第21話 魔族の狙いと、私の怒り

最上階に向けて外壁やバルコニー部分をジャンプで経由して進む。


城の最上が見えてきた時、ラーラが話しかけてきた。


「間も無く、最上階の12階ですが、11階に大勢のお客がいるようです」

私の探知スキルにも100体近い反応を確認している。


「そうだね。ここを無視して12階に来られても困るし、寄り道して行こうか」

ラーラがニヤリと、頷いた。


11階部分にある窓を割り、廊下部分に出た。

目の前には扉があり、この先に100体近い魔族がいる。


「では、マリー様。扉を開けます」

「うん」


ラーラが扉を開けると、薄気味悪い笑顔でこちらを向いている魔族達がいた。


「のこのこと、蝿が2匹来たぞ」

「罠ともしらねーで、バカだな」

「俺達を見てビビってるぜ」

魔族達が好き勝手言いながら、高らかに笑っている。


ん?

罠?

魔族なのに、本当に相手の探知とかできないんだな

ラーラは気配で敵を把握することができるのに


「バカは貴様らだ!!態々、乗り込んで来てやった事にも気づかんとわ」

ラーラが怒りの形相で言う。


「おいおい、負け惜しみか?」

魔族達はまた笑う。


本当に気づいてないらしい


「よく見ると上玉の女達じゃねーか」

「痛めつけて、言うこと聞かせてやるか」


上玉の女•••達

女達•••

ラーラはスタイルが良くて美人だから分かるけど

私も??

にやっ


「マリー様、奴ら来るようです」

ヘラヘラしている私にラーラが言ってくる。


どうやら部屋には男の魔族しかいないらしい。

私を上玉扱いしてくれたのは嬉しいけど、少しお灸を据えなければ。


魔族達が一斉に向かってくると、ラーラは人型のままドラゴンの咆哮を放つ。

魔族達が吹っ飛び壁に激突する。


便利だな


魔法だと建物が壊れてしまう恐れがあるため、私はいつも通り素手で行く。


ラーラの咆哮で魔族達は怯んでいるが、私はお構いなしにパンチとキックをお見舞いする。


「くそ、ガキが!!」

1体の魔族が私に向けて剣を振り下ろして来る。

私は剣を右に躱し、透かさずお腹にパンチを入れると、他の魔族を巻き込んで後ろに吹き飛んだ。


魔族は剣や弓、ハンマー等の武器で攻撃してくるが、魔法のような飛び攻撃はして来ない。


本当にこの世界には魔法がないみたいだ


立っている魔族が半分まで減ってきたが、埒が開かないため、私は魔法を使うことにした。


10本の指先に魔力を込めると、一気に放出した。


アタミ(極小)


放たれた炎と光の閃光が魔族10体を打ち倒す。

私は立て続けに魔力を込め、また10体に放つ。

アタミ(極小)の連射に、次々と魔族が倒れていく。


ラーラの方も咆哮や素手での攻撃を行い、100体近い魔族は全て倒れた。


「脆いですね。先代の魔王の時は、もう少し張り合いがあったのですが•••」

「先代の魔王、知ってるの?」

「はい。一度、我が赤竜の縄張りに侵入して来た時に手合わせしたのですが、なかなか見込みのある奴でした」

ラーラは私の方を見て、続けて言った。


「マリー様の足元にも及びませんがね」

私は少し照れて、視線を逸らした。


「さっ、12階、最上階へ参りましょう」

「うん」


私達は部屋から廊下に出ると、上階へ繋がる階段があった。

100体近く倒したからだろうけど、階段や階段を登りきった先の廊下に見張りはいない。


12階は真っ直ぐな廊下と、廊下の先に大きな扉があるだけだった。


「あの扉の奥に魔王がいます」


異世界初めての魔王、

というか、人生初の魔王

厳つい鬼みたいな見た目かな?

それともイケメン風?


