第14話 食材と、大金を手に入れる

私とラーラ、ナーラ、サーラは冒険者ギルドの解体場に移動した。

一時的に冒険者ギルド側で討伐の依頼を止めていたため、解体場は貸切状態だ。

倉庫側の解体場は殺気を感じるほど混み合っていたけど•••


「そう言えば、ラーラ達は剣とかナイフないでしょ?どうやって解体してるの?」

「剣ならありますよ」


ラーラは右の手首から先を赤い剣に変えた。

手首から先が鍔のない剣になっている。


「私達ドラゴンの皮膚は堅く作られてますので、刃こぼれもしない立派な剣代わりになるんですよ」

ナーラ、サーラも手首から剣を生やし、得意気な顔をして説明してくれた。


「そういえば、マリー様は剣を持っていないようですが、武道家なのですか?」

「強力なマホーを使う人なので、武器は必要としてないんですよ」

ラーラとナーラが言った。


「剣、欲しいなーとは思ってるんだ。

堅い敵が出たときに、剣で倒して素材を売りたいし」

「そうでしたか。青龍を躊躇なく藻屑にしてましたので、素材には興味がないかと思っていました」

「青龍の素材、1体で数億ゴールドになりますしね。剣はあった方が良いかと」

サーラがさらっと金額を口にした。


数億!!

5体なら10億は超える

服も家も、欲しいものが買えたじゃないか•••


私はこの世の終わりのような顔をした。


「そんな顔をなさるほど剣をご所望なら、今度、ドワーフの街に行きましょう」

私の表情を完全に読み違えたラーラが提案してきた。


ドワーフ

アニメの、RPGの定番

これは行く価値がありそうかも


「さて、私達は解体を始めますね」


3人は目の前のモウモウを次々と解体して行く。


うぅぅぅ


目を逸らしちゃダメだ

あー、命をありがとう


私は解体を3人に任せて、ミアの家に向かった。

ただ、向かい始めてから間もなくして、私の目の前にはミアがいた。


「マリーお姉ちゃん、見つけたー」

「ミアー?今、家に行こうとしてたんだよ」

「本当に?ミアのこと忘れてない?」

「妹のこと、忘れる訳ないでしょう」

ミアは、にひひ、と笑った。


「マリーお姉ちゃん、お帰りなさい」

「ただいま」

私はミアの頭を撫でた。


「ミア、一緒に市場に行かない?」

「行くー。ミアが案内してあげる」

私とミアは手を繋いで、市場に向かった。


レキシーさんに聞いたところ、青龍の炎騒ぎの中でも、市場はやっているということだった。

それを聞いた私は、恥を忍んで、魔物の売却費用の一部を前借りした。


何せ無一文だからね

今の私には、玉葱を手に入れるためならどんな恥だって掻く


市場に着くと、想像していたよりも活気があり、色々なお店が営業していた。


「マリーお姉ちゃん、何が欲しいの?」

「玉葱」

「玉葱だったら、あそこだよ」

ミアが私の手を引っ張って連れてってくれる。


お店に行くと、玉葱とじゃがいもが売っていた。

どちらも1個、50ゴールド。


「あっ、あなたマリーちゃんでしょ。さっき聞いたわよ、ドラゴン倒してくれたんだったね。本当にありがとうね」

出店の40歳位の女性店主にお礼を言われた。

私は照れながら、玉葱が欲しい旨を伝えた。


「何個欲しいんだい?本当ならおまけしてあげたいところなんだけど」


青龍騒ぎで大変だったんだろうと察した。

それに、日本人は金の切れ目が縁の切れ目になることを知っているのだ。

どんな時でもお金はしっかりしないと。


「玉葱、20個お願いします。

もちろん、お金は普通に払います。また買いに来たいですし」

「ありがとね。じゃがいもなら少し時間が経っちゃってるから安くできるよ。

もちろん、これはみんなにしてるやつね」


じゃがいもか

肉じゃが、いける


「じゃがいもも20個ください」

「喜んで」

私はお金を払って、玉葱とじゃがいもをアイテム収納に格納した。


それから再び市場の探索を始めた。

塩と胡椒、卵があればよかったんだけど見つからない。


「ミア、塩と胡椒、卵って知ってる?」

「知ってるよー」

おっ、まさかの反応


「この街で買える?」

「塩と胡椒はすごく高くて、普通のお店じゃ扱えないってママが言ってた」

やっぱり砂糖同様、塩と胡椒は高いらしい。

「でもね、卵なら売ってるよ」

「本当に?どこで買えるの?」

「ママのお店」


ん?

