第76話 証拠の取得と、ゲイリー捕獲
私は頭を捻り、何とか最もらしい考えを見つけようとする。
このお城からリトリーとその仲間を逃さないように穴を空けたが、逆を言えば、誰も城に入ってこれないのでは•••。
「あの•••、リトリーやゲイリーを支援してる兵士や国民、貴族とかいる??」
「兵士では誰もいない。いても私がどうとでもする。国民は皆やつらを嫌っていた。ただ、貴族に関しては、リトリーから見返りをもらっているやつは味方するかもしれないな」
「そうでしょう?だから、私は城に侵入されるのを防ぐために、経路を絶ったのです!!」
「マリー様すごい」
「マリー様すごい」
「流石です」
「本当に!?」
エメリ以外は納得してくれる。
「それに、この見晴らしの良さ、新たな王子と王女様のお披露目にちょうど良いじゃん」
「確かにこの眺めは素晴らしく、お披露目にはちょうどいいかもしれない」
エメリも納得する。
「マリー様。私は王子ではなく国王に」
「マリー様。私は王女ではなく女王に」
「そうなるのか。でも、国王と女王って、普通はどちらかなんじゃないの??」
「確かに異例ではあるが、法律でどちらか一方とは聞いたことがないな」
エメリは考えながら言う。
「なら、いいか」
私も細かいことは気にしない。国のトップが2人いてもいいよね。
それから今後の段取りを話し、国民へのお披露目は明日の正午に決まった。
「私はゲイリーに襲われる準備があるからそろそろ戻るけど、3人の事、ちゃんと守ってね」
「任しといてくれ」
エメリは拳を突き上げる。
私は『転移スキル』で家ユキに戻った。
家に入るとサキュバスの3人が私に近寄り、跪く。
「マリー様。お帰りなさいませ」
「食事にしますか?お風呂にしますか?」
「それとも•••」
3人が流れるように言ってくる。
私は無意識にユキを見ると、ユキは恍けて視線を逸らした。
「変なこと覚えなくていいから。あと、もっと楽にしていいんだよ」
「そう言う訳には行きません」
「それにしても、3人とも良い香りがする。お風呂入ったの?」
「はい。あのような豪華絢爛な入浴初めてで、とても心地よかったです」
3人は元々のスタイルの良さと漂う色気に加え、今はお風呂上がりで更に艶やかになっていた。
女性の私でもウットリしてしまうこの色気はまずい。
変態ゲイリーが変な気を起こさない内に、早く避難させなければ。
私はみんなにレーリック城であったことを話し、併せてゲイリー捕獲に向けたこれからの事を話し合った。
話し合いの結果、私とミランダさん、家であるユキ以外は携帯ハウスに移動することになった。
移動する際は、目立つように家から出て、ラーラ達はいないことをあからさまにアピールする。
残るのは私だけでもよかったのだが、それだと兵士に任せてゲイリー自らが来ない可能性がある。
その点、大好きなミランダさんがいる事で、ゲイリー自ら乗り込んでくる可能性が増えると考えたからだ。
話し合いが終わると、みんなが家から出て、私とミランダさんはこれ見よがしに大きく手を振って見送る。
そして真夜中
家の扉から不審な音が聞こえてきた。
どうやら扉を開けようとしているらしい。
私は『念写スキル』『暗視スキル』を発動する。
ガチャ
扉の鍵が開く音がした。
扉を壊されたくないので、ユキにはタイミングよく鍵を開けるよう伝えていた。
『探知スキル』で確認すると、家の中に入ってきたのは5人。
家の外には約50人いた。
いや
まさかの全員で来たよ
普通、女の子2人攫うだけなんだから、最低限の人数で来るもんじゃないのかな•••
『暗視スキル』のお陰で夜目もばっちりで、家の中にゲイリーが入って来たのが確認できた。
本当はキモいゲイリーを家に入れたくなかったけど、証拠のために我慢している。
ゲイリーを含めた5人が私とミランダさんが寝ているリビングのソファに近寄ってくる。
本来は寝室で寝ているべきなのだが、いくら証拠の為とはいえ、ゲイリーが寝室に入るのは我慢できなかった。
「バカな阿婆擦れ共が呑気に寝てやがる」
「後でたっぷり弄んでやるからな」
ゲイリーは癖になっている舌舐めずりをする。
キモい
けど、我慢
「お前達、拘束しろ」
「•••」
兵士達は躊躇いを見せる。
「早くしろ、バカ」
「一国の王女を攫うというのは•••」
「こいつはわしの女だ。どうしようと勝手だ!!早くしろ!!」
「•••」
「もうよい!!お前は解雇だ!!」
ゲイリーはそう言うと、ミランダさんに手を伸ばす。
その時、部屋の電気が点いた。もちろん、ユキが点けたのだ。
「な、なぜ電気が•••」
「「キャーーーー」」
驚くゲイリーを無視して、私とミランダさんは悲鳴を上げる。
「「ゲイリーよー。助けてーー」」
ミランダさんはなかなかの女優だが、私はやや棒読みになってしまう。
「いい悲鳴だ。後でもっと鳴してやるからな」
ゲイリーは舌舐めずりをする。
キモい
私は全身に鳥肌が立つ
もう、証拠としては十分だよね
そろそろ懲らしめますか
そう思った私に、予想外のことが起こった。
「もう我慢ならん」
「みんな、ゲイリー王子を捕らえよー」
一緒に家の中に入ってきていた兵士がゲイリーを捕らえだした。
「貴様ら、わしにこんなことしてどうなるか分かってるのかー!!」
「関係ない!!無抵抗の女性を拉致するなど見過ごすことはできん!!」
兵士達はあっという間にゲイリーを拘束する。
私は『念写スキル』『暗視スキル』を終了した。
「マリー様。これは意外でしたね」
「うん。でも、騎士団長がエメリだから、納得かも」
小声で話す私達に兵士が近づいてくる。
「この度はお騒がせして申し訳ありませんでした」
「私達でどこまでできるか分かりませんが、ゲイリー王子をレーリックに連れ帰り、王に相談したいと思います」
「それなら大丈夫」
私は『牢屋収納スキル』を発動し、中にいるリトリーを見せる。
「リトリー国王!!」
「父上!?」
「おい、お前達、早くわしをここから助けろ!!」
「親子仲良くね」
私はみんなの会話を無視して、ゲイリーも『牢屋収納スキル』に収容した。
「これは一体•••?」
「明日の正午に全て分かるから、それまでは大人しくしてて。騎士団長のエメリも了承してるから」
「エメリ様が!?」
兵士達はまだ悩んでいるような表情をしている。
「私、ミランダ•ヨル•サズナークが責任を持ちます。明日の正午まで猶予をお与え下さい」
ミランダさんは頭を下げた。
兵士達は慌てふためく。
「わ、分かりました。ミランダ様がそこまでおっしゃるならば、我々は明日の正午を静かに待ちたいと思います」
「ありがとうございます」
「つまらないなー。折角家の周りの兵士を蹴散らそうとしてたのにー」
ユキの声が家に響く。
「い、今の声は!?」
兵士達は辺りを見回す。
「きっと、皆様お疲れなんですわ。早く戻られて、今日はゆっくりお休み下さい」
「確かに最近疲れが•••」
「幻聴か•••。早く戻ろう」
ミランダさんの一声で兵士達は納得し、みんな一斉に引き上げて行った。
「まったくユキは•••」
「てへぺろ」
ユキの古い言葉が家に響いた。
そして翌日
私は、ミランダさん、ラーラ、ナーラ、サーラを引き連れて、レーリックの王城を訪れた。
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