第48話 再び給付金と、マイホーム準備



鳥の唐揚げを食べ終わると、先ほどまで憔悴しきっていたのが嘘のように、マーニャさんとレキシーさんが元気になり、私に嬉しい報告をしてくれる。


「マリー、青龍の査定なんだけど、結果が出たわよ」

マーニャさんはそう言いながら、1枚の紙を私の前に置く。


1,000,000,000G

と、紙に書かれていた。


「じゅ、10億!!」

「マリー、何なのこの数字?」

事情を知らないアリサが聞いてくる。


「う、うん。後で話すね•••。それにしても、青龍ってこんなに高く売れるんですね?」

「状態が完璧だったからね」

「本来なら、もっと価値があるかもしれないんだけど、ここまでの物を市場でどう扱えるか、未知な部分もあって」

レキシーさんとマーニャさんが言う。


「充分です。これでガーネットの復興も、私のマイホームも作れます」


前にも言ったけど、私は完璧な善人ではないのだ。

自分を甘やかすのが最初で、その次に余った分を他の人に還元する。

あと、目立ちたい。褒められたい。


「お金はギルドカードに登録してあるわよ」

「ありがとうございます」


うほうほです


「レキシーさん、私達はこれからガーネットに戻りますけど、どうしますか?」

「王都でやりたいことはあるけど、そろそろシュークリームのお店ができる頃よね」

レキシーさんは少しの間考え込み、

「帰る!!」

と言った。


「マリー、私も一緒に行きたいんだけど」

アリサが申し訳なさそうに言ってくる。


「そのつもりだよ。私達、って言ったじゃない」

「マリー」

アリサが私に抱きついてくる。

この子はよく抱きつく子だね。

私の同級生にも何人かいたけど。


私はマーニャさん、リルさん、ララさんに挨拶してから、『転移スキル』でガーネットの準備中のお店に転移した。


「マリー様!!」

「マリーちゃん!!」

「マリーお姉様!!」

お店の前に転移した直後、ラーラ、アイリスさん、アイラが私に駆け寄り、体を上から下まで確認してくる。


「ご無事だったんですね」

「もう、無断外泊なんて」

「心配したんですよ」


そう言えば、魔王国に行くと伝えたきり、連絡を忘れていた。


「ちょっと、色々ありまして」

「無事ならよかったわ。ところで、その子が魔族領に行く前に話していた女の子?」

アイリスさんがアリサを見ながら言う。


「そうなの。アリサって言うんだよ」

「アリサです。よろしくお願いします」

アリサが自己紹介をすると、私は病気の事を含めて、ラミリアでマーニャさんとレキシーさんに伝えたのと同じ内容を話した。


「大変だったのね。ゆっくりして行ってね」

「はい。ありがとうございます」

「その事なんだけど、アリサにはお店で働いてもらうのがいいんじゃないかなって」

「私が!?」

「冒険者辞めて、お店開こうとしてたんでしょ?だったら、ちょうどいいかなって」

「私なんかが働いていいの?」

「アリサだから、お願いしてるんだよ」


アリサの瞳にみるみる涙が浮かび、私に抱きついてくる。

それを見たアイラも抱きついてくる。


「私も、マリーお姉様の成分が不足してるんです」

「う、うん。うん?」


アリサが落ち着き、アイラの成分補給が終わった所で、レキシーさんと別れ、私はみんなを連れて『携帯ハウス』に移動した。


私はアイリスさん、アイラ、ラーラ、ナーラ、サーラに「鳥の唐揚げ」定食を、アリサにシュークリームを出した。


「はふぅ〜ん」

「あぁ〜、美味」

「意識が遠のきます•••」


私の大好物、鳥の唐揚げに心を撃ち抜かれているようだ。

そしてアリサは、シュークリームを一口、口に運び固まっている。


「美味しい•••」

「これが、この街の私のお店で出すシュークリームだよ」

「これ、世界中から人が来るよ」

アリサは口元にクリームをつけたまま、真剣な顔で私を見てくる。


「こんな凄いシュークリームを売るお店に、本当に私が働いてもいいの?」

「こっちからお願いしたいくらいだよ」


お店を開く上で、信用できる人は1人でも多い方がいい。

