第13話 転移スキルと、ガーネットの街に帰る
材料は揃った。
ニヤっ
「みんな、帰ろうー!!」
『では、どうぞ背中へ』
ラーラが自分の首を傾かせ、背中を示した。
ん〜
急にドラゴン3体が村に迫ったらまずいよね
やっぱりここは、あのスキルを使おう
「みんな、人型になってもらえる?」
ラーラ達は首を傾げながらも人型に変化した。
「どのように帰るのですか?」
ナーラが不安そうに聞いてきた。
もしかしたら、この場に置いていかれるかも、と思ってるのかもしれない。
「3人共、私に抱きついて」
「•••」
3人共、頬を赤くしてモジモジしている。
「こ、こほん。転移スキルを使うからくっついて欲しいだけだよ」
「転移、ですか?そのようなことが可能なのですか?」
「初めて使うんだけど、一度行った場所には転移できるはず」
「分かりました」
ナーラが私の左手、サーラが私の右手に腕を絡ませてきた。
「し、失礼します」
最後のラーラはそう言うと、正面から私に抱きついて来た。
普通、背中じゃないのかな?
それにしても、3人共ドレスを着ているから異様に嵩張る。
ただでさえ大きなお胸が6つもあるというのに。
「な、何で3人はドレス姿なの?」
「私達ドラゴン族は、人型でパーティに参加することがありますので」
「ドレス以外、持ち合わせていません」
ラーラとナーラが答える。
「ドラゴンのパーティって一体•••」
私はそう言いながら『転移スキル』を発動した。
私達の体が薄い膜に包まれ、少し浮遊した。
次の瞬間、風景が変わり、目の前にはガーネットの街の門が見えた。
「こ、これは凄い」
私の左手に腕を絡ませているナーラが呟いた。
「どうなったのですか?急に街道が現れましたが」
正面から抱きついているラーラが言った。
「ラーラ、後ろを向いてごらん」
ラーラは私に抱きついたまま顔を後ろに向けた。
「街です。街があります」
「うん。だからラーラ、もう離れても大丈夫だよ」
「あっ、そうですね」
ラーラはどこか残念そうに私から離れた。
私達は門に向かって歩き出した。
そこには、口を開けたまま動かない冒険者のラドさんがいた。
「ラドさん?」
「お、おう。夢じゃないのかこれは」
「どうしたの?慌てて」
「そりゃ、目の前に人が急に現れたら驚くだろうが」
それは最もな意見だ
「留守はしっかり守ったぞ」
どうやらラドさんは門番をしてくれていたようだ。
ラドさんは未だに私の腕を掴んでいるナーラとサーラ、そして横にいるラーラを見た。
「この3人は?」
「私の友達だよ」
「なら、顔パスだ。マリー、早く街のやつらに顔を見せてやれ」
私達4人は門を越え、街に入った。
「マリー」
冒険者ギルドのギルドマスター、レキシーさんが私の名前を呼びながら走ってくる。
「レキシーさん」
「門の方が騒がしかったから、急いで来たの」
「ただいま戻りました」
レキシーさんは息を整えてから
「お帰りなさい」と言ってくれた。
「無事でよかった」
「色々ありましたけど、無事です」
レキシーさんがラーラ達を見つめる。
「本当に色々あったみたいね。
こっちも少し報告があるから、ひとまず冒険者ギルドに行きましょう」
「分かりました」
冒険者ギルドに向かう途中、街の人から「お帰りなさい」と何度も言われた。
冒険者ギルドに到着すると、ここでも数人いた冒険者から労いの言葉をもらった。
「今日は冒険者が少ないですね」
「みんな、マリーとの約束を守るため、街の中を巡回したり、修繕をしているわ」
「感謝、感謝」
私は手を合わせて言った。
私とレキシーさんが話していると、ラーラ達が冒険者ギルドの天井を見上げている。
「これも青龍の炎で。私達がしっかり対応していればこんなことには•••」
「マリー様、本当に申し訳ありません」
3人が声を合わせて謝罪してきた。
「ち、違うの。これは私が壊したというか、吹っ飛ばしたというか」
「私達を気遣って下さるとは、やはりマリー様は優しいお方ですね」
「ふう〜、色々、話さないといけなそうね」
レキシーさんはそう言うと、テーブルを囲うように人数分の椅子を並べてくれた。
そして、私が街にいた時の出来事、私が竜の山脈に向かった経緯を話してくれた。
「ア、アタミ•••」
サーラが呟く。
いや、1番反応するのがそこなの?
