不知日女
四
ざあっと、通り雨が降って来た。
山間の地では、少しの平地あらば
山の泉から引かれた水が田に満たされ、さらに、この雨で稲が育つ。
三代さまは、次男を
八平本家五代さま、
だが、負けた。
そうすることで八平本家は、主君である
あの時、
この
それより、
屋敷の
「茶を三つだ。若さまの茶は、タオに頼む」
急なことだった。
本家から
いやいや、本家が分家に礼など、わざわざ参じる必要はない。
(あれも、本家さまに似て強引か)
山間にへばりついた
(――まぁ、昔々の
十分、互いに
互いに、食えぬとも思っていることだろう。
遺恨は
そんなものを持っていたら、生きてゆけない。
味方になれば酒を酌み交わし、敵になれば刀を交える。
そういうことだ。
「タオ、頼んだよ」
「はい、おとぅさま」
タオは小さな手で神妙に椀の乗った盆を引き寄せた。
侍女が介添えして、ゆっくり、板張りの廊下を歩いていく。そのあとに
広間で客はくつろいでいた。
本家の若君の供として
すなわち、
今日は、
そこへタオは現れて、いちばん上座に座った本家の若君に、茶碗の盆を差し出した。
何か言ったが、
「これは、愛らしい」
思わず、
「オ、
両名とも先の戦が
ちらりと、若殿の様子を伺うと、「……」、
「
「うんまい」
年上の
雨の間、歓談し、雨雲が切れたところで、
散策と言う名の
「山には入られませぬよう。雨で地面がじゅるいで(ぬかるんで)おりますし」
そう
「そうだなぁ」と、言いながら
山は、低くたれ込めた霧に
雨は霧を連れてくるのだ。
※〈石置屋根〉 板葺きの上に石が置いてある屋根
〈厨〉 台所
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
八平久兵衛貞友(34歳) 八平日近領当主
生田四郎兵衛勝重(19歳) 三男であったが生田家の跡継ぎとなる
夏目次右衛門治定(17歳) 夏目家の総領息子
※八平美作貞能という名前の場合
〈
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます