バーヅオブアフェザー 〜類は友を呼ぶ〜

天然のフカヒレ

プロローグ

「全部隊配置急げ‥配置完了と同時に一斉に仕掛ける。」

「了解。合図を待つ。」

目の覚めるような白銀に輝く月夜に木霊した伝令を聞きながら、僕は草木の生い茂る中、身を隠していた。

合図を待つ間はいつも同じ。自分の呼吸する音しか聞こえない。

時折、四足歩行であろう獣の鳴き声が聞こえてくるがすぐに静寂へと帰る。この背筋の凍るような感覚が僕にはとても心地いい。

こんな時、僕は僕自身が他とは違うのだと実感する。

初めて拳銃を持った時、初めて引き金を引いた時、どこか懐かしい感じがした。


そして人を打った時。


何が起きたのか分からなかった。

仲間の1人が刺された。

大男は血走った目を僕に向け、口の端からは唾液が漏れ、両手で握ったナイフを腰の辺りで固定し勢いよく向かってきた。薬物でもしていたのだろう、正気ではなかった。

僕は訳のわからないような声を荒げて逃げ惑った。おそらく人間らしい感情はこの時が最後だったと思う。

逃げた先には扉はなく、その代わりに1丁の拳銃が落ちていた。残弾は確認していない。そんな余裕はなかった。いや気づいた時には大男は既に後ろに‥一瞬だった。背中に激痛が走ったのは‥


声が出ない。

力が抜けていく。

左の頬が冷たい。床に倒れたのがわかった。

視界がぼやける。

でもなぜか右手には馴染みのある感触があった。


僕は朧げながら大男の方へ首を捻りつつ、右手を向け人差し指を引いた。

凄まじい炸裂音が聴こえた。気がする。

大男が倒れるのを最後に僕は気を失った。と思う。




「ーーーん! ーー番! おい!聞いているのか101番!!」

「っは‥申し訳ありません。いつでも。」

「まぁいい。仕掛ける!」

「了解」


僕には名前がない。

生まれ故郷も知らない。

友人も家族もいない。

あるのはこの「デザートイーグル・カスタム」だけだ。

どんなに石頭だと豪語している人間の頭蓋骨にもかざ穴を開けられ、拳銃の中でも群を抜く威力を誇る。

素人が一度でも引き金を引こうものなら数日は手の痺れが残ることだろう。

そんな化け物銃を2丁持つと敵、味方双方に怯えや不信感を募らせる。

装弾数は9発。『マズル』『スライド』『ダストカバー』を30センチの長さに調整。

加えてダストカバーにはコンバットナイフが同化しており、接近戦も可能。


どこの世界に銃持って辻斬りの真似をするやつがいるんだと揶揄されたが、実際にここにいるのだ。


「よし、行こうか。」


接近戦型ガンマン「No=Name」

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