よくわからない船の話

シカンタザ(AI使用)

よくわからない船の話

「なんだったかなあ。アレだよあアレ。ほら、アレアレアレ」

「……アンタの頭には海馬がないのか?」

「いやあるよ! でも思い出せないんだよ!」

「……はぁ……」

溜息を吐くのも疲れる。だが、確かにそれは気になる点だ。俺達は今、港に向かって歩いているのだが……。

「この船に乗ってきたんだよね?」

「ああ」

「で、その船が見当たらないって事は……どこかに行っちゃったんじゃないの?」

「だろうな」

「じゃあどうして僕達はそれを見てないんだろうね? おかしいよね?」

「……」

……まあ、確かにそうだが。

「……じゃあ聞くけどさ。お前、どうやってここに来たんだ?」

「えっ? 歩いてだけど?」

「じゃあそっちの道から来た訳か?」

「うん」

「ならこっちの方角にあるはずなんだがな……」

「んー……じゃあやっぱり間違ってたんじゃ……」

「かもしれねえな」

「でも僕達が来た道にも何もなかったし……」

「そっか。じゃあもうちょっとだけ探してみるか」

「う、うん……」

と、そこで俺はある事に気付いた。

「そういえばお前、服濡れてないか?」

「えっ!? あっ本当だ! いつの間に!?」

「気付かなかったのかよ……」

「だってそんな暇なかったから……」

「……まあいいか。とりあえず拭いておけよ」

「わ、分かった!」

そして俺達はまた歩き出した。……しばらく歩いた所で、俺は立ち止まる。

「おい、なんか聞こえないか?」

「えっ? 何が?」

「何かこう……水の音みたいなものが」

「そうなの?」

「ああ。聞こえる気がする」

「へぇ~。僕は全然分かんないけど……」

「とにかく行ってみようぜ」

「う、うん……」

少し歩くと、確かに水が流れる音がした。音を頼りに進んで行くと、そこには大きな水路があった。

「おお……」

「こんな所に水路があるなんて知らなかった……」

「まあ普通は知らないと思うぞ」

「そうなの?」

「多分な。でも綺麗な所だろ?」

「うん。水が透き通っていて、凄く綺麗」

「良かったな。お前に見せられて」

「えっ? どういう意味?」

「何でもねぇよ」

水路に沿って進むと、やがて開けた場所に出た。どうやらここが終点らしい。辺りを見渡すと、船が何隻も停まっている事に気付く。そのどれもがボロボロで、塗装が剥がれていたり錆び付いていたりした。

