第32話 ファミリーと、不審者?

「300,000,000G!?」

私は提示された金額に驚く。


ギルドラウンジの2階の個室には、マーニャさん、レキシーさん、ラーラ、ナーラ、サーラと私の6人がいる。


冒頭のお金は、魔物の換金代として提示されたものだ。

ラミリア王国からの報奨金と合わせれば、600,000,000G。


買える

マイホームが•••


「金額に問題なければ、代表でマリー、ここにサインして」

私はマーニャさんに渡された書類にサインする。


「あと、あなた達、チームを組むんでしょ?

チーム名は決まったの?」

忘れていたことは、黙っとこう。


「チーム名か•••。ラーラ達、何か希望はないかな??」

「マリー様に全権を委ねます」

ラーラが言うと、ナーラ、サーラが期待の眼差しで見てくる。


う〜ん


私はこっちの世界で家族がいなかった。

そこから、姉と慕ってくれ2人の妹ができて、トロール母とマザーを見て、やっぱり家族はいいなと思えた。


「ファミリーって、どうかな?

私の国で家族って意味の言葉なんだけどさ」

私は自分で言って、恥ずかしくなった。


「家族•••」

「私達とマリー様が•••」

「この上ない幸せ•••」

ラーラ、ナーラ、サーラはそう言った後、「家族」と反芻している。


「気に入ったってことで、いいのかな?」

「ちょっとお待ちになって下さい!!」

個室の扉が勢いよく開き、メレディスさんが入ってきた。


「メレディス様。どうしてこちらに?」

マーニャさんが当然のことを聞く。


「私もマリー様に同席しようと、急ぎ、身支度を整え、来たのです」

「そう、でしたか•••。慌てているようですが、何かありましたか?」

「チーム名です!!ファミリー、家族と聞こえましたが!!」

「その通りです。マリーが決めまして」

「う、羨ましいですわ•••」


瞬時に辺りの時間が止まった、ような気がした。


「私もマリー様と家族になりたいです!!」

「昨日もお話しした通り、チームにはランクの近しい冒険者しか登録が•••」

「チームに登録はできないかもしれませんが、私はメレディスさんを家族のように思ってますよ」

私はメレディスさんを見て言った。


「本当にそう思っていただけているのですか?」

「はい!!」

「では、証をくださいまし」

「あ、証??」


証とは、戸籍謄本?


「皆さんがしている指輪を私にもいただけないでしょうか?」

「指輪ですか、全然いいですよー」

「もちろん、指輪以外でも既成事実を•••、よろしいのですか?」

「もちろんです」


戸籍謄本より楽だし、ましてや今、既成事実と聞こえた気もするし•••。

姫様の既成事実って、一体何のことなんだろうか。


「後で渡しますね。使い方も教えますから」

「ありがとうございます。ですが、使い方とは?」

私は簡単に『ペアリングスキル』の説明をした。


「あ、あれは、エンゲージリン•••、いえ何でもございません。指輪は指輪。謹んでお受けいたしますわ」

「よ、よかったですね、メレディス様」

マーニャさんがやや引き攣った笑顔で、なぜか私を見ながら言った。


「次は、私からいいかしら?」

レキシーさんが手を挙げる。


「これからカサノヴァに行くでしょ?」

「はい」

「気をつけてね、以上」

「は、、い?」

「ラーラ達と4人で行くのよね?

ラーラ、ナーラ、サーラ、しっかりとマリーを守るのよ」

ラーラ、ナーラ、サーラは困惑しながらも、主人を守るのは、といつもの台詞を返していた。


「あの、気をつけるとは?」

「そのままの意味よ。敵というか、味方が多いからね」


うん

全然分からない

一旦、忘れよう


「マリー様。そろそろ正午ですので、参りましょうか?」

「そうだね。約束は正午だもんね」

ラーラの言葉に、私は席を立った。


正午約束で正午に出かける。

『転移スキル』様々です。


私達はギルドラウンジにいたみんなに挨拶すると、そのまま『転移スキル』でカサノヴァ王国の王都、カサノヴァに向かった。


ラミリアに来た時の反省を活かし、私は街の門前に転移した。


無事転移できたみいだ。

ただ、私達を見た門番2名が走って街の中に入ってしまった。


しまった•••

不審者と思われたかもしれない


にしても、不審者を残して門番が居なくなるなんて、街に入って下さいって、言ってるようなもんだよね。


「入っちゃっていいのかな?」

「親書もありますし、入って問題ないかと」

「約束の時間もありますし」

ラーラとナーラが言った。


「そうだね。入ろうか」

「マリー様、あれを•••」

サーラは街の中を指差している。


砂埃を上げながら、凄い勢いでこっちに何かが来る。

目を凝らして見ると、馬に乗った騎士が数人と、馬に乗っていない騎士が数十人走って並走している。


「騎馬隊ですね」

「やっぱり不審者に思われたかな?」

ここで逃げたら本当の不審者になってしまう。

けど、迫ってくる勢いは鬼気を感じる。

だ、大丈夫かな•••。


私は一応『探知スキル』を使った。


んっ?

んんっ?


「あの騎士達の数百メートル後ろから1,000人以上の反応が近づいてる」

「これは、撤退も一案かと」

ラーラが戦闘体制を整えつつ言った。


騎馬隊の1人が部隊から先行して私達に近づいてきた。

私も念のため、戦闘体制をとる。


まだ距離はあるが、先行している騎馬隊の1人が走行している馬の上で兜を取った。

兜を取って見えたのは、若い女性の姿だった。


「聖女マリー様でしょうか?」

その女性が走行しながら大声で聞いて来た。

「はい!!」

私は返事をしながら、両手で丸を作った。


「申し訳ありませんが、私と同じように街の外に向かって走って下さい」

女性は私達まで後わずかの位置まで来ている。


走る?

一緒に?

しかも、街の外に?


「お願いします。走って下さい!!」

女性は私達の横を馬で走り抜けながら言った。


「しょうがない。ラーラ、ナーラ、サーラ、走るよ」

「はい!!」

私達は女性を追いかけるように走り出した。

みんな、セーラー服です。


直ぐに女性に追いつくと、私は話しかけた。


「どう言うことですか?」

「流石でございますね。騎馬に追いつき、並走するなんて」

女性は、まるで憧れの人を前にしているよな真っ直ぐな瞳で私を見つめてくる。


「も、申し訳ありません。

この先、左に曲がると隠れる場所がありますので、そこで詳しくお話しします」

「分かったよ」


女性と並走し、スピードを落とさず左折すると林があり、そのまま突っ込むと開けた場所に出た。

辺りは木々に囲まれているため、周りからは見えないだろう。


女性と私達が止まると、続々と騎馬隊がやってきた。


「どうだ?」

女性が後から来た騎馬隊に聞いた。

「問題ありません。うまく撒けたようです」

「よかった」

女性は深く息を吐く。


女性は私達の方を向くと、跪いた。

他の騎馬隊の人も兜を取ると、同じように跪いた。騎馬隊は全員女性だった。


「聖女マリー様。

竜騎士ラーラ様、ナーラ様、サーラ様。

カサノヴァへようこそおいで下さいました」


私はこの状態に戸惑い、ラーラ達を見た。

同じように困惑していた。


「まず、先程の件、深く謝罪いたします。

皆様に危害がないよう、この隠れ場所までお連れした次第です」

「危害って、一体誰が?」

一向に掴めない状況に、少し焦りながら聞く。



「街の人にです」

「えっ??」


銅像作ってるんでしょ?

いきなり、どうして嫌われてるのよーー


私は心の中で叫ぶのであった。


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