第58話 石材探しと、親書が届く



転移した私は、家の中に入ろうとする。

するとガチャッと、鍵が開く音がした。


「お帰りー」

ユキの声が聞こえた。


「ありがとうー。まるでオートロックだね」

「そうでしょうー」

「おうとろっく?」

「さぁ、ラーラ中に入ろうねー」

私は慌ててラーラ、ナーラ、サーラの背中を順番に押し、中に入れる。


中に入ると、サクラが飛びついてきた。


「ピー!!ピー!!」

どうやら怒っているようだ。


「ごめんね。寂しかったかな?」

私がサクラの頭を撫でると、もう二つ、頭が差し出されてきた。


「マリー様。お帰りなさいませ」

「マリー、お帰り」

アイラはともかく、アリサもこんな子だったかな?

私は仕方なく2人の頭も撫でる。


ルルミーラさん、ルミナーラさん、アイリスさんは3階の会議室に集まってるらしい。

嫌な予感はするけど、今はラーラ達に聞きたいこともあるし、お風呂だね。


急いでシャワー室で体を洗い、露天風呂に飛び込んだ。


くぅぃぃぃー


久々の温泉は体に染み渡り、おじさんみたいな声を上げる。


ぷはぁぁぁー


何も言ってないが、ラーラ、ナーラ、サーラは当然のように私に追随する。


はぁぁぁぁー


続けて、アイラとアリサも入ってくる。


ピーーーーー


サクラは私の膝の上に飛び込んできた。

ドラゴンって、お風呂好きなのかな?

