第27話 ラミリア到着と、授与式
異世界相場の現実を知ってから2日後、私達はラミリア王国の王都ラミリアと、カサノヴァ王国の王都カサノヴァに向かうことになった。
一緒に行くメンバーは、メレディスさん、アイリスさん、レキシーさん、アイラ、ラーラ、ナーラ、サーラと私の8人。
「馬車は用意していませんが、ラーラさん達に乗って行くのですか?」
メレディスさんが聞いてくる。
「いいえ。転移スキルで行きます」
「転移??」
ラーラ、ナーラ、サーラ以外が驚いている。
「できる限りみんな私にくっついて下さい」
前に使用した時の感覚から、私に少しでも触れていれば転移可能だと考えている。
転移に驚いていた4人も、私にくっついて、と言った時から迷いが消え、一斉に私に抱きついてくる。
「抱きつかなくても大丈夫なんですけど」
4人が私に抱きついているため、ラーラ、ナーラ、サーラは私の手やスカート部分を掴んでいる。
なんとか行けるはず。
私は『転移スキル』を発動した。
一瞬にして景色が切り替わった。
目の前にあるのは、王都ラミリアの城門前だ。
「す、凄いですわ」
メレディスさんが驚きを声にすると、アイリスさんも続けて言った。
「こんな凄いスキルがあったのね。
けれど、マリーちゃんに触れていないと転移できないから、私の執事やメイドには来ることを遠慮してもらったのね」
「そうなんです」
私とアイリスさんがそんな話をしている間、驚いてその場に腰を抜かしている門番にメレディスさんが事情を説明してくれていた。
城門前ではなく、街の門前の方がよかったかな?
城門で少し待たされた後、私達は城の中に入ることを許された。
王宮の入り口である大きな扉を開けると、左右にメイド服を着た人が並び、道を作ってくれていた。
この準備のために、城門で待たされたのかな?
そう言えば、前に来たときは兵士の人がいっぱいいたような。
転移スキルで城門まで来ちゃったばかりに、何だか申し訳ない。
「マリー様。ただいま前の謁見者が終わったそうなので、このまま謁見の間に行きたいと思います」
「このまま?大丈夫かな•••」
最初の予定では、別室で受け応えと礼儀作法について習う筈だったのだが•••。
「大丈夫ですわ。みんな、マリー様の到着をずっと待っていたんですから」
「今更だけど、この服のままで大丈夫なのかな?」
「セーラー服のことですか?問題ありませんわ。
私もセーラー服を着たまま謁見の間に向かいますし、それに巷ではセーラー服は聖者の羽衣と言われているんですよ」
聖者の羽衣?
い、いつの間に
因みに、アイリスさんとレキシーさんはドレスとまではいかないが、綺麗な格好をしている。
そして、メレディスさんとアイラ、ラーラ、ナーラ、サーラと私はセーラー服を着ている。
ナーラ達は抵抗すると思ったが、メレディスさんが持ってきたセーラー服を喜んで着ていた。
それどころか、ワイシャツ部分は其々色違いになっているのだが、ピンク色は私だ、等、取り合いをしていたほどだ。
聖女の羽衣は、謁見でも失礼がないってことなんだね。
私から見ると、修学旅行だけど。
「では、参りますよ」
謁見の間の前に着くと、メレディスさんがそう言って、扉の横にいる兵士に開門を指示した。
扉が開くと、見るからに偉い役職に就いてそうな人や兵士達が列を作り、私達を拍手で迎えてくれた。
奥に見える玉座にメイズ国王が座っており、その横には王宮執事のユラさんが立っている。
2人とも笑顔で私の方を見ている。
30メートルはある玉座までの道を歩き、5メートル程前になった時、先頭を歩いていたメレディスさんが止まった。
メレディスさんが私を前に誘導し、直ぐ後ろにはラーラ、ナーラ、サーラが1列で並んだ。
メレディスさんは、アイリスさんとアイラと一緒に一歩横に逸れた位置で立っている。
「先に申すが、我に跪くことや、通常の礼儀作法は不要だ」
玉座に座っていたメイズ国王が立ち上がりながら、私達や周りにいる人達に向けて伝えた。
また、ラーラ達が怒っちゃうかもしれないし、先に言ってくれたことは有難い。
「聖女マリー。勇敢なる竜戦士、ラーラ、ナーラ、サーラ。
此度のカサノヴァ救出、我がラミリア国への影響回避、本当に見事であった」
「本当に、ありがとう」
メイズ国王は真っ直ぐ私達を見つめ、続けてそう言うと、その場で頭を下げた。
国王が頭を下げたことで響めきが起こったが、直ぐに周りの人達も頭を下げ出した。
こ、これはなんですか?