「ここは……」

「どう見ても廃船置き場だよな……」

「う、うん……」

「……どうすんだこれ?」

「ど、どうしよう……」

「とりあえず、誰かに聞いてみるしかないんじゃないか?」

「そ、そうだね……。……あっ! あれ見て!」

「ん?」

よく見ると、奥に小さな建物が建っている事に気が付いた。

「あそこに行ってみようよ!」

「おう」

二人で建物の中に入る。すると中には一人の男が居た。歳は四十代くらいだろうか。無精髭を生やしていて、髪もボサボサだった。

「あの……」

「あんたら……誰だい?」

「あ、いやその……」

「……」

男はじっとこちらを見る。そして小さく溜息を吐いた後、言った。

「……まあいいか。見たところ、悪い奴らではなさそうだしな」

「……?」

「で、何の用だ?」

「えっと……」

そこで俺は男の前に手を差し出す。

「俺達は船を探しているんです」

「船だと?」

「はい」

「なんのために?」

「……実は」

俺はこれまであった事を話した。俺達が何者か分からない以上、下手に嘘をつくよりも正直に説明した方がいいと思ったからだ。

「……なるほどなぁ。つまりその船を直したいって事か」

「はい。お願い出来ませんか?」

「んー……別にいいんだけどよぉ」

「けど?」

「今この船は修理中なんだ」

「……という事は、他の船のパーツを使って直すって事ですか?」

「そういう事だ」

「それは大丈夫です。自分達には魔法がありますから」

「……ほう。魔法か」

「はい」

「じゃあ頼むわ」

「分かりました。……えっと、ちなみにどの位の期間かかりますか?」

「そうだなぁ……ざっと見積もって三日といったところか」

「結構かかるんですね」

「しょうがねえだろ。このご時世、簡単に船が手に入ると思ってんのか?」

「いえ……すいませんでした」

「謝る必要なんてないさ。船の修理は趣味みたいなもんなんだしな。それに……こういうのを待ってたんだ」

そう言って彼は笑った。その笑顔に、少しだけ心が温かくなった気がした。

「じゃあ早速取り掛かるか。えーと……」

「あ、俺はカイ・ナイノマンと言います」

「私はアリシアです」

「そうか。俺はジョンだ。よろしく」

そうして俺達は、ジョンさんと一緒に廃船置き場を出て、街へと向かった。

「……ふぅ」

俺は一息つく。時刻は既に夕方になっていた。俺は今、ギルドの依頼を終えて宿に帰っている途中だ。依頼内容は魔物討伐。だが、その相手というのはスライムだった。

「まさか本当に居るとはな……」

スライム自体はそこまで珍しいものではない。しかし、それが群れを成して行動しているとなると話は別だ。本来なら、森の奥地に生息するはずの存在なのだから。

「……にしても、アイツ等どうなったかな」

……実は、俺達は先程まで森の中にいたのだ。理由は簡単。依頼を受けて、森で魔物を探していたからである。

「……流石にもう居ないよな」

結局この日は何も発見出来なかった。そして仕方なく帰ろうとしたその時、ある異変に気付いた。

「……? なあアリシアッ!」

「えっ?……うわああ!?」

突然地面が揺れ出した。地震かとも思ったが、どうやら違うらしい。何故ならば、その正体はすぐに分かったからだ。

「おい、これってもしかして……」

「うん。多分そうだと思う」……目の前の景色が一変していた。それまで鬱蒼としていた木々は姿を消し、代わりに大量の瓦礫が現れた。どうやら、突如現れた謎の現象によって、この場所だけが崩壊してしまったらしい。

「……これって、もしかしなくてもマズイよな?」

「うん……」

……俺達はまだ知らなかった。この世界では、どんな事が起ころうと不思議ではないのだという事を。

それからしばらくして、ようやく辺りに静寂が訪れた頃、俺は改めて周囲を確認する事にした。そして気付いた。

「なぁアリシア」

「ん?」

「ここって……」

「うん。間違いなく、あの場所だよ」

俺達の前には、巨大な建造物が建っていた。その外観は、明らかに普通の建物とは違う。まず、大きさが違う。そして何より、塗装されているという点が違っていた。

「……すげぇな」

「……凄いね」

「……とりあえず中に入ってみるか」

「……そうだね」

建物内に入ると、そこには一人の男が立っていた。年齢は三十代くらいだろうか。髪は長く、ボサボサだった。そして何故か上半身裸である。

「あんたら誰だ?」

「あっ! いやその……」

「……私達は、冒険者です」

俺の代わりにアリシアが答えてくれた。すると男は小さく溜息を吐きながら言った。

「まあいいか……。で、何の用だ?」

「えっと……」

そこで俺は男の前に手を差し出す。

「俺達は船を探しているんです」

「船だと?」

「はい」

「なんのために?」

「実は……」

俺はこれまであった事を話した。俺達が何者か分からない以上、下手に嘘をつくよりも正直に説明した方がいいと思ったからだ。

「……なるほどなぁ。つまりその船を直したいって事か」

「はい。お願い出来ませんか?」

「んー……別にいいんだけどよぉ」

「けど?」

「今この船は修理中なんだ」

「という事は、他の船のパーツを使って直すって事ですか?」

「そういう事だ」

「それは大丈夫です。自分達には魔法がありますから」

「……ほう。魔法か」

「はい」

「じゃあ頼むわ」

「分かりました。……えっと、ちなみにどの位の期間かかりますか?」

「そうだなぁ……ざっと見積もって三日といったところか」

「結構かかるんですね」

「しょうがねえだろ。このご時世、簡単に船が手に入ると思ってんのか?」

「いえ……すいませんでした」

「謝る必要なんてないさ。船の修理は趣味みたいなもんなんだしな。それに……こういうのを待ってたんだ」

そう言って彼は笑った。その笑顔に、少しだけ心が温かくなった気がした。

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