第44話 久々の魔王国と、ワーム
結局、アリサには魔王国ヴィニシウスの魔王とは知り合いとだけ話をして、納得してもらえた。
魔王国に行く前に、まずはマザーが待っている村まで報告に行く。
私はアリサの手を握り、『転移スキル』を使い村に戻った。
アリサは『転移』ということに考えが追いついていないようで、頭を抱えて呟き、辺りを見渡している。
これが普通の反応だよね。
アイリスさん達は、私にくっついて、と言ったら直ぐに転移のことを受け入れていたけど。
私がアリサに転移について説明していると、ラドランさんの声が聞こえて来た。
「マリー様。戻られたんですか?」
「はい、たった今」
ラドランさんに抱っこされていたマザーが私の元に駆け寄り、抱きついて来た。
「きゅん、きゅ」
「ただいまマザー」
「マザーから怯える様子が急になくなったのですが、もしや魔物を?」
「はい。周辺にいる魔物は倒したので、もう大丈夫です」
「おおー、流石マリー様。本当にありがとうございます」
ラドランさんは頭を下げながらお礼を言い、同時にアリサの方を見た。
「あのー、その方は?」
「途中で知り合ったの。冒険者だから安心して」
「アリサと申します。よろしくお願いします」
「いやいや、マリー様の紹介して下さった人なら歓迎しますぞ」
ラドランさんはそう言うと、村の人に宴の準備をするように指示した。
「ラドランさん。すいません。この後、直ぐに行かなきゃ行けない場所があって」
私は慌ててラドランさんを止める。
「おや、そうでしたか。それは残念です」
「また来ますから」
「きゅー、きゅ、きゅ」
マザーが悲しそうな顔をしたので、私は思い切り抱きしめた。
次会った時は、身長を追い抜かされてるのかな?
マザーとの別れを済ませると、私はアリサを連れてラミリアのギルドラウンジに転移した。
ギルドラウンジに着くと、リルさんとララさんにアリサを紹介した。
「アリサさん、そんなに綺麗な見た目をしていて冒険者なんですか??」
「いや、私なんて•••」
リルさんの言葉に動揺するアリサ。
私から見れば、リルさんもララさんも、アリサもみんな綺麗だ。
ここは表参道ですか?
それとも青山ですか?
「マリーさん、どうしました?」
「ううん。何でもないの。それよりマーニャさんとレキシーさんの査定はまだ終わってないよね?」
私は意識をお洒落な街から現実に戻して言った。
「まだ、当分かかると思います」
「そうだよね。なら、少しの間、ここでアリサを預かってもらっていいかな?」
「マリーさんの知り合いなら構いませんが、どこかに行かれるんですか?」
「ちょっと魔族領に」
私はリルさんとララさんに、アリサが病気ということは隠して、「ワームの肝」を探しに行くことを伝えた。
「ワームですか•••」
ララさんが深刻そうな顔をする。
「ワームって、ミミズみたいな魔物でしょ?そんなに強いの?」
「魔物??私が知る限りワームという魔物は知りません」
あれ?
異世界アニメでお馴染みのワームじゃないのかな?
「私も詳しく知りませんが、ワームは神の領域と言われていて、人間が近づくことはありません」
「そもそも、魔族領だしね」
ララさんの言葉に、リルさんも重ねる。
神の領域?
全然分からない
「とりあえず、魔王国のヴィニシウスに行ってみるよ」
「マリー、私も」
「アリサはここで休んでて」
アリサは自分も行きたそうだったが、体調面を考慮して残ってもらうことにした。
それに、領域って言葉が気になる。
どう考えても安全な場所とは思えない。
私は魔族領に出かける前に、ペアリングでラーラに連絡し、経緯を話した。
ラーラは自分も行くとやや興奮していたが、お店の開店準備が早く終われば『鳥の唐揚げ』をご馳走すると持ちかけ、論破した。
因みに、ラーラもワームに関する詳しい話は知らないようだった。
ラーラとの会話が終わると、私は『転移スキル』を使って魔王国ヴィニシウスに移動した。
考えてみれば、ヴィニシウスでは城を半壊させ、魔門を跡形もなく消しとばしている。
行きづらい•••
私は躊躇いつつ、街に向かって歩いていると、前回とは違い、門があり、門番までいる。
以前の時は、城の周りを囲うように門はあったが、街の周りには何もなかった。
私は門に近づき、門番に話しかけた。
門番は身長2メートル以上あり、鹿のような顔をしていた。
「あの、中に入りたいんですけど」
「旅の方ですか?ようこそ、ヴィニシウスへ」
えっ?
すごい紳士
前とは全然違う
「失礼ですが、身分書はお持ちでしょうか?」
「ギルドカードでも大丈夫ですか?」
「はい、問題ありません。大魔王の天罰があって以降、改めて人族のギルドカードも対象になりましたので」
大魔王の天罰•••
絶対、あれだよね?
私は頭を抱えながらゴールドのギルドカードを渡した。
すると、門番の額から大量の汗が流れ、ギルドカードを持つ手が震えている。
これはSランクに反応しているのか、それとも•••
「ま、ま、マリー•アントワネット、、様•••」
やっぱり、そっちだよね
門番は私にギルドカードを返すと、腰にかけていた小さなホルンのようなものを口に咥えて吹き出した。
トゥトゥトゥーー
変わった音だがかなりの大音量で私は両耳を塞ぐ。
これは、敵襲の合図か?
大音量から数十秒後、門の奥から砂埃と一緒に大勢の魔族がこちらに向かっているのが見えた。
いや、これ
本当に復讐じゃ?
100体近い魔族が私の前まで来ると、中央だけ通路を作るような形で位置した。
そして、その通路から見覚えのある顔が走って私の前まで来ると、いきなり跪いた。
同時に周りの魔族も全員が跪いた。
「マリー大魔王様。ようこそヴィニシウスへ」
「ようこそヴィニシウスへ!!」
私の前で跪いたのは魔王フシアナだ。
そのフシアナの言葉に、魔族全員が復唱する。
フシアナ
節穴
なんて可哀想な名前なのか•••
一応、私が名付けたことになるけど
「ふ、フシアナ、久しぶり。元気にしてた?」
「はい!!マリー大魔王様におかれましても、ご機嫌麗しゅう限りで」
「もっと普通に話してもらえると•••」
「これが私の普通でありまして」
いや、初めて会った時、「わらわ」とか「〜じゃ」とか言ってたじゃない。
「あと、大魔王様は止めてほしいな」
「とんでもありません、そのようなこと」
まったく話が進まないため、とりあえず私は聞きたいことがあると伝え、魔王城に入れてもらうことにした。
魔王城に行くと、あれから1ヶ月ほどしか経っていないのに、すっかり修復されていた。
「お城、綺麗になったね?」
気まずそうにフシアナに聞く。
「はい。お城も、あれからわらわ、私達の心も入れ替え、綺麗になりました」
「そ、そう。よ、よかった」
私は魔王城内の10階にある豪華な部屋に案内された。
部屋は縦横50メートル以上ありそうな広さで、豪華な石造りのテーブル、花瓶や絵画が飾られている。
私が椅子に座ると、アシアナも正面に座り、直ぐにお茶が出てきた。
雑談してもフシアナが気を使うだろうし、私は直ぐに本題に入った。
「フシアナ、今日来たのはワームについて聞きたいからなの」
「ワーム•••」
フシアナの顔色が青ざめる。
見た目は少女のフシアナでも、一国の魔王である。
その魔王が青ざめるワームとは一体•••。
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