それにしても、つくづく、広いお風呂でよかったと思うよ。


「ラーラ、また像を作りたいんだけど、何か良い石材ないかな?」

「石材ですか?」

「ラーラ、白龍の地にある石材はどうだ?」

少し考え込むラーラに、ナーラが提案する。


「白龍石か。いいかもしれん」

「白龍石?」

「はい。白龍が長い年月住処としている場所には、白く輝く、丈夫な石ができるのですが、それをドラゴンの間では白龍石と呼んでいます」

白く輝いて、しかも丈夫。

神様に打ってつけの石かもしれない。


「それ、手に入れることできる?」

「白龍は元々難しい性格ですが、あれがあれば上手くいくかも•••」

ラーラは顎に手を置き考える。


「マリー様。青龍の女王、アオの首を頂けないでしょうか?」

「それがあれば石をくれるの?」

「恐らくは。白龍は青龍を酷く嫌っていましたので、手土産としては充分かと」

「分かった。特に首はいらないし、それを手土産として持って行こう」


「ちょっと待ったー」


その時、露天風呂にルルミーラさん、ルミナーラさん、アイリスさんが入ってきた。

3人は浴衣を来ていて、温泉に浸かりに来た訳ではないようだ。

というより、浴衣を着て、少し頬が赤い時点で朝風呂しているな。


「マリーちゃん。お出掛けはダメよ」

「そうよ。色々聞きたいことがあるから」

「マリー様。いつも人助けするその人心、尊敬しかありません」

「3人共、何言ってるの?」

慌てる私に、アイリスさんが3枚の紙を見せてくる。


「これ全部、親書よ」

「嘘でしょー」

私は温泉に顔を沈める。


「さぁ、お風呂から上がって返事を考えるわよ」

「えぇーー」

親書の内容によるが、私的には早く神像を作って神様に色々聞きたいのが本心だ。

明日はサズナークに行かなければならないし、出来れば今日中に作りたい。


「マリー様。よければ白龍石は私にお任せ下さい」

ラーラがお湯に顔を沈めた所為で乱れてしまっている私の髪を直しながら言ってくる。


「いいの?」

「もちろんです。私とナーラで行って参ります。万が一、時間を要してしまったことを考え、サーラをマリー様の元に残します」


私がどこかの大企業の社長なら、絶対に秘書にするね。


「ありがとうー」

「なら、マリーちゃんはお仕事よ。貴族たる者、きちんと対応しなきゃね」


忘れていたが、一応、貴族位ランクEの貴族だった。

私は渋々温泉を出て、髪を乾かし、浴衣に着替えてから3階の会議室に向かった。

会議室と言っても、約20畳位の部屋がたまたま使い道がなかったので、そこにテーブルと椅子を用意した部屋だ。


会議室に入ると、3人が親書を見て話し合っている最中だった。


「来たわね、マリーちゃん」

みんなが手招きする。

私は椅子に座ると、3枚の親書を渡される。


「まずは、1枚目の、左のやつだったかしら」

アイリスさんは私に手渡した紙を上から覗き込む。

1枚しかないものをみんなで共有するのは大変だよね。


私は『地球物品創生スキル』を使い、業務用のコピー機を出した。凄く高かった•••。


「マリー様、これは?」

ルミナーラさんが不思議そうにコピー機を触る。


「見ててね」

私は親書3枚をコピー機にセットすると、3部づつコピー印刷した。

突然動き出した機械にみんな驚いている。


「はい、どうぞ」

コピーが終わったものを3人に渡す。


「こ、これは•••」

「す、凄いスキル?ですわ」

スキルと言うことにしておこう。


「みんなで親書を見れた方が話しやすいと思って」

「助かるわ。とても便利ね」

「因みに、私じゃなくても皆さんでも使えるので、いつでもどうぞ」

「本当!?」

「助かるわー」

「睡眠時間が確保できるようになるかもです」

みんなの目がキラキラ光っている。

やっぱり、王族や領主様となると、書き仕事とか多いんだろうな。

一層、パソコンとか出した方がいいのかな?


「さて、話を戻すわよ。まずはマリーちゃんに届いた親書の1枚目から話し合いましょう」

「スウィール王国の王宮室からね」


スウィール王国?

会話の中で聞いたことある国名だけど、私にはまったく接点がないはずだ。


「内容は、我が領土に大量に発生した魔物の消滅について確認したいと•••」

「マリーちゃん、また何かしたの?」

「私、何もしてないですよ」

慌てて否定する私に、ルルミーラさんとアイリスさんが溜息を吐く。


「きっと、何かしてるわね」

「そうね。そうでなければ、マリーちゃんを指名した親書なんて届かないわ」

「うぅ」

「近々訪問する、これで返すわね」

「えぇぇぇーーー」


凄く面倒臭い。

もし、私が魔物を倒したとしても、それはスウィールにとってメリットしかないはずじゃない。


「魔物が発生した訳じゃなくて、いなくなったのに何で行かなきゃいけないのー?」

「恐らく、お礼をしたいんじゃない。魔物を倒して咎める国なんてないしね」


尚更行きたくない•••

あー、久々にポテチ食べながら漫画読みたいよ


「はい、次」

「次は、ファヴェルね」

「これは、マリーちゃんと、私とアイラ宛に来たものよ」

アイリスさんの表情が少し引き攣った。

ファヴェルと言えば、そこの領主の夫が青龍と手を組み、アイリスさんとアイラを攫った事件があった街だ。


「内容は、事件の首謀者であった領主の元夫の処刑が決まったそうよ。来て欲しいとは書いてないけど、日時の記載はあるわ」

「そう•••」

アイリスさんは深いため息を吐く。


「7日後らしいけど、無理する必要ないんじゃないかしら?」

「そうですよ、アイリス様」

ルルミーラさんとルミナーラさんは、柔らかな表情で優しく語りかける。


「ありがとう。でも、大丈夫よ。確かに辛く、怖い出来事だったんだけど、あの時のことを思い出そうとしても、カッコ良いマリーちゃんしか出てこないの」

アイリスさんはテーブルに肘を着き、掌に顎を乗せたまま私を見てきた。


私は恥ずかしくなり、視線を逸らして下を向く。


「適切な裁き、感謝する、とだけ返信するわ」

「それがいいわね」

「では、最後ね」

「サズナーク王国ね•••」


3人共、少し怖い顔で私を見てくる。


はっ!!

私は気づいた•••


①ラミリアの王妃が危ない

②身侭の爪が必要

③▪️▪️▪️

④ラミリアの王妃が助かった



③▪️▪️▪️の部分

青龍100対倒して、サズナーク王女を助けた部分を話していなかったことを•••



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