今度は私が街を出てからの経緯、3人がドラゴンであること、青龍を倒したことを説明した。
「ド、ドラゴン•••」
ラーラ、ナーラ、サーラを順番に見ながらレキシーさんが呟く。
「マリーが言うから本当なんでしょうね。
それにドラゴンが人の姿で暮らす街があるって話も聞いたことがあるし」
私がラーラに目線を向ける。
「きっと、パーティ会場がある街のことを言っているのかと」
ラーラが答える。
そ、そんな街があるんだ
しかし、ドラゴンのパーティって•••
「こっちからも少し報告があるの」
レキシーさんは急に指を鳴らすと、小さな白鳥?が飛んできて、レキシーさんの腕に止まった。
「この子は伝鳥といって、特定の場所を飛んで伝書してくれるんだけど」
レキシーさんはそこまで言うと伝鳥を腕から羽ばたかせた。
伝鳥は元の場所に戻り、大人しくしている。
「ラーロックの件を報告するために、ラミリア王国に経緯と謁見の許可を求めて伝鳥を飛ばしたの」
「怒ってたんですか?」
「違うの。今日伝鳥が帰ってきたんだけど、そこには姫が行方不明でそれどころじゃないと。
それとラーロックの件は王国まで連れて来れば処罰すると書かれてたわ」
「ひとまず、お咎めはなしと?」
「それはそうね」
よかったー
うん、うん
それにしても
ラミリアってどこかで聞いた気が•••
いや、それよりも今は牛丼だ
「報告は以上よ。あと、マリーの冒険者登録なんだけど•••」
「難しそうですか?年齢制限とか?」
「年齢は問題ないわ。ただ、青龍を5体も倒せるとなると、1番下のランクから始めさせる訳にはいかないわ」
私は青龍を倒した経緯を説明した時に、次いでに魔石を5個見せていた。
「だから、冒険者登録はもう少しまってね」
「それは問題ないんですけど、魔物って買い取ってもらうことできますか?」
「ええ、大丈夫よ。ただ、青龍の魔石となると高額だから少し日数をもらうけど」
魔物を買い取ってもらえる
これで、牛丼を作るための寸胴(大量に作る気満々)、牛丼を盛る深皿を買える
「魔石はしばらく取っておくつもりなので」
「普通の魔物だったら、喜んですぐに引き取るわよ」
レキシーさんは嬉しそうに話してくる。
「隕石•••、ドラゴンの炎問題が解決したんだもん。これから前みたいに商人や冒険者がいっぱい来るわよー」
なるほど素材は高く売れると
「どこに出せばいいですかね?」
「どれくらいあるの?」
「う〜ん、500体位かな」
•••••••
「500体?」
「うん」
レキシーさんは頭を抱える。
「とりあえず、隣の建物が倉庫になってるから、そこに出してもらってもいい?」
私達は冒険者ギルドの横にある倉庫に移動した。
「全部入り切らなそうだから、まず100体位でいいかな?」
「そ、それでお願い」
私はデビルベア等、これまでに討伐した魔物を100体出した。
「こ、これは•••」
「ギルドマスター、全員招集ですね?」
レキシーさんと一緒について来た女性が耳打ちする。
「お、お願い•••」
女性は走りながら倉庫を出て行った。
「ちょっと、時間をもらってもいい?」
「わ、分かりました」
何故だか、申し訳ない気持ちになった。
「あの、魔物を解体できる場所を借りることはできますか?」
「この倉庫にある解体場はこれからしばらく使っちゃうから、冒険者ギルドにある解体場ならいいわよ」
よし
私はラーラ達を見た。
「ラーラ達はモウモウを解体できるよね?」
「もちろんです。捧げ物を差し出すためによくやっておりました」
よし
目の前まできた牛丼を想像し
私はその場で1人
ニヤつくのであった
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