ってたのか。すまねえな。マリーに迷惑かけちまって」

「全然気にしないで。少し、イラついてるけどね」

「こいつはいけねーな」


私の怒ってる表情を見たラドさんは、その場に立ち上がり、他の冒険者に私とラーラ達から距離を取るように伝える。



「誰だお前は?」


パーティの中の男が私に言ってくる。



「女性を殴る奴には名乗らない」

「そうか。だがな、俺達はBランクパーティ、バスタードだ。有名だから知ってるだろう?大人しく従った方がいいぞ」

男は醜い笑顔で私を見てくる。


「ば、バスタード•••」

「今頃気づいても遅いな。まー、素直に土下座して俺様の靴を舐めれば許してやるが」

「ふっふふ、くっくく•••」

私は笑いを堪えられずその場で大声で笑い出す。


「おいお前。何笑ってやがる!!」

「ごめん、ごめん。私の国ではバスタードって、ろくでなし、って意味だからつい」

「舐めるなよ!!」

男と、他のパーティメンバー2人が戦闘態勢に入る。


ラーラ達が私の前に出ようとしていた時、殴られ倒れていた女の子が苦しそうな顔で立ち上がり、その場で両手を広げて静止する。


「ヒナ、貴様が如きが俺に楯突くな!!」

男は女の子を蹴ろうとする。

私は素早く動き、女の子を抱き寄せると元の場所まで瞬時に戻る。


「何っ!!どうなってる!?」

男には私の動きは見えなかったらしい。


「大丈夫?」

「•••」

ヒナと呼ばれていた女の子は、何かを言いたそうに口を動かすが、言葉にはならない。

それと、ヒナの顔には大きな痣があった。


「そいつは話せないんだよ。今までは雑用係でこのバスタードに所属させてやっていたが、もうお荷物はいらない」

「私達はAランクを目指すために、これからキラーピッグの群れを倒しに行くのよ。だから、お荷物にいられたら邪魔なの」

「そもそも、勇者パーティと呼ばれてる私達の中に何であんたなんかがいたのか不思議なのよね」

男の後に他のパーティメンバーの女2人も醜い顔で言ってくる。

女2人は見せつけるように男に抱きつく。


ちょっと待って

これは私の大好きなジャンルのひとつ、勇者パーティ追放物じゃないの??

でも、この世界に勇者なんているの??

魔王は確かにいるけど、人間を無闇に襲ってる訳じゃないしな•••


「勇者??」

「この世界で最も高ランクなBランクパーティなんだぞ。勇者に決まってるだろう」

「ラピさん。Bランクパーティって、この人達だけなの?勇者なの?」

「いいえ。Bランクパーティは他にもいますし、勇者なんて聞いたこともありません」

「黙れ!!その中でも最も優れているのがバスタードなのだ!!だから勇者なのだ!!」

「ふ〜ん」


追放される人って、漫画では特殊能力持ってるよね

もしかして、ヒナもパーティを強くする特殊能力持ちなのかな?


私はリトリーとの戦いの後に見つけた新しいスキル『スキルサーチ』を使う事にした。


リトリーは『洗脳スキル』の遣い手で、たまたま私が大魔王の加護持ちだったから有効にならなかったのだが、もしもを考えた時に少し怖くなった。

そのことをユキに相談したところ、私のステータス画面からこのスキルを見つけてくれた。

サラッと書いているが、私がステータス画面を確認していた時、横にいたユキも画面が見え、操作できる事を知ったのだ。


私は『スキルサーチ』を発動し、ヒナと一応、他のパーティメンバー3人を見る。


▪️ヒナ

スキル持ち《愛されし者》

スキル使用中、指定した人物•パーティのLvを2倍にする。ただし、スキル使用中は言葉を発することは不可。


▪️ライス(男)

スキル無し


▪️モニー(女)

スキル無し


▪️スイ(女)

スキル無し



《愛されし者》

Lv2倍??