私は小学校の卒業証書授与式しか体験してない人間ですよ
この後、どうすればいいか分からない
卒業証書を貰った後のように、一礼して席に戻ればいいの?
席はどこ?
私が固まっていると、メイズ国王は頭を上げ、笑顔で私に近づいてきた。
「マリー嬢。無事に戻ってきてくれて何よりだ。
意識が戻らないとメレディスに報告をもらった時は、生きた心地がしなかったぞ」
「いやー、ご心配をおかけしました」
私は周りの視線を感じ、照れながら言った。
「では、改めて授与式を行う。ユラ例のものを」
メイズ国王が言う。
授与式。
卒業証書授与式の例え、満更でもなかったか。
「まず、竜戦士ラーラ、ナーラ、サーラ、そなた達には、金100,000,000Gを授ける」
メイズ国王はユラさんから紙のようなものを受け取ると、1人づつ渡した。
ラーラ達は表情を変えることなく、淡々と受け取っている。
「続いて、聖女マリー。そなたには、金300,000,000Gを授ける」
おおー
マイホーム
ラーラ達と違い、私は思わずニヤける。
私はメイズ国王から紙を受け取ると、そこには金額が書かれ、国王の署名がされていた。
「次に、聖女マリー、竜戦士ラーラ、ナーラ、サーラ。
そなた達に、爵位を授ける」
んっ??
爵位??
「ただし、そなた達はこれから冒険者となる身。それを考慮し、領地譲渡、管理等を免除する特別爵位を与える」
そこまで言うと、メイズ国王は私達にクレジットカード程の大きさで、鉄のように重い
カードを1人づつ渡してきた。
カードを見ると、私の名前と貴族位Eの文字、それと国王の署名が彫られている。
私がカードを眺めていると、次にアイリスさんとアイラが呼ばれ、赤紙成功報酬の謝礼として、新たな貴族位Cを授与されていた。
そして、レキシーさんには私をラミリア王国のガーネットで慎重且つ適切な扱いをしたことに対する感謝状が送られた。
慎重とは?
適切とは?
「以上で授与式を終了する」
メイズ国王が終了を宣言すると、大きな拍手が起こった。
再びメレディスさんを先頭に歩き出し、扉の外まで辿り着いた。
扉が閉まるまで拍手は続いていた。
「皆様、お疲れ様でした」
「爵位なんて聞いてないよー」
「そうでしたかしら?」
メレディスさんは、戯けて言う。
「さ、来賓が退出し始めますので、皆様こちらへ」
私達はメレディスさんの案内で、同じ階にある別の部屋に移動した。
部屋には大きな楕円形のテーブルが置かれ、高そうな壺や絵画が飾られていた。
座って待っていると、何時ぞやと同じようにメイドさんが大勢来て、1人に1人付いてくれる。
お茶やお菓子の準備、どれもそつの無い動きで熟している。
しばらくして扉が開くと、メイズ国王と見知らぬ女性が1人、部屋を訪れた。
「先程は大儀だったな。
今度は冒険者登録の件で、少し時間をもらうぞ」
メイズ国王はそう言うと、一緒に訪れた女性を紹介する。
「私は王都ラミリアの冒険者ギルドでギルドマスターを務めているマーニャと申します」
「全ての話と段取りはマーニャに話している。
申し訳ないが、私は別の謁見が入っておってな、これで失礼するぞ」
そう言うとメイズ国王は、私達にもう一度お礼を言ってから、足早に部屋を出て行った。
「マーニャ、久しぶりね」
「レキシー、元気そうでよかったわ」
「2人は知り合いなんですか?」
「そうよ、最初は私もラミリアの冒険者ギルドに勤めていたの」
レキシーさんが答えてくれる。
「今夜は久々に飲みましょう」
「いいわねー」
おおー
美女2人で女子会
良きですな〜
「あっ、ごめんね、マリー」
「そろそろ始めますね」
マーニャさんはそう言うと、持参してきた黒い四角い鞄から、先程の貴族カードと同じ大きさのカードを4枚取り出し、テーブルに並べた。
そのカードは先程の貴族カードとは違い、キラキラと金色に光ってとても綺麗だった。
アイリスさんやアイラ、メレディスさんまで珍しそうに覗き込んでいる。
「ま、マーニャ、これって•••、まさか」
レキシーさんの表情がどんどん強張っていた。
「そのまさかよ」
マーニャさんはニヤッと笑うが、その顔はどこか引き攣っている。
私は1人、首を傾げるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます