第28話 史上初と、相談事

私はテーブルの上に置かれた金色に輝くカードを覗き込んだ。

自分の顔が反射する程磨かれており、表面には名前が書いてある。


「ゴールドですね」

同じく覗き込んでいたラーラが言ってきた。


「ゴールドなの?金メッキじゃないの?」

「正真正銘ゴールドです」

自分の名前が書かれたカードを手に持ち、質感や重さを確かめながらサーラが言った。


「そう。これはゴールド素材でつくられた冒険者ギルドカード」

マーニャさんがカードを指差しながら言ってくる。


「へぇー、ギルドカードって、こんなに凄いんですね」

「違うわよ、マリー」

レキシーさんが少し強めに否定する。


「それはSランク冒険者にのみ与えられるゴールドカードよ」

「Sランク?」

「ギルドカードには、GからSSランクまであるの。

Bランクまでは紙を保護した素材で、Aランクはシルバー、Sランクはゴールド、SSランクはプラチナで作られる」


SSランクがあるのか

どんなに強い人なんだろう

素材よりもよっぽど気になる



「それと、後は、それで•••」

「それで??」

レキシーさんが少し言い方を考えているように、間を置いた。


「それで、このゴールドカードを見たのは、私もマーニャも初めて。

なぜなら、この世界で初めての快挙だから!!」


ん?

初めて?


「この世界のランクの最高位は、今もこれまでもBなのよ」

マーニャさんは言う。


「それにしても、マリー達はAランクの予定じゃなかったの?国王様の推薦でも国として便宜を図れるのはAランクまででしょ?」

レキシーさんは、少し疲れたように項垂れて言う。


「1カ国ならね」

「1カ国って、まさか」

「そう。ラミリア王国とカサノヴァ王国の推薦があったからSランクなのよ」

マーニャさんの言葉に、メレディスさん、アイリスさん、アイラが拍手をする。


「私も初めて見ましたわ。流石、マリー様です」

「カサノヴァ王国なら、納得だわ」

メレディスさんとアイリスさんがゴールドカードを見ながら言ってくる。


「そうそう、Aランク以上のカードになると、個人情報を登録できるようになるから私が設定しておいたわ」

「ギルドマスターのスキル、初めて有効活用できたのね?」

「えぇ。登録スキル、まともに使ったの初めてよ」

マーニャさんとレキシーさんのやり取りを聞いて、私は首を傾げて考える。


「マリー、覚えてない?前に魔物100体討伐した時に、ギルドマスターになるには3つのスキルがいるって話したでしょう」


思い出した。

地下金庫でお金をもらったあの時だ。


「認証スキル、登録スキル、保護スキル、この3つがないとギルドマスターにはなれないのよ」

レキシーさんは少し考え込んでから、続けてマーニャさんに言った。


「登録って、個人情報だけじゃなくて、確か、お金の情報もカード内に登録できるんじゃなかったかしら?」

「ええ、そうよ。だから4人のカードにはさっきの報奨金が登録されているわ。

引き出しはいつでもギルドで可能よ」


私はアイテム収納にお金を仕舞うことで地球の物品を買っているけど、『家計簿スキル』を併用すればそこは大丈夫かな。

あの量のお金をアイテム収納に仕舞うのは正直しんどいし•••。



「4人ともカードを受け取ったわね?それじゃ次に行くわよ」

「冒険者ギルドでいいのよね?」

マーニャさんの言葉に、レキシーさんが確かめる。

そう言えば、冒険者ギルドで魔物の買取をお願いするんだった。


「まー、冒険者ギルドと言えば、そうね。

とにかく行きましょう」


私達は城を出ると、マーニャさんの案内で街の中を歩く。

しばらくして冒険者ギルドが見えてきたが、マーニャさんは通り過ぎて行く。


「マーニャ?ここでしょ?」

レキシーさんが聞くも、マーニャさんは指で真っ直ぐと示し、笑顔で歩き続ける。


どこに行くんだろう?

