第49話 新築祝いと、元気のないメレディス



翌日、私はアイリスさんの屋敷の空いた土地にいた。

今朝まで『携帯ハウス』が設置してあった場所だ。


『携帯ハウス』は収納し、平地も終わっている。

朝からマーニャさんに青龍1体を渡し、10億Gをゲット(前回同様、状態がよかったので査定をする事なく換金できた)。

お金もある。


いよいよ、『地球物品創生スキル』でマイホームを出す。


「マリー様の屋敷が誕生日するのですね」

「私だけじゃなくて、ラーラ、ナーラ、サーラのお家でもあるんだよ」

ラーラの言葉に、私は大事な部分を追加した。


「私の部屋もあるのよね?」

「一応、10部屋位あるみたいなので、個室を作ろうと思えば」

「私はマリーお姉様と同じ部屋でも構いません」

アイリスさんとアイラも待ちきれないようだ。


因みに、アリサは「マリーラ•シュークリーム」に出勤している。



「よし。じゃー、行くよ」

私は『地球物品創生スキル』からマイホームを指定した。

ものすごい「チャリーン」の連続音の後、上空から屋敷が現れ、静かに着地する。


3階建てのマイホームは、アイリスさんの屋敷よりはもちろん小さいけど、それでもかなりの大きさで、見た目もカタログ通り曲線と直線が上手く使われ、とても幻想的で綺麗な家だった。