ラーミアさんのお店?


私が困惑していると、ミアは手を引っ張って歩き出した。


街の外れまで歩くと、明らかに養鶏場と思われる場所が見えて来た。


「あれだよー、ママのお店」


養鶏場の前まで来ると、ニワトリ?の世話をしているラーミアさんの姿があった。


「ママー」

「ミア?マリーちゃん?」

ラーミアさんは作業を止め、養鶏場から出てきてくれた。


ラーミアさんは既にドラゴンを退治して私が帰って来たことを知っていて、散々お礼を言われた。

そして、この養鶏場は元々旦那さんのもので、結婚してからは一緒に運営していたことを教えてくれた。


「それでマリーちゃんは卵が欲しいの?」

「はい」

「それは良い時に来たわ。

最近はドラゴン騒ぎの影響か、ストレスで卵を産まなかったんだけど、今日、久々に産んでくれたのよ」


おおーー

ドラゴン退治、頑張ってよかった


「10個なら渡せるわ」

「10個下さい。お金はきっちり払いますからね」

私は先手を打った。


「そう言うと思ったわ」

私はお金を払い、卵を受け取った。


「因みに、この鳥は何て言う鳥なんですか?」

「ニワトリよ」


まんま

見た目も名前もそのまんまと来たよ


ミアはラーミアさんと養鶏場に残ることになり、私は一人で冒険者ギルドに向かった。


冒険者ギルドの解体場に着くと、既に作業は終わっていた。


「マリー様、こちらがモウモウのお肉になります」

ラーラが解体の成果を見せてくれる。


「おぉ、凄い。ここまで解体してもらえたら私でも料理できるよ」

「皮や魔石、食べられない部分は不要とのことでしたので、ギルドに売却を頼んでおきました」

「みんな、何から何までありがとうー」

3人は照れ臭そうに目線を逸らした。


「それとマリー様、こちらが砂糖です」

ナーラが壺に入った砂糖を見せてくれる。

私は指で砂糖を少し取り、舐めてみた。


あまーーーい

完璧に砂糖だ


私はナーラに抱きついた。


「ありがとうー」

「いいえ、そんな」

ナーラの顔が赤くなった。


「みんな待っててね。美味しいご飯、作ってあげるから」

ラーラ、ナーラ、サーラは嬉しそうに笑顔を浮かべた。


その時

「マリー。ここにいたのね」

と言いながらレキシーさんが解体場に入って来た。


「魔物の算定が終わって、売却額が出たわ」


ごくっ

私は唾を飲む


「ちょっと重くて運べないから、カウンターの裏まで来てもらっていい?」

「は、はい」

私達は解体場を出て、ギルドカウンターのバックヤードに行った。


バックヤードには棚に陳列された書類や水晶のような物がたくさんあった。


「3人はここで待っててね」

レキシーさんは、ラーラ、ナーラ、サーラを見て言った。


レキシーさんは、バックヤードにあった重そうな扉を鍵で開けた。

その先には地下に延びる階段があり、私とレキシーさんは階段を降りた。

階段を降りきった先には、横幅も高さも10メートル以上ある金庫があった。


「ここにはギルドマスターしか入っちゃいけないんだけど、マリーは特別ね」

レキシーさんはそう言うと、金庫に手を翳す。金庫が青く光り出した。


「驚いた?ギルドマスターはね、3つのスキルがないとなれないの。その内の1つはこの認証スキル」


凄い

なぜか最先端


「お金は用意してあるから、どんどん出して行くわね」

「どんどん出す?」

レキシーさんが金庫にカードを翳すと、金庫の扉から麻袋に入ったお金が出てきた。

不思議なことに扉が開いたのではなく、扉から麻袋が出てきている。


私は次々と出てくる麻袋をアイテム収納に格納していく。


「結局、売却額はいくらだったんですか?」

終わりの見えない麻袋地獄に思わず聞いた。


「50,000,000ゴールドよ」


ご、ご、ご


五千万ーーー!!



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