第31話 セーラー服の秘密と、この世界の違和感
私達を見たみんなが、深刻な顔をして走って近寄って来る。
「マリーちゃん、何があったの??」
「マリーお姉様ーー!!」
「ラーラ達まで•••」
「まっ、マリー様•••」
「大丈夫ですか?私が依頼をしたばかりに•••」
ララは泣きながらその場に膝をつく。
「みんなどうしたの?」
私はララを立たせながら言う。
「どうしたのはこっちの台詞よ」
「そうよ、あなた達のその格好、どうしたの?」
マーニャさんとレキシーさんが言ってくる。
「格好??」
私とラーラ、ナーラ、サーラはお互いを見る。
あっ
セーラー服がボロボロで肌け
みんな赤ちゃんを交互に抱っこしているから血まみれ
「これは、そのー•••」
私はみんなに経緯を話した。
「まったくもう、心配したのよ」
レキシーさんが少し呆れたような顔をして言った。
「すいません。赤ちゃんに気を取られて忘れてました」
「けど、マリー達がそんなになるってことは、アンデッド化したトロールは余程強かったのね」
「そうですね。悪魔になる可能性があったので通常魔法は使えなかったですし」
私がマリー•ユーティフルの加護を受けた後、直ぐに魔法を確認しとけば解決できたことは黙っておこう。
私は『クリーンスキル』で自分とラーラ達の体を綺麗にし、『復元スキル』でセーラー服を元に戻した。
『復元スキル』は魔力を使うが、これくらいであればまったく問題はない。
セーラー服を復元していて、戦いの最中に感じた事を思い出した。
「ねー、ラーラ達、スカートの下に下着しか履いてないでしょ?」
「は、はい」
「マリー様は、下着以外に何か履いてらっしゃるのですか」
メレディスさんが慌てて聞いてくる。
私はスカートを捲って見せる。
下はタイツだし、女性しかいないから問題ないよね?
「こ、これは•••」
「き、気づきませんでした。一緒にお風呂に入ったこともあるというのに•••」
「おかしいと思ったんです。これではただ見せたがっているだけではないかと」
セーラー服組みは、思い思いに言いたいことを言っている。
私は『地球物品創生スキル』でタイツを出し、セーラー服組みに渡した。
「あのマリー様、ラーラ様、ナーラ様、サーラ様。
色々あり過ぎて、言いそびれてしまいましたが、今回の件、本当にありがとうございました」
ララさんが私達に近づき、深々と頭を下げながら言ってきた。
「私からもお礼を言わせて。ララの故郷を助けてくれてありがとう」
マーニャさんも頭を下げてくる。
「頭を上げてください。私達は自らの意志で決めたので」
ラーラ達も私の言葉に頷く。
「それでも、感謝しかございません。新たな守り主の件までご調整いただきましたし」
「先に査定していた魔物と一緒に、トロールの討伐もちゃんと記録しておくからね」
ララさんの後にマーニャさんが言った。
「討伐の証明はないんですけど、大丈夫ですかね?」
「大丈夫よ。マリー達のことは全面的に信頼しているし、どうしてもって場合は、村の人に聞くし」
「SSランクなんて、直ぐなんじゃないの?」
マーニャさんの言葉に、アイリスさんが言う。
「SランクもSSランクも、元々は蜃気楼的に作ったランクだから、ふざけた難易度になっているのよね」
「ふざけた難易度??」
「そう。討伐達成ポイントは、魔物400体とワイバーン、トロールを含めても1割程度だし、それ以外にやっかいな条件があるのよ」
ふざけた難易度に
やっかいな条件とは
本当にSSランクの冒険者を出す前提で作られたものじゃないんだね。
「やっかいな条件って?」
「西大陸の魔王国4カ国の推薦と、東大陸6カ国の推薦よ」
「魔王国4カ国って、全てですよね?」
「そうね。SSランクのコンセプトは、世界を救える英雄、だからね」
世界を救える英雄
Bランクしかいなかったこの世界でこのコンセプトはかなり厳しいのでは•••。
そもそも、この世界は冒険者より魔物の方が強いし。
「蜃気楼的でしょ?」
マーニャさんは戯けて言ってくる。
「確かに、そうですね。
けど、SSランクやSランクとまでは言わなくても、もう少し強い冒険者がいないと、街とかを守るのが大変なんじゃないんですか?」
「それが、課題のひとつなのよね」
マーニャさんが少し暗い顔をする。
「マリーちゃんは、ガーネットやラミリアの街を見て、女性が多いと感じたことはない?」
アイリスさんが問いかけてくる。
ガーネットやラミリアだけじゃない、カサノヴァで呪いをかけられていた人の多くは女性で、魔王国のヴィニシウスだって女性が多かった。
この世界に来て最初に感じた違和感だ。
「それはね、魔物から街や人を守るために、冒険者や兵士の男が戦って命を落としてきたからなのよ」
「今は男がいない分、冒険者や兵士を女性がやることが増えてるわ」
アイリスさんとレキシーさんが言った。
この世界の現実を知った瞬間だった•••。
このままでは子供が誕生せず、人口は減る一方じゃないか。
もしかすると、これが幸福度の低い大きな原因なのかもしれない。
しかし、これは解決できるのだろうか•••。
「私にできることがあったら、討伐でも何でも言ってください」
私に今できることは、身近なことだけかもしれないけど、やらないよりは増しな筈だ。
「ありがとう、マリー」
レキシーさんとマーニャさんがお礼を言ってきた。
「さっ、明日はカサノヴァに行くんでしょ?
きっと大変になるからゆっくり休んでね」
マーニャさんはそう言うと、リルさんとララさんを呼んだ。
「皆様を3階の宿泊スペースに案内して」
「宿泊スペース?」
マーニャさんの言葉に、私は疑問形で返す。
「そう。3階は無料の宿泊スペースになってるから、いつでも泊まれるようになってるの」
「それは凄いですわ。私ももちろん、マリー様と泊まらせていただきます」
メレディスさんが私の手を取りながら言ってきた。
お姫様がいいのかね?
疑問を口にする前に、メレディスさんは私の手を引っ張りながら階段を登り始めた。
なぜかアイラも走って私に追いつき、手をとってくる。
そして、ラーラ、ナーラ、サーラも間隔を空けずに着いてきた。
「部屋は1人部屋、2人部屋、3人部屋が複数あるわよ」
マーニャさんが階段の下から言ってくる。
その瞬間、みんなの階段を登るスピードが上がった。
「私も負けていられませんわ」
アイリスさんも貴族らしからぬ走りで私を追いかけてくる。
どうしたのみんな?
部屋は充分あるのに
その日私は、3人部屋に無理やり充てがわれ、ひとつのベッドにメレディスさんとアイラの3人で寝ることになった。
残りのふたつのベッドを、アイリスさん、ラーラ、ナーラ、サーラが2人づつ使った。
他に部屋があるのに•••
因みに、アイリスさんとラーラ、ナーラ、サーラが少しだけ不機嫌になったのは、私の勘違いだろうか•••。
翌日、そんな私に、魔物換金分のお金がギルドカードに登録されたと、嬉しい報告が届いたのだった。
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