「何、この屋敷は!?」

「初めて見る作りです」


地球の豪邸だから、木材以外にこの世界では使われないコンクリートが利用されているし、何よりデザインが近代的なのだ。

驚くのは無理もない。


「中に入ってみよう」

私はそう言って入口まで歩き、ドアを開けた。


中は玄関部分が吹き抜けで、大きな窓から日が入り、とても開放的になっていた。

玄関を進むと広々としたリビングにアイランドキッチン、奥には大きな露天風呂(温泉)もあった。

もちろん、家具付きだよ。


お母さん、お父さん

マリはやったよ

マイホーム買ったよ


「すごい、何もかもすごいですわ!!」

「ここに私達が•••」

「マリー様、今日はお祝いにしましょう」

「賛成です」

「いいねー」

ナーラ、サーラの提案に乗り、新築祝いをすることにした。

実際は中古だけど、気分は新築なのだ。


「では、メレディス姫やルミナーラ王女、ルルミーラ様も呼んでは?」

「それはいいですわ」

「お世話になってるし、呼んでみようかな」


お世話になってるという意味では、ラーミアさん、ミア、マーニャさん、レキシーさんもそうだけど、流石に王族まみれの中に呼ぶのは気が引けるな。

また、別にしよう。



私は『ペアリングスキル』でメレディスさんとルミナーラさんに連絡すると、夜から明日にかけて予定がないと言うことで、泊まり掛けで来ることになった。


もちろん、送り迎えは『転移スキル』です。


参加者も決まり、私は早速料理に取り掛かる。

アイリスさんとアイラは公務で一旦、屋敷へ戻り、ラーラ達は掃除をしてくれている。

ベッドは後で私が『クリーンスキル』で綺麗にしよう。



料理は、定番の「ステーキ」「鳥の唐揚げ」「パスタ」と、新規で「フライドポテト」「サンドウィッチ」「サラダ」を大皿で用意。

デザートは、浪費が止まらない私は業務用のアレを買い、アレを作ろうと思っている。


夕方になると、私は『転移スキル』で最初にルルミーラさん、ルミナーラさんを迎えに行き、次にメレディスさんを迎えに行った。


「本日はお招きありがとうございます」

「いつもお世話になってますから」

気のせいか、いつもよりメレディスさんが元気ないように感じる。

私に抱きついたり、腕を組んだりもしてこない。


「何か元気ないですね?」

「マリー様とお会いできるのに、そのようなことはありませんわ」

「なら、いいですけど。メイズ国王はいますか?予定が空いてれば、招待しようかと」

メレディスさんの表情が曇る。


「父は少し外せない予定がありまして」

「では、また今度誘いますね」


私は『転移スキル』でメレディスさんをマイホームに連れて行く。


「何て素敵なお家なんでしょう」

「みんないますから、中へどうぞ」

家の中に招き入れると、更に感動しているようで色々質問をしてくる。

少し元気になったみたいだ。


「マリー様、こちらをどうぞ」

メレディスさんが箱を渡してくる。

箱の蓋を開けると、中には高そうなワインが2本入っていた。


「私からもありますの」

ルミナーラさんも箱を渡してくる。

中身は先ほどとは違うが、これまた高そうなワインが2本入っている。


「ありがとうー」

「マリー様。完璧な宴になりそうですね」

ラーラ、ナーラ、サーラがワインをじっと見つめている。


「マリー様は14歳と伺いましたので、お酒も嗜んでいると思い、お持ちしたんですよ」

「私、お酒飲んでいいの!?」

「??」

「マリーちゃん、お酒は12歳を過ぎれば飲めるのよ」

アイリスさんが教えてくれる。


「アイラもお酒飲むの?」

私は13歳のアイラを見る。


「はい。晩餐会等の時に飲んでいます。少しですけどね」

「な、なるほど。ビールとかも飲むの?」

「びーる?」

「あれ、酒場とかで冒険者が木のジョッキでお酒飲んでなかった?」

アイラは首を傾げる。


「マリー、それはワインを水で薄めたものよ」

元冒険者のアリサが答える。


「そうなの??」


ビールないのかー

ちょっと、口元に泡をつけたり、CMみたいにゴクゴク飲んでみたかったな。


「それにしても、すごいご馳走ね」

「味も美味しいし」

ルルミーラさんの後に、アイリスさんが美味しいと言ったが、もちろん、本来であればまだ誰も食べていないはず。


「さあさあ、乾杯して食べましょう」

アイリスさんが少し慌てながら仕切り出す。


みんなにワインの入ったグラスが行き渡ると、私は簡単に挨拶をした。


「みなさん、今日は来てくれてありがとうございます。ご飯もいっぱい作りましたし、後でデザートもあるので楽しみにしていて下さい。それでは、かんぱーい」

「かんぱーい」

みんなワインを一口飲むと、料理が置かれているテーブルに走ります。


晩餐会とかでは、殆ど料理に手をつけないであろう貴族様が料理を取り合っているのは、なかなか微笑ましい。


そんな光景を見ながら、私はワインを飲んでみる。



まぢーーーーー

なにこれーーー


大人はこんなの飲んでるの•••



しばらく料理やお酒と共に会話を楽しんでいると、話題が私になった。


「あの時のマリーちゃん、カッコよかったわー」

「本当に、惚れ直しました」

アイリスさんとアイラが、誘拐事件の時の話をしている。


【お前は私の家族に剣を向けたんだ、死ぬのは当たり前よね】


アイリスさんが私の真似をする。

みんながなぜかキャッキャしている。


私は恥ずかしくなり、デザートの準備を始めた。

円盤が着いた機材をアイテム収納から取り出す。

スイッチを入れてその円盤が温まったら、生地を流し込み丸く仕上げる。


部屋中に甘い香りが立ち込め、みんなの視線が一気に私に集まる。


焼き上がった生地に、生クリーム、カスタードクリームを塗り、フルーツをトッピングしてくるくる巻けば完成。


「マリー様、これは何ですか?」

「クレープだよ」

私は次々とクレープを作り、みんなに渡していく。

食べた人が順番に「美味しいー」を連呼している。


私がシュークリームと同じくらい好きなクレープだよ。

美味しいだろ、美味しいだろ。


「いつお店を出すの?」

アイリスさんが言ってくる。


「クレープは今日限りにしようかなー」

私が答えると、アイリスさんはまた食べたいと必死に懇願してくる。

さっきのお返しにはなったかな。


「マリー。本当に美味しい。治らないと思っていた病気を治してもらって、働かせてもらって、何より美味しい物がいっぱい食べれて私は幸せ者よ」

アリサが私を見ながら言う。


「病気を治したって!?」

私がアリサに言葉を返す前に、メレディスさんが少し興奮したように言ってきた。


メレディスさんの瞳からは、涙が流れていた。




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