第38話 大繁盛と、誘拐
お店の開店まで後1時間となったところで女性従業員達が出勤したので、開店時間を早めることにした。
女性従業員は今日は初日というこで全員出勤となっていて、各店舗9人づつ、残り2人はモウモウ小屋に配置となっている。
今更ですが、みんなセーラー服を着ている。
聖女の羽衣、本当に流行ってるんだな。
これでは、セーラー服がお店の制服みたいになってしまう。
変なお店に思われないかな?
変な心配をしながら、私はみんなを集め、開店を早めることを伝えた。
「みんな、早めに開店するけど、その分、しっかり残業代払うからね」
「ざんぎょう??」
「お給料が少し増えるってことです!!」
私が得意げに言うと、想像以上にみんなのテンションが上がった。
「じゃ、開店するよー!!」
「はい!!」
私がお店の扉を開けると、次々とお客様が入ってきて直ぐに満席となった。
「いらっしゃいませー」
「トマトスパでございますね?」
「お待たせいたしました」
うん順調そうだ。
私は少し見守ると、2号店の「マリーラ•パンケーキ店」に行って同じことをした。
やはり、残業代は受けが良かった。
しかし、どちらの店舗も勢いがすごい。
私はラーラに「マリーラ•パスタ店」、ナーラ、サーラに「マリーラ•パンケーキ店」を任せると、モウモウ小屋に向かった。
モウモウ小屋に着くと、2人の女性がモウモウの世話をしている最中で、私は挨拶をし、牛乳をもらって各お店に届けた。
届けたタイミングで小麦粉がないと言われ、買い出しに行き、また戻ると卵がないと言われ、買い出しに行き、その繰り返しだった。
すっかりお使い役になっちゃったけど、私が店内にいると騒ぎになりそうだから丁度良かったのかもしれない。
因みに、お店の手伝いや行列の整理をしてもらっているラーラ、ナーラ、サーラは握手やサインを求められてタジタジになっている。
そして、開店から3時間、「マリーラ•パンケーキ」が完売になった。
用意していた食材、買い足した食材、全て無くなったのだ。
その30分後、「マリーラ•パスタ」も完売。
並んでいた数百人が食べれないまま終了となってしまった。
朝の行列を見た段階で、後から来るお客様には完売の可能性を説明していたものの、あまりにも申し訳ないため、私とラーラ達で一人一人謝って周った。
並んでいたみんな、誰1人怒る人はおらず、握手やサインをすることで逆に喜ばれてしまった。
全てのお客様に謝り終わった後、私は全員を集めて反省会をした。
出てきた内容は、まず調理場は物理的に電気コンロが足りないと言うもので、直ぐに買い足した。
フロアとしては、注文の間違えが多く出たと言うことで、こちらも手書きのオーダー表を『地球物品創生スキル』で買った。
今までは、この世界のやり方である暗記スタイルだったが、これだけお客様が来たら覚えきれない。
そのため、地球スタイルのテーブル番号毎にオーダー表を使って注文することにした。
後は、材料不足と仕込みの量を調整して、明日からはあらかじめ何食と決めて売れば何とかなるかな。
一息吐いていると、私の指輪が光った。
『ペアリングスキル』を使って誰かから連絡が来たようだ。
「はい。マリーです」
「あっ、マリーちゃん。私よアイリスよ。お店はどうだった?」
「お店はすごい行列が出来まして、お陰様で完売です」
「あら、それは凄いわ。ガーネットのお店も期待できるわね」
アイリスさんは嬉しそうに話してくる。
「こっちが落ち着いたら、ガーネットのお店も準備しますね」
「それなんだけど、お店はもうできたのよ」
「えっ!?お店、できたんですか?」
「そうなの。元々お店をやっていた建物を改築したんだけど、タリムが張り切っちゃってね」
タリムさんは大工さんで、現場監督を務める人なんだけど、私の料理のファンだったりする。
「料理人も従業員も用意しといたから、後は、マリーちゃん次第よ」
「そこまで終わったんですか!?」
「早くシュークリームが食べたいもの」
「わ、分かりました。なるべく早く帰りますね」
「お願•••」
会話が途中で切れた。
『ペアリングスキル』の仕様は分からないけど、電波とかではないはずだ。
少し心配だな。
「マリー様。いかがしましたか?」
私の近くにいたラーラが心配そうに聞いてくる。
「今、アイリスさんとペアリングで話してたんだけど、会話が途中で切れちゃって」
「それは奇怪ですね。あのペアリングは今までそのようなことはありませんでした」
「そうだよね。大丈夫かな?」
「では、アイラにペアリングしてみてはどうでしょうか?」
「あっ、それ正解!!」
私は直ぐに『ペアリングスキル』を使ってアイラに連絡する。
•••
•••
「出ない•••」
「転移でガーネットに行ってみますか?」
「うん」
私はナーラとサーラを呼び、ラーラを含めた4人でガーネットに向かうことにした。
アイリスさんは屋敷ではなく、私のために作ってくれたお店にいたはずだ。
『転移スキル』を使って屋敷ではなく、冒険者ギルドに転移した。
お店の場所は分からないので、街の中央に位置している冒険者ギルドにしたのだ。
転移すると、見慣れた冒険者ギルドの筈が、建物の外に大勢の人が倒れていた。
「マリー!!」
私を呼ぶ声がする方を向くと、レキシーさんが倒れている人の介抱をしていた。
「レキシーさん。これは一体??」
「大変なの。アイリスさんとアイラが連れ去られたの」
「えっ•••」
「いきなり街に、女10人と、兵士みたいな男達、あとそれを指揮している男が襲ってきたの。
やつらの狙いはアイリスさんとアイラだったみたいで、冒険者達も応戦したんだけどその女達にみんなやられてしまって」
レキシーさんは地面に拳を強く打ち込む。
私は倒れている冒険者の中に、ラドさんを見つけた。
倒れたまま、少しも動かない。
「倒れている冒険者はまだ生きてますか?」
「辛うじて生きてるわ」
私は冒険者達を見ながら、静かに詠唱を始めた。
シン•アントワネットの名の元に、癒しの精霊達を、我、マリー•アントワネットに力を与えよ。
グラン•エリアヒール
辺り一面優しい光が包み込んだ。
「これで大丈夫です」
私は淡々と話すと、直ぐに『探知スキル』を使う。
だが、数キロの範囲にそれらしい反応がない。
馬車か何かで移動したなら、まだ探知の範囲にいるはず。
緊急事態だからしょうがない。
私は『GPSスキル』を発動した。
渡した指輪にはあらかじめ『GPSスキル』を付与しているため、居場所が直ぐに分かる。
「向こうの方角にかなりのスピードで移動している。このスピードは馬車では不可能•••」
私は方向を指差しながら言った。
「ドラゴンかもしれません。はっきりとは分かりませんが、私の感覚がそう言ってます」
サーラは私が指差した方向を見ながら言った。
「追いかけるよ」
私は怒りで爆発しそうな感情を抑えながらそう言うと、レキシーさんにその場を任せた。
街の外に出ると、ドラゴン化したサーラに乗って追跡を始めた。
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