『魔眼スキル』はもちろん使っているけど、悪い人じゃないのと、信用できる人は違う。


「マリーラ•シュークリーム」にはラーミアさんが料理人として働いてくれて、アリサもフロアで働いてくれたら安心だ。


そう考えると、アントワネット国の「マリーラ•パスタ」「マリーラ•パンケーキ」には料理長のドミニクさんがいるけど、あと数人知り合いが欲しいな。


「私、一生懸命働くからね」

「よろしくね」

私はそう言うと、大皿を1枚出し、鳥の唐揚げを山盛りで出した。


「これでお代わりは大丈夫。アリサ、温泉に入るよー」

「おんせん?」


私はこれまでのみんなと同様、シャワーで頭や体を洗ってあげ、温泉に招き入れる。


「いぁ、はぁぁぁぁ」

「気持ちいいでしょう?」

「こんなの初めて。肌が生き返るよう」

「病みつきになるよ」

「なら、ここに住んじゃおうかな」

「いいよ。直ぐに住まいなんてみつからないだろうし」

「いいの?」

「うん」

アリサが私に抱きつこうとした時、アイラが裸で間に飛び込んできた。

辺りに水飛沫が舞う。


「マリーお姉様。私も一緒に住みます」

「アイラはお屋敷があるでしょう」

アイラは頬を膨らませる。


「今度、お家を建てるんでしょ?その時に私達の部屋を作ってもらう手があるわよ」

アイリスさんも温泉に入ってくる。


私は念のためラーラ達を見ると、まだ鳥の唐揚げを食べている。

これで乱入は最後かな。


「アイリスさんやアイラはともかく、ラーラ達も一緒に住むから、部屋は幾つかあった方がいいか」

「もう、意地悪ね」

「こうなったら、大きなお家、建てちゃおうかな」


けど、給付金を配るとはいえ、

豪邸を建てたら流石に感じ悪いかな


「いいじゃない。街の人も喜ぶわ」

「普通、喜びますか??」

「前にも言ったけど、マリーちゃんがいることが重要なのよ。豪邸を建てれば、この街に骨を埋める覚悟だと思ってくれるじゃないの」

「そんなもんですかね?」

「そんなものよ」


お湯が流れるのを見ながら、私は給付金の話をした。


この街の人口は5,000人。

アントワネットと同じ、1人当たり100,000Gを給付する。

後は、領主様、ようはアイリスさんに復興金として200,000,000G寄付し、合計700,000,000G。


残りの300,000,000Gと、青龍をもう一体くらい売ったお金でマイホームといきますかね。


「マリー、本当にそんな大金をいいの?」

「いいんです。これで、少しは気兼ねなく豪邸が建てられますから」

「ありがとう、マリー」


これにて、私達のお風呂会談は終了した。



それから数日かけ、封筒に入れられた100,000Gが街の人に配布された。

アイリスさんやアイラには握手会を提案されたが、流石に普段から話している人達が多く気まずいので、領主関係者から1世帯づつ配ってもらった。


そして、「マリーラ•シュークリーム」も無事開店し、連日行列を作っている。

街の外からもたくさん人が来て、あれからガーネットの街に宿屋が増えた。


復興前の街の状況を私は知らないけど、今のガーネットはすごく活気がある。

そんな街を見ていると、自然と笑顔になってしまう。


笑顔の理由はもうひとつ。


私は『地球物品創生スキル』と『家計簿スキル』を併用し、頭の中でカタログを作り、システムキッチン等を探していた。

だがそこで、掘り出し物を見つけたのだ。


3階建だが、まるで5つ星ホテルのような外観、窓も大きく、露天温泉付き、曲線と直線がうまく融合した綺麗な建物。


▪️築年数:1年以内

▪️平米数:400平米

▪️価 格:1,300,000,000G

▪️備 考:告知事項あり


これなら建売だから、こっちで家を建てる必要もなく、一気に出せる。

しかも、異世界価格なら、普通この10倍はするはず。


安い理由は「告知事項あり」

きっと、事故物件


けど、神界を知り、神を知り、自身は転生者。

今の私は、幽霊なんてちっとも怖くない。


この物件、買いだ!!



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