私は隣を、というか、私と腕を組みながら歩いているメレディスさんに聞いてみたが、姫様も知らないようだ。

因みに、錚々たる護衛が4人もいると言うことで、姫様が街を歩く許可は出ている。


冒険者ギルドから少し歩いた所で、マーニャさんが止まった。


そこには綺麗な石造りで作られた3階建の建物があった。

見た目は貴族様の屋敷にも見えるが、入口の扉は鉄の様に重そうな素材で作られ、家のようには感じなかった。


「マリーちゃん。さっきのギルドカードを扉に翳してくれる?」


意味は分からなかったが、私はマーニャさんに言われるままゴールドのギルドカードを扉に翳した。

その瞬間、扉が自動に開き、中で2人の女性が迎えてくれた。


「初めましてマリー様。私はリルと申します」

「私はララと申します。どうぞよろしくお願いいたします」

「よ、よろしくお願いします」

私は訳が分からないまま、挨拶をした。


「みなさん中に入って下さい」

「マーニャ、ここは何なの?」

「ここは、ギルドラウンジ。ゴールドカード以上の冒険者専用ギルドよ」

「何それ?聞いたことないわよ」

「ゴールドカードの発行が決まってから急いで作ったからね」


ギルドラウンジの中を見渡すと、ソファやテーブルはもちろん、地球で言うドリンクバーのような物が設置されている。


「依頼の相談をしたい時はもちろんだけど、それ以外に休憩したい時とか、いつでもこの施設を利用してもらって構わないわ」


これはリッチなファミレス

無料のドリンクバー

女子中学生の心が揺さぶられる


「それと、リルとララはギルドラウンジ専用の受付嬢だから、何でも相談してね」

「す、凄いですわ。私も利用したいですもの」

メレディスさんがギルドラウンジ内を確認しながら呟く。



「レキシーとマリーちゃんは、魔物を見せてもらうから地下に来てね。

みなさんは、ここで寛いでいて下さい」


私はマーニャさんの案内で地下に降りた。

そこには1階とは比較にならないスペースが広がっていた。

ここならワイバーンを出しても問題ない。


「ここに魔物を出してもらえる?」

「全部出していいんですか?」

「レキシーに聞いてるけど、魔物400体にワイバーンでしょ?

数は多いけど、このフロアには保護スキルを発動させてあるから大丈夫よ」


私はマーニャさんの言葉を聞いて、アイテム収納から魔物を出して行く。


「保護スキルって、ギルドカードを保護する以外にこんな使い方があったのね?」

「最近発見した使い方なの。

ただ、保護スキルを使っても、少しづつ綻びは出るから早めに解体しないといけないことには変わらないんだけどね」


魔物を出しながら会話を聞いていたが、やっぱりアイテム収納は優秀らしい。



「さ、流石に、ここまでくると壮観ね」

「そ、そうね」

私が魔物を全て出し終えた後、マーニャさんとレキシーさんが積み上げられた魔物を見ながら言った。


「よし!!それじゃ、査定を始めるわね。

マリーちゃんは上で何か飲みながら待っててね」

マーニャさんとレキシーさんが気合いを入れて、査定を始めた。

私は1階でみんなと待つことにした。


1階に戻ると、みんなお茶を飲んでいる最中だった。

私はアイテム収納からホットケーキを取り出すと、みんなに切り分けた。

ギルドラウンジには飲み物以外に軽食が用意されているが、正直、美味しくないのだ(来た早々、つまみ食いをしていたのはもちろん秘密)。




私達が談笑していると、リルさんとララさんが来た。


「マリー様、1点確認がございます。

ラーラ様、ナーラ様、サーラ様とチーム登録をなさいますか?」

「チーム登録?」

「はい。チーム登録の良い点といたしましては、討伐等の依頼を達成した際、その成績がチームの所属メンバー全てに加算されます」

「なるほど。SSランク目指すなら、みんな一緒がいいもんね」


ラーラ達はまるで子犬のような目で私を見てくる。


「チーム登録、する?」

「はい!!」

3人とも声を揃えて返事をする。


「あの、そのチームに私が加入することはできますの?」

メレディスさんがリルさんとララさんに顔を近づけて質問する。


「も、申し訳ございません。ある程度ランクが近い冒険者同士でしかチームを組むことはできなくなっております」

「そうですか•••、悔しいですが、それなら仕方ありませんね」

メレディスさんは頬を膨らませる。


「それでは、マリー様。チーム登録を行いますので、チーム名を決めて下さい」

「チーム名?」

「はい」


チーム名かぁー

ダサいのはやだな

う〜ん


「それとマリー様。ひとつご相談があるのですが•••」

ララさんが少し暗い表情で言ってきた。



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