これ、凄いスキルじゃん


私は続いて『探知スキル』を発動してバスタードメンバーのステータスを確認する。


▪️ヒナ

Lv:9

HP:150

MP:550


▪️ライス(男)《愛されし者》発動中

Lv:28

HP:500

MP:-


▪️モニー(女)《愛されし者》発動中

Lv:24

HP:380

MP:-


▪️スイ(女)《愛されし者》発動中

Lv:22

HP:310

MP:-


この世界に魔法はないのに、ヒナのMPが異様に高いな。

というか、他のメンバーはヒナのスキルでLv2倍でこのステータスなんだよね。

実質、Lv11〜14で、パーティ追放と威張る程、ヒナと差がないような。



「あなた達、このヒナって子がいなければDランク並のパーティだけど。それでも勇者なの?」

「意味わからねぇことを言いやがって!!お前、さっきから生意気なんだよ」

ライスが私に飛びかかってくる。

私は身体中に黒いオーラを纏い、ライスを睨む。

冒険者ギルドは私のオーラによって激しく揺れ出し、ライスはその場に腰を抜かす。

モニーとスイは身体中を震わせ、青ざめている。


「勝手に私に飛びかかって来ると、あなた死ぬよ」

死ぬよ、というよりは、ラーラ達に殺されるよ、と言った方が正しいかな。


「お、お前は、何者だ」

「私と、後ろにいる3人はこう言う者だよ」

私とラーラ、ナーラ、サーラはSランクの証、ゴールドのギルドカードを見せる。


「な、なんだそれは?どこかの富豪とでも言うのか!?」

「世間知らずのお嬢が、さっきの揺れは金の力で何か仕掛けたのね?」

「私達に楯突いたこと、後悔させてやるわ!!」

バスタードのメンバーはSランクのギルドカードを知らないらしく、一気に元気を取り戻す。


「え、Sランク•••」

ラピさんが呟く。


「はっ!?」

「ギルドマスターからは聞いてましたが、マリー様、ラーラ様、ナーラ様、サーラ様は本当にSランクなのですね。ゴールドカード、初めて見ました」

「え、Sランクだと!!嘘を言うな!!」

「そ、そうよ。どうせ金で買ったのよ」

「信じなくてもいいけど、私の友達に手を出したんだから、少し痛い思いはしてもらうよ」


私の発言にバスタードの3人は後退りする。

すると、ヒナが私の前に立ち、黙って頭を下げる。

ヒナは私と同い年位に見えるけど、身長は140センチ程で小柄。肩にかからない位の髪の長さに今は痣ができちゃってるけど可愛らしい顔をした女の子だ。

そんな子が、私とラーラ達の前に震えながら立ちはだかっている。

ヒナはきっと、私とラーラ達の実力が分かるんだと思う。


「あなたはどうして、自分のスキルを使ってまでこの人達を守ってるの?」

「!?」

「私は人のスキルが分かるの」

「•••」

ヒナは暗い顔で俯く。


「止めに入るなんて、生意気な雑用係だ」

私はライスを睨む。


「くっ•••、ちっ。まぁいい。どうせそいつはパーティから追放したんだからな。俺達は偽Sランクにはできない、キラーピッグ討伐に行く!!」

「そうよ。誰も私達には勝てないもの」

「お荷物も追放できたしね」


「行かないで•••」

ヒナが言葉を発した。


「ぐっ、しゃべったと思ったら、行くなだと。そもそも、追放したのにお前が俺達を静止したからこう騒ぎになったんだろうが!!」

ライスがヒナを殴ろうと右手を振りかぶる。

私は瞬時に男の横に移動し、ライスの足首を蹴ると、ライスは空中で1回転して地面に叩きつけられた。

私は地面に横たわっているライスと、ライスに駆け寄ったモニーとスイを見下ろす。


「あなた達、行くのは勝手だけど、行ったら絶対に死ぬよ」

私は冷たく言い放つ。


「う、うるさい」

「ヒナのスキルで強くなってることも知らないで、追放するなんてね」

「な、ヒナにそんな力ある訳ないわ!!」

「そうよ!!」

「くそっ!!行くぞ!!」

ライス達は立ち上がると、私の横を通り過ぎる。


「私、追放する勇者のことが大嫌いだから、何があっても助けないから」


ライス達は私を睨み、冒険者ギルドから出て行った。




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