私が想像を膨らませながら扉に近づいた時、私の指輪が光った。


「マリー様。今、よろしいですか?」

ナーラからだ。


「あの後、カサノヴァ城を調べたんですが、地下牢に数名いるだけで、見張りも殆どいない状況でした」

「えっ?お城も?」

「はい。ですので、城付近を調べたところ、大きな砦が建てられており、砦内と周辺に多くの人がいることを確認しました」


態々、お城の近くに砦を作って、何をしてるんだろう?


「ナーラ、砦周辺にいる人族は、掘削のようなことをしていないか?」

ラーラが私の指輪からナーラに話しかける。


「確かに、掘削のような、穴を掘って何かを探しているみたいだ」

「なるほど」

「ラーラ、何かわかったの?」

「魔族の狙いは、魔鉱石のようです」

「魔鉱石?」

「魔族は魔物同様、体内に魔石があります。

その魔石を改良するのに必要なのが魔鉱石です」


そこまで話し終わった後、ナーラへは掘削をしている人の様子を調べて、ラミリアに戻るよう伝えた。


「カサノヴァに魔鉱石があることは、魔族であれば知っているのですが、魔鉱石には決して手を出してはならないのです。

強靭な肉体を手に入れる代わりに、心が失われてしまうんです」

「そんな危険なことをどうして?」

「それは、この先の魔王に直接聞きましょう」


ラーラはそう言うと、目の前の扉を一気に開けた。


扉の先には、赤い絨毯が中央に敷かれ、両脇に魔族が立ち並び、奥の玉座には立派な椅子があり、小柄な少女が座っていた。

玉座の横には、鼻が長く、肌が薄い水色の魔族もいた。


私達は関係なく、赤い絨毯を進む。


赤い絨毯の脇にいる魔族は、一部、動物の顔をしているため分からないが、殆どが女性のようだ。


特に襲われることもなく、玉座から5メートル程の位置まで来て止まった。


「お前達、どうやってここまで来たのだ?

下階には大勢の見張りがいた筈だが」

鼻の長い魔族が言ってきた。


「あの脆い連中なら、全て倒してきたが」

ラーラが答える。


「馬鹿な、あの数を倒せる者など•••。

逃げ隠れは得意ということか」


この魔族も、探知とかはできないようだ


「して、何用で来た」

「こちらの魔王様が、カサノヴァ王国と何やら怪しいことをしていると聞きまして」

私は淡々と答えた。


「わらわは、菓子を貰ってるだけじゃが?」

玉座にいる少女が答えた。

どうやら、この少女が魔王のようだ。


「魔王様、このような輩と口を聞いてはいけません」

そう言いながら鼻の長い魔族は私を睨んで来た。


分かりやすい

黒幕はコイツだな

なら、まず魔王様を味方にしてしまおう

シャレじゃないよ


「魔王様は蜂蜜が好きなのですか?」

「おー、わらわの好みを知っておるのか。如何にも、わらわは蜂蜜に目がないのじゃ」

「では、私からプレゼントです」


私はアイテム収納から机と出来立てのホットケーキを出した。

そして、目の前に置かれたホットケーキに蜂蜜をかけた。


「どこから出てきたのじゃ?それより、その蜂蜜をかけているものは何なのじゃ?」

魔王様が目を輝かせて聞いてくる。


「これはホットケーキという、スウィーツ。食べ物です」

「ホットケーキ•••、スウィーツ•••」

魔王様が玉座からこっちに来ようとした時、鼻の長い魔族が大声で言った。


「毒だ!!早くこいつらをやれ!!」

次の瞬間、列にいた魔族の1体が机ごとホットケーキを踏み潰した。


素早く反応したラーラは、その魔族の顔面を殴り、吹っ飛ばした。

殴った後、ラーラは踏み潰されたホットケーキを手で集め始めた。


「マリー様のホットケーキが•••」

ラーラが悲しそうにホットケーキを集めていた時、もう一体の魔族がラーラの顔に蹴りかかってきた。


ホットケーキに気を取られていたラーラは蹴りを受けてしまった。

微動だにしていないが、口元から血が流れている。



その血を見た私の中で

何かが弾け飛